「自殺意識調査」から分かったこと

このショッキングともいえる見出しは、日本財団が今年8月に実施した大規模な「自殺意識調査」の結果から明らかになったことです。
この調査は、全国の20 歳以上の男女約4万人余に対してインターネットでなされました。

この調査結果の一つが、4人に1人が「本気で自殺したいと考えたこと(自殺念慮)がある」というものです(それに基づいて、過去1年以内の全国の自殺未遂経験者を53万5千人と推計)。
また、5人に1人が身近な人(家族・友人など)を自殺で亡くしており、年代別では、若者層(20〜39歳)が最も自殺のリスクが高い世代となっています。
また、自殺の高リスクグループに見られる特徴として、「孤立感」の強さ(他者に頼ることができず人間は理解・共感できないと思っている)が認められています。
その他のリスク要因としては、家庭内暴力・アルコール依存・生活苦などが挙げられています。

また注目すべきは、半数以上が自殺のことで相談しない(「本気で死にたいと思っても相談しなかった」- 73.9%、「自殺未遂をしたときに相談しなかった」- 51.1%)ということです。
次に自殺のリスクを抑える要因として、?共感力、?自己有用感、?問題対処能力、を挙げています。
具体的には、?「人間は理解や共感ができる」と考えている、?家族に居場所がある、?「自分には問題を解決できる能力がある」というポジティブ志向、です。

「自殺意識調査」の意義

「自殺」そのものについては、「自殺対策白書」として政府が毎年詳細に報告していますが、「自殺」までには至らない「自殺念慮と自殺未遂」についての詳細な調査・報告は含まれていません。
そこで今回調査の特に意義のあることは、自殺の背景にある「自殺念慮と自殺未遂」の実態と特徴を全国の大規模な調査で明らかにしたことです。

既遂の自殺の背後には、その10倍から40倍の未遂があるということは従来から専門家の間で言われていたことであり、今回の大規模な調査結果はそれを裏付けるものです。
また、そのように多くの「自殺未遂者」が存在するにもかかわらず、その人たちの心理や行動が余り解明されず語られなかったことを補う点でも意義ある調査といえます。

自殺を防ぐための具体的な提言

この調査報告書は最後に、「誰にとっても『生き心地のよい地域』を作ることが自殺対策につながる」などの提言をしていますが、それを踏まえてもう少し具体的に提言したいと思います。

その際特に注目すべきは、自殺念慮・未遂者の半数以上が「自殺のことで相談しない」と回答していることです。
この背景には、「自殺を語ること」自体何かしてはいけないとタブー視する社会の態度があるのでは、と思います。
この社会の態度は特に日本に限ったことではなく、例えば米国でも同様の意識が見られることが各種メディアの内容でも認められます。
それを踏まえて、米国国立精神衛生研究所(NIMH)は、精神的な悩みを抱えている人を援助する方法として以下のことを挙げています。

1.「自殺のことを考えていますか」とはっきり聞いてみる。
その理由として、このような直接的な質問は自殺行動を高めることにはつながらないことが各種研究から分かっている、と述べています。

2.相手が考えていることや感じていることを一緒に注意深く聴く。
これについても各種研究からは、自殺について話をして相手の気持ちを理解することは、自殺への希求を増大するよりは逆に減少させ得ることを示唆している、と述べています。

3.「いのちの電話」などの利用できる各種相談機関を紹介する。
以上、自殺の話題を殊更タブー視しない態度が、かえってそのことを考えている人に自己の行動を振り返る機会を与えるのではないか、と考えます。

(村田 晃/心理学博士・臨床心理士)