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今年4月から始まった家庭用電気小売り自由化。これまで東京電力など全国9つの電力会社が独占していた電気の販売にほかの企業も参入できるようになった。

本誌でも自由化を前に特集記事を組み、新電力の価格比較などを行った。その結果、首都圏でもっともお得とされたのは、東京ガス「ずっとも電気1」プラン。記者も早速、インターネットで東京電力から東京ガスへの契約変更の手続きを行ったのだが、予想以上に料金は下がっていた。

ところが、全国的にみると、今年4月以降に電力会社を切り替えた家庭は7月末時点で、わずか2.4%に過ぎないという(「電力広域的運営推進機関」)。なかなか切り替えが進まない理由について、電気料金に詳しい生活アドバイザーの和田由貴さんと横浜市立大学非常勤講師の田中優さんに分析してもらったところ、次の2つの要因が浮かび上がってきた。

【1】消費者は電気に関しては保守的だった

「電気は家庭にとって必要不可欠です。少しくらいおトクでも、『少し様子を見よう』と、契約変更に慎重な人が多いのも事実です」(和田さん)

【2】相次ぐ切り替えトラブル情報が消費者を萎縮させた

「まずスマートメーター(スマメ)への交換が大幅に遅れています。新電力会社と契約するには自宅の検針メーターを従来のアナログ式からデジタル式のスマメに交換することが必要です。スマメは1台1台が電力会社と通信し、消費電力量を知らせます。人間が検針するより早く確実にその家庭の電力消費が把握できるので、電力自由化には不可欠とされてきました。その交換工事がとくに東電管内で滞っていて、『スマメじゃないから、切り替えられない』『設置を待つのは面倒』と、二の足を踏んでいる消費者もたくさんいます」(田中さん)

実は本誌取材過程で、新たな事実が判明した。スマメへの交換がなくても電力会社の切り替えは可能だったのだ。

「工事の遅れなどでスマメが設置できない場合も、暫定的に従来のメーターのまま契約切り替えを行っています」(東京電力パワーグリッドの担当者)

前出の和田さんも驚きを隠さない。

「現在でも、電力自由化を担当している資源エネルギー庁のHPには『切り替えにはスマメが必要』と明記してあるのですが……」

さっそく資源エネルギー庁に問い合わせると、電力市場整備室の担当者は次のように回答した。

「現在もスマメへの交換が切り替えの前提です。ただ工事遅れなどで交換ができずに、切り替えたくても切り替えられない家庭へ暫定的に行っているだけ。それを『従来メーターでも切り替え可能』とあえてHPで公表するのは良しとはしません」

この回答に対して憤るのは前出の田中さんだ。

「これはひどい!スマメへの交換が必須であることは、消費者にとって切り替えの心理的ハードルの1つになっています。従来のメーターでも切り替えがOKというなら、きちんと告知すべき。情報隠蔽ととられても仕方ありません」