(文:久保 洋介)

 2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ氏を援護射撃するようなサイバー攻撃をロシアがしかけていたことには驚いたが、その後、アメリカが分かりやすくサイバー空間で反撃していたのにも驚いた。ロシア政府高官のメールが暴露されたり、ロシアの銀行が大規模なサイバー攻撃を受けたりと、次々とロシアがサイバー攻撃を受けている。しかも、バイデン前副大統領がロシアへの反撃をほのめかしたすぐ後からだ(もちろん両国ともにそれぞれ関与を認めていないが)。

 今ではサイバー空間を介した「見えない」国家間の衝突は恒常化しつつあり、まるで小競り合いが続いていた第一次世界大戦前のような様相を呈している。

 そんな混沌としたサイバー空間での国家間の小競り合いを、各国の最前線にいるプレイヤーの言葉で臨場感溢れる描写をしているのが本書『ゼロデイ』だ。サイバー攻撃の歴史から、サイバー最強国のアメリカをはじめ、ロシア、中国、イスラエル、イラン、北朝鮮といったサイバー先進国の政策や攻撃の実態を掘り下げている。サイバー空間での国家間の攻防を理解する上でこの上ない一冊だ。

傍若無人でえげつないアメリカ

 国家主導型サイバー攻撃の威力を最初に世界に知らしめたのはアメリカとイスラエル。2009年末にサイバー兵器「スタックスネット」を使い、遠隔地からイラン核燃料施設の遠心分離機を破壊させるという離れ業だった。当時アメリカ大統領で作戦を指揮したオバマは、世界で初めて破壊的なサイバー攻撃を実行した大統領として後世に語り継がれることとなろう。