政府がサブロク協定の見直しを検討 残業規制強化へ

現行の労働基準法36条では、「労働者に法定時間(1日8時間1週間40時間)を超える残業をさせる場合には、あらかじめ労働者の代表と協定を結ばなくてはならない」と決められています。
これが通称サブロク(36)協定と呼ばれているものです。
最近、政府はサブロク協定の運用を見直し、労働時間に上限を定める検討を始めました。
違反した場合の「罰則」も含めています。
このような法律の強化によって、果たして長時間労働は抑制されるのでしょうか。

残業には「仕事」にではなくて「人」についてまわる残業がある

私は、かつて大手小売業の店舗で常時800人以上の従業員の労務管理に携わっていました。
当時のルーチン業務の中に、「従業員の労働時間の進捗管理」があり、長時間労働の危険がある人には、月の途中から注意喚起を行っていました。

残業には、「仕事」にではなくて「人」についてまわる残業があります。
売場が変わっても、仕事が変わっても、仕事を減らしても一向に残業が減らない人がいました。
同じ売場の中でも一人だけ突出して残業が多い、上司が残業禁止の指示を出しても残業をやめないというように、残業が当たり前になっているように見える人がいました。
中には、タイムカードを押してから残業する、自分の休日の日に売場に来て、タイムカードを押さずに仕事をしている人も見受けられました。

売場の仕事は、終わりを自分で伸ばすことができます。
商品の積み替えや清掃など、作業はいくらでも作れます。
残業が多い人との面談では、「売場が汚いと気になって帰れない」「売場が込みそうだったので帰れなかった」などという答えが返ってくることがよくありました。
さらには、「残業代がないと生活できない」「仕事以外にやることがない」といった個人的な理由で残業を繰り返している人もいました。一方では、「残業が多い人はそれだけ一生懸命仕事をしていて、評価が高い」という職場風土があったことも実感しています。

政府の残業規制だけでは長時間労働は減らせない

会社主体で残業を減らす手段は多く考えられます。
人員を増やす、必要のない作業を省く、作業の効率を上げるための新たな機械・器具・備品を用いるなどで一人当たりの作業量を減らすことは可能です。
しかし、「人」についてまわる残業は、本人が変わらないかぎり減らすことはできません。
力づくで残業をやめさせることはできないからです。
また、「残業が多い人は仕事熱心な人」ではなくて、「残業が多い人は仕事が遅い人」というような評価ができる職場風土にしないと、残業は減るどころか増える一方です。

政府の残業規制では、「サービス残業」や「持ち帰り残業」の促進も懸念されます。
気持の上で仕事を終わらせられない人や仕事をしていないと落ち着かない人は、会社の管理の目を逃れてでも残業をします。
人の意識を変えることは、法律を変えるよりも難しいこともあります。
法律だけでは、長時間労働をなくすことは難しいでしょう。

(小倉 越子/社会保険労務士)