(グロービス経営大学院 著/田久保義彦 監修・執筆 東洋経済新報社 2016年7月)

 

 本書は、「周囲からの期待を超える活躍をしているミドルマネジャーと、そうでないミドルマネジャーの違いはどこから生まれるのか?」という疑問に答えるため、期待を超える成果を上げている41人のマネジャーにインタビューを行い、その結果をまとめたものであるとのことです。

 第1章では、ミドルマネジメントの置かれた状況を概観しています。その上で、ビジネス環境が激変する現代において、ミドルマネジャー自身が変わり続けなければならないことを強調しています。

 第2章では、ミドルマネジャーへのインタビュー結果から明らかになった、彼らが備えている、自己変革し続けるためのベースとなる3つの力――組織として成果を出す力(スキル)、仕事に対する想いの力(ウェイ)、周囲との考えの違いを乗り越える力(ギャップ)、について解説しています。

 第3章では、その3つの力をどのようにして身に付ければいいのか、自己変革と自分を変えていくための3つのステップ――①「自己認識」を深める、②自分にとって「都合のよい解釈」をし、次にやることを決める、③自分のとった行動や置かれた状況に基づき「持論形成」する、を示しています。

 第4章では、多忙な日常の中でどうすれば「期待を超えるミドルマネジャー」であり続けることができるのか(「維持」または「強化」ができるのか)、それが不可能な場合は、どうすれば「期待を超えるミドルマネジャー」に再びなれるのか(「回復」できるのか)について考察しています。

 第5章では、取材した41人の中から7人の「期待を超えるミドルマネジャー」について、具体的にどのように3つの力を獲得し、その維持、回復、強化に取り組んできたのかについて記しています。

 体系的にまとまっていますが、テキストというより啓発書的な印象を受けました。解説内容は比較的オーソドックスであり、むしろ、本書の後ろ半分を占める第5章の事例編が、なかなかシズル感があり新鮮でした。その中では、現在さまざまな企業で活躍中のミドルマネジャーが、社会人になってから今日までの自らのキャリアを10年弱前後の刻みで振り返り、その各段階で「スキル/ウェイ/ギャップ」がどのように醸成され、「得られた持論」はいかなるものであり、3つの力の維持・回復・強化に今どのように努めているかが書かれています。入社時から振り返ることにより、マネジャーになる前の段階からそうした能力が必要なことが分かり、本書全体の納得感を高めることにつながっています。

 実在のマネジャーの事例を基にした研究は、海外では、ジョン・P・コッターの『ザ・ゼネラル・マネジャー』(ダイヤモンド社)や、本書でも取り上げられているヘンリー・ミンツバーグの『マネジャーの実像』(日経BP社)などがありますが、日本ではそう数は多くはないように思われます。

 「ミドルマネジャーには自己変革が求められる」として、自己変革し続けるための力をいかに養うかを説いているという意味では自己啓発的な内容ですが、人事パーソンの立場から、ミドルマネジャーがどのように育っていくかを考える視点から一読するのもよいかと思います。

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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2016年8月にご紹介したものです。

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき
 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー 
ジンジュール