読書の秋 大人も子どもも本を手に取ってみてはいかがでしょうか?

『読書の秋』と呼ばれる時期になりました。
なぜ昔から、そう言われるのでしょう。
私は、秋は思索が深まる季節だからではないか、と考えています。
夏が去り、日ごとに日没が早くなって、秋風が心にまで吹きこむ頃になると、感覚が研ぎ澄まされ、本の中にあるさまざまな言葉や思いにひきつけられる、そんなところではないかと思います。

私自身がむさぼるように本を読んだのは、中学から高校にかけてのことです。
もちろん大学は文学部でしたから、量にすれば大学時代に読んだ数の方が多いに決まっていますが、本を求める気持ちが強く、一字一句を自分のものにしようと食い入るように文字を追った、そういう意味では、中高生の頃がもっともはげしい意欲を持っていたのだと思います。
そして、最近になって強く感じることですが、その当時読んだ本こそが、まさに血となり肉となって、私自身を作ってくれたという実感があります。
小説でも詩歌でも、その頃読んだ作品を改めて読むと、今でも心がふるえ、自分自身のルーツの一部がそこにあると感じるのです。
読書には、まさに「人を作る」力と効用があるのだと言えます。

大人の方にお勧めしたい本の読み方

では実際に本を読む上での効果的な読み方について、お話ししたいと思います。
「JIJICO」をお読みになる方々の年代を考えて、おおむね三十代以上の成人の方に、こんな読み方はいかがか、という提案と、「子どもにどう読書をさせるか」という観点から、持論を述べます。

成人の方の本の読み方、選び方には、百人百様のものがあるでしょう。
作家やテーマ、あるいは分野で選ぶ。もしくは話題作を読むと決めている。
こうした基準がそれぞれあると思いますが、それ自体が個性であり、ご自分のスタイルを変える必要はありません。

ただせっかくの機会ですから、ここでは「かつて読んだ本を改めて読み直す」ことを、おすすめしたいと思います。
私の場合、夏目漱石の『こころ』をはじめて読んだのが中3の時で、それから数え切れぬほど、繰り返し読んでいるのですが、そのたびに新しく気づくことがあり、若い時には見えなかったものが年齢を重ねて見えるようになった、そんな経験もしています。
これは他の方も折にふれ言われていることで、ある年齢になってはじめてわかることがあり、またすぐれた作品ほど、読み直すごとにその深さに気づくという「奥行き」を、持っているからです。
この「読書の秋」、ぜひ以前熱心に読んで心にのこった本を、もう一度読んでみて下さい。

子どもに読ませたい本はどのように選べば良いか?

さて、「子どもに読ませる」方ですが、この場合の鉄則は、「子ども自身が関心を持つ本」を読ませることです。
よく聞く親御さんの言葉に、「本を読まないから国語が苦手で」というものがあります。これはまあ「親の心配」としてはその通りなのですが、だからと言って、「文学の名作」をいきなり無理に読ませようとするのは逆効果です。
面白さを見出すことができない本を無理に読むのは、苦痛以外の何ものでもありません。それよりも、子どもが関心を持つ本を、まずは好きなように読ませる。
これが第一歩です。

そして子どもは、いろいろな機会に多くのものにふれて、成長します。
いつの間にか知らないところで、「名作」を読んで心を動かされることがあるかも知れません。
その時、読む力、考える力がそなわっているためにも、好きなジャンル、テーマの本を、自然に読ませることが大事なのです。
好きなものを読む時は、ぐんぐん吸収でき、読む力もついていきます。
そして時々、読んで感じたことを表明するきっかけを作ってあげて下さい。
こうしたことから、子どもは本を好きになり、国語の力をつけていくことになるのです。

(小田原 漂情/塾教師、歌人・小説家)