外国人労働者 介護や建設業界で受け入れを政府検討

政府は働き方改革実現会議で、介護や育児、建設などの人手不足業界で外国人労働者を受け入れることを、また、国家戦略特区会議では、特区を利用して農業分野に外国人労働者を受け入れるという政策を検討していることを発表しました。
そして、報道ではこれらについて国が関与する、積極的に取り組んでいく、というような感じで書かれていました。

今まで、外国人労働者の募集や就職の支援で、政府が関与したり積極的に取り組んだり支援している政策として代表的なものが、介護・看護のEPA(経済連携協定)と国家戦略特区における家事支援人材の受け入れ事業です。
現在検討される政策では、介護、育児、建設の受け入れは2国間協定を想定し、農業は国家戦略特区での家事支援人材のやり方を参考にする、としています。

介護・看護のEPAの2国間協定は、日本政府だけではなく、相手国政府も関与していますし、誰でも応募できるわけではありません。
介護・看護の人材の応募要件として、大学の看護学部卒や介護士認定受けた人等になります。

国家戦略特区で採用されている外国人家事支援事業ですが、第三者協議会を作り(関係自治体、内閣府地方創生推進室、地方入国管理局、都道府県労働局、地方経済産業局で構成)、受入企業は、特定機関になるための要件を満たしていることを第三者協議会で確認されることが必要になっています。
事業実績や経済的基礎などの特定機関に認められる要件がありますし、外国人家事支援人材の仕事の内容も決められており、更に、雇用契約を交わし、日本人と同等額以上の報酬、住居を確保しなければならない等々の待遇も決められています。
介護・看護のEPA協定と同じく、誰でも応募できるわけではなく、研修修了や認定資格にプラスして実務経験を必要としており、日本語能力も必要とされています。

介護・保育・建設業において外国人労働者を受け入れる際の問題点

報道では、政府としては、2国間協定での外国人労働者の受け入れについて、あらかじめ分野ごとに受入数を決めておき、想定される業界として、介護、保育、建設業を対象にしているようです。
それらの業界の仕事は、マニュアルでできる仕事もあるかもしれませんが、マニュアルでは対応できないことや、臨機応変に考えて事に当たらないといけない仕事もかなりあるので、むしろ専門的な仕事と言えるかもしれません。
例えば介護においても、その利用者や利用者の家族も、マニュアル的な対応だけではなく、臨機応変に対応してもらえることを考えてお願いするでしょうから、まるっきりマニュアルだけでできる仕事ではない、と思います。

又、外国人労働者を受け入れる場合、民間にゆだねるとブローカーが介在します。
それを排除するためには、国同士が交渉すれば良いということを考えているようですが、それは良いとしても、ブローカーと呼ばれる人達が、人を集め、訪日前研修を実施しているという側面も可能性としては考えられるので、もしそうであれば、訪日前の研修をどうするのか?という問題が出てきます。
応募してきた人たちを連れて来て、いきなり仕事をさせるわけにもいかないでしょうし、日本語も理解できない、仕事も一から教えなければならない状況では、日本国内の事業者が雇わない可能性もあります。

したがって、訪日前に日本語の勉強、日本の文化・生活の勉強、予定している仕事の勉強することは必要で、それらを覚えてもらう・理解してもらえる人材であることが必要になります。
そうすると、誰でも良いというわけにはいかないので、むしろ人材を選抜するという形になっていくでしょう。
なお、相手国の意向次第、と報じられていますが、相手国の考え方も配慮することは必要でしょうし、もしかしたら、自国民を日本の思いどおりにさせるか!と考えるかもしれません。

農業分野での外国人労働者受け入れの問題点

次に、国家戦略特区で農業分野での外国人の受け入れですが、こちらも
・出身国などで農業に一定期間の従事(実務経験を証明する情報を相手国から提供してもらう)
・日本語能力が必要
・農業協同組合などが受け入れ窓口で、農家などに派遣
・待遇については、農協などに日本人と同等額以上の報酬の支払や研修の実施の義務付け、フルタイムの直接雇用に限るなどの案がでている
などといった内容が報じられています。

農業経験のある人が対象なので、即戦力でもあるし、家事支援人材の方法を参考に受入基準を作れば、悪い労働環境にはならない、と考えているようです。
しかし、農業経験者と一口に言っても、栽培経験のある作物、働いている農業の規模、露地かハウス栽培の経験など人によって違うでしょうし、特区の指定に手を挙げる日本国内の自治体によっても、どの作物の栽培に従事してもらうのか、どのくらいの規模の農家なのか、なども考える必要があると思われます。
農業の分野は、ルーチンワーク的な単純労働の仕事もあるでしょうが、個人的には理系の発想を必要とする分野でもあると思いますので、訪日前に日本語や日本の農業のあり方を理解するための勉強をしてもらい、更に現地で理解をしようとする姿勢の外国人が必要であると思います。
そうすると、こちらの場合も誰でも良いわけではなく、選抜された人という感じがします。

実際は単純労働ではないということを理解することが重要

2国間協定での受け入れにしても、国家戦略特区での受け入れにしても、入国した最初の時期は、易しい仕事でも段々と難しい仕事をさせていくのだろうから、単純労働者の受け入れ、という思考からそろそろ卒業したらどうなのだろう、と個人的には思っています。
上記の仕事を単純労働と政府が認定した、と誤解されてしまう可能性もありますし、それよりなにより、日本人や外国人に関係なく、そこで働いている人の自尊心を傷つけてしまうかもしれないことを考えると専門職として迎えたいものです。
そして、はじめたものの想定どおりにいかず、非正規の外国人労働者や外国人アルバイト(あるいは、それに近い待遇の外国人)が増えるということもあり得ます。

労働界や政府関係者の中でも懸念の声が多い、外国人労働者が増えることによる日本人労働者の待遇悪化や治安面での不安などにつながることの無いよう、より良い制度設計をしてもらいたいと思います。

(折本 徹/行政書士)