連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の第25週は、昭和39年。東京オリンピックが目前に迫り、東海道新幹線が開通したこの年、常子(高畑充希)は、最後の目標である大きな家を建て、鞠子(相楽樹)や美子(杉咲花)の家族と3世帯9人で同居していた。『あなたの暮し』はその後、順調に部数を増やし、いよいよ目標とする100 万部に近づく勢いとなっていた。連載企画を一段落させた常子に、花山(唐沢寿明)は新しい企画を作ることを勧める。「私が望むものは、君にしか書けないものだよ」と花山。常子は新しい連載の企画の構想を練りながら職場づくりにも力を入れ始め、育児に一段落した女性の中途採用を積極的に行っていた。

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全てが順風満帆と思っていた矢先、君子(木村多江)が突然倒れる。医者から告げられる残酷な知らせを受け、動揺を隠せない常子たち。何かを察した君子は、自宅での療養を求める。賑やかしい孫達に囲まれていつもと変わらない毎日を過ごす君子。ある日、中学生になったたまき(蒔田亜珠)が熱を出す。手が回らない鞠子に代わり、君子がたまきの看病をすることに。たまきの頬に手を当て母・滝子の思い出を語る君子。その眼差しは、幸せに満ちていた。その晩、帰宅した常子たちは、ひさしぶりにキッチンに立つ君子を見て驚く。たまきのためのごはん作りに精を出す君子は、にんじんの飾り切りを見せ、「見た目も楽しいと思うから」と微笑む。夕食後、自分の部屋に戻る君子に付き添う常子。自然に出た君子の鼻歌を聞き、不安がよぎる。君子は昔から悩み事があると鼻歌が出るのだ。「これは嬉しいときの鼻歌」とほほ笑む君子。そして、孫の髪をとかしたり、料理をしたり、皆で賑やかに笑い合えるのが嬉しいと語るのだが、竹蔵(西島秀俊)の遺影を前に「あと何回、みんなでご飯が食べられるのかしら」とつぶやくのだった。

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自宅療養を始めて半年、君子は床に伏せることが多くなっていた。君子を見舞うため、小橋家を訪れる花山。君子は常子に花山と2人して欲しいと頼む。ずっと花山にお礼を言いたかったという君子は、「娘たちを立派に育てていただき感謝しております」と感謝の言葉を告げる。言葉を詰まらせる花山。全てを投げ打ち雑誌作りに賭けてくれた常子に申し訳ない気持ちがあると君子に告白する。「常子さんにはもっと別の人生があったのではないか……ただ仕事だけに邁進させてしまって申し訳ない」と頭を下げる。すると、常子は幸せだと答える君子。「自分で選んだ道ですし、何よりそんなふうに思って見守ってくださる方がいる」と。昔から人に頼るのが下手で、何でも一人で抱え込む常子が、花山に出会ってようやく誰かに頼って生きることができたと思うと礼を言う。「これからも娘たちをよろしくお願いいたします」と君子。

花山が帰った後、君子の部屋に集まる常子たち。君子は3人がいたから幸せだったと切り出すと、姉妹ひとりひとりを褒め始める。美子には「人を和ませ、笑わせてくれる」と。鞠子には、「いつもさりげなく心遣いをしてくれるので安心する」と。そして常子には、「いつも一生懸命で、みんなの幸せのために走り続けて。どんなときでも私を支えてくれた。本当にありがとう」と君子。そして、小さな行李を持ち出すと、私の宝物だと話す。中には、竹蔵(西島秀俊)と最後にお花見をしたときの造花や、森田屋に住んでいたころに常子たちが発案した「KT歯磨き」など思い出の品が大切に保管されていた。小さな幸せの積み重ねで今の幸せあると言うと、「あなたちは私の自慢の娘よ」と告げる。それから10日後、君子は息を引き取った。

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君子がいない小橋家の朝食。常子は、美子の娘の真由美が君子に教わったとおりにハンカチをたたむ姿を見ながら、君子の言葉を思い出していた。そして、花山に自分にしか書けない新たな連載のテーマが見つかったと報告する。君子と過ごした時間のなかで「なにげない日常の愛おしさに改めて気づいた」と常子。ごく普通の暮らしについてお知らせするように綴ってみたいと花山に提案する。「母が私たちにしてくれたように、人生にわずかでも彩りや安らぎを添えられるような言葉や知恵を読者に伝えたい」と常子。花山は自分が読みたいからすぐに書き始めろと常子を急き立てると、満足そうに笑った。「小さなしあわせ」と題された常子のエッセイは、君子が亡くなって8年が過ぎたころには、単行本が発売されるほどの人気連載となっていた。時代は随分と変わり、戦争を知らない社員も増え、その価値観に驚かされることもしばしば。常子たちは女性たちが働くことについて世間の目が厳しいことに着目していた。そんな折、「あなたの暮し出版」をたまき(吉本実憂)が訪れる。常子に忘れ物を届けてきたのだという。スチームアイロンの商品試験チームから、日本製の電化商品が海外製の性能を超える結果が出たと報告を受けた花山。「とうとうこんな日がやってきたか!」と目を輝かせる。日本の職人気質を世界に伝えようと士気高く試験を再開する社員たちを目の当たりにして、たまきは「あなたの暮し出版」で働きたいと決心する。

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その日の夜、たまきが常子の部屋を訪ね、常子の会社で働きたいと告げる。聞けば、以前から「あなたの暮し出版」に入りたいと考えていたが、縁故入社だと思われたくなくて諦めていたという。「私は世の中の役に立つ仕事がしたい」と訴えるたまき。女性の夢がたくさん詰まっている「あなたの暮し出版」で自分の力を試したい。その言葉を聞いて、常子はたまきが入社試験を受けることを認める。両親の心配をよそに、たまきは1次選考、2次選考を通過し、最終試験を迎える。しかし、「あなたの暮し」の最終試験は一風変わったものだった。

試験会場では、花山の挨拶が行われた。その後にたまきたちが通された試験会場には、テーブルの上に大量の野菜や肉、調理器具が並ぶ。「これから調理を始めます。メモや質問は自由です」と常子。すると、料理人は作り方を説明しながら青椒肉絲を作り始める。常子から発表された出題内容は、今見た青椒肉絲の作り方を伝える記事を書くというもの。しかも答案を書く机もなく、受験生は自分で工夫して原稿を書かなければならない。戸惑いつつも、20分の制限内に書き上げようと必死に答案に向かうたまきたち。そこへ、大音量の音楽を流す花山。音を止めて欲しいと発言する受験生たちに向かって「記者たるもの、どんなにやかましい場所でも原稿を書かねばならのだよ」と激を飛ばすのだった。そして試験終了の時間。答案用紙が集められ、拍手する花山と受験生たち。ところが、花山は次が最後の問題だと言い、「この試験の前に私が別の部屋で言ったことを原稿用紙一枚にまとめなさい」と続けた。

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こうして試験は終わり、結果を待つたまきのもとに通知が届く。そこには「採用」の文字が。晴れて「あなたの暮し出版」の一員となる。新人を怒鳴る花山を見て、体調を心配する常子だが、花山は今年の新人は特に女性が元気だと気にしない。そんな折、寿美子(趣里)が会社を辞めたいと言ってくる。聞けば仕事と家庭の両立が難しく、これ以上迷惑をかけたくないのだという。女性が社会で働く機会を減らさぬよう、常子は社内の仕組みを変えることを思いつく。

最終週は、働く女性に役立つよう、『あなたの暮し』の内容も職場の環境も変えていくと、常子(高畑充希)は社員とテスターの前で宣言する。一方、花山も新しい企画を始めようと、一人広島へ向かう。音信不通のまま数日が過ぎた頃、取材帰りに花山が倒れたという連絡が編集部に入る。急いで病院へ向かう常子たち。聞くと、市井の人々に戦争中の暮らしの様子を取材して回り、記録していたのだという。体調不良を押して取材を続けようとする花山を見て、妻・三枝子(奥貫薫)や娘の茜(水谷果穂)は止めようと必死。生涯編集者でありたいと願う花山の気持ちが痛いほど分かる常子は、ある提案を持ちかけることに…。