増加する外国人観光客に向けた全国共通の無料Wi-Fi整備へ

2020年の東京オリンピックに向けて、増加が予想される外国人観光客の利便性を向上させるため、事業者が連携して一度登録すれば全国的に利用できる無料Wi-Fiサービスを提供するという報道がありました。
無料Wi-Fiは空港、駅やホテル、公共施設や店舗などで導入が進んでいますが、運営する事業者毎に利用ルールが異なるので使い勝手がよくありません。
外国人観光客向けの無料Wi-Fiをより円滑に利用できる環境の実現に向け、ソフトバンクやKDDIの子会社などのWi-Fi事業者が社団法人を設立し、全国の施設や店舗などでのサービス開始を目指すとのことです。

現在の無料Wi-Fiの課題

観光庁の資料によると、外国人旅行者が困ったこととして「無料公衆無線LAN環境」が「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」を上回る結果となっています。
また、無線LANの課題として多かったのは、「利用するための手続方法がわからない(面倒)」「利用料金が高い」「使う場所が分からない(少ない)」という回答でした。

現在の無料Wi-Fiは、施設運営者や自治体などが個別に導入し、独自のルールで運営するため様々な課題があります。
無料Wi-Fiを利用する手続きも、SSID(Service Set Identifier、Wi-Fiアクセスポイントの識別名)にアクセスして利用規約に同意、アプリをダウンロードしてメールアドレスなどを登録、専用電話番号でアナウンスされるパスワード入手、など様々です。施設や自治体の無料Wi-Fiは利用範囲が限られているので、移動する先々で利用手続きを都度確認して行う必要があります。
通信品質も事業者の設備に依存するので、状況によっては繋がりにくかったり、速度が遅くなったりします。

また、多数の不特定ユーザが使いやすいように利用者登録を行わない代わりに暗号化通信などのセキュリティ対策が行われていない無料Wi-Fiもあります。
観光情報等を入手するだけであれば問題ありませんが、メールやSNSを利用する際に入力するID・パスワードを盗まれるリスクがあります。
中には通信情報を盗むことを目的とした不正な無料Wi-Fiスポットもあります。

全国共通の無料Wi-Fiの期待効果等

政府は「日本再興戦略2016」の中で、第4次産業革命と観光立国の実現に向け、
・外国人旅行者等が利用しやすい無料Wi-Fi環境の整備
・既設環境を有効活用し、事業者横断的にWi-Fi接続できる認証連携の仕組構築
を推進しています。
今回の報道はこの動きを促進する施策の一つと考えられます。

全国共通で利用できる無料Wi-Fiの普及により、外国人観光客は国内の至る所で観光地や商品の情報を入手することができ、また、主要都市や著名な観光地だけでなく、国内の様々な商店街、観光地、施設等に自由に訪れることが容易になります。
このことから国内の様々な場所に興味が湧くようになり、日本観光のリピーターとなる可能性があります。
また、別途進められているキャッシュレスや多言語翻訳等の環境整備と組み合わせることで、都市部だけでなく、地域の商店街等におけるインバウンド需要を喚起し、地域経済の活性化につながることが期待されます。
無料Wi-Fiのアクセス状況やGPS情報等を収集し、分析することで、クーポンの発行やスタンプラリーの実施等、利用実態に即したタイムリーな施策を実施することもできます。

残念ながら、大手キャリアの動向等を見ると、上記の無料Wi-Fiサービスはあくまでも外国人観光客を対象としており、国内居住者に提供されるかどうかは未知数です。
外国人観光客への利便性提供と併せて、国内居住者に対するサービス向上も実現して欲しいものです。

(金子 清隆/ITコンサルタント セキュリティコンサルタント)