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「連日、豊洲の問題がクローズアップされていますが、メディアのあおり方がちょっと行きすぎの感じがしますね。新市場内の『地下ピット』と『盛り土』の問題が、いつの間にか豊洲全体が危ないみたいな話になってきている。じつは、豊洲新市場の問題は、建造物の建設に際し、口利きや談合はなかったのか、“都議会のドン”である内田茂氏の力が及んでいないかどうか、が最大のテーマでした。建設費が、なぜ当初の3倍にもなったのか。990億円の予定が2,752億円まで高騰した背景には何があるのか。資材費の高騰や人件費の問題も背景にはあるが、建設工事の落札率が99.9%というのはおかしいでしょ、と」

こう話すのは、東京都の内情に詳しい元知事で、作家の猪瀬直樹さん(69)。猪瀬さんは、本来“ドン”に焦点が当たるはずだった問題が、「盛り土」の一件によって、東京都の構造的な話ばかりにすり替わってしまったという。豊洲新市場の疑惑の本丸は、建造物の利権に絡む問題だと、指摘する。

「都知事選の最中である7月20日に、いきなり築地市場の解体工事の入札が行われたことなどもそうです。これは小池(百合子)都知事誕生直前に強行されたと理解するしかなく“ドン”の力が働いた可能性もあります。そもそもの課題は、舛添(要一)都知事時代の豊洲入札、築地解体の透明化だった。今後はその方向へと話が向かっていくと思います。もちろん、土壌汚染問題をクリアにしなければいけない。8月31日、小池都知事は会見で『開場を延期して安全性を確認する』と言いました。ところがその後、『盛り土』の問題が浮上。そこにメディアが便乗して、本来追求されるはずだったテーマが変わってしまったのです」

猪瀬さんは、東京都に暗躍する闇=“ドン”内田茂都議会議員(77)の存在が、豊洲、オリンピック問題につながっていると語る。

「“ドン”については、僕が今回の都知事選公示日直前にツイッターでその闇の存在を明らかにしたことで大きな反響を呼びました。知事時代、“ドン”のことをいくらメディアに説明しても『誰ですか?』『たかが都議会議員でしょ?』という感じでした。ところが今回、“ドン”のいじめで自殺した樺山卓司都議(’11年7月1日、享年63)の遺書を公開したことが大きなインパクトとなり、みんながその名を知るようになった。これまで闇の中にいた“ドン”の存在が有名になったことだけでもすごいことなんです」

そもそも内田都議が、なぜ東京都で絶大な力を持つことができたのか。

「都知事はいわば“大統領”なのですが、都議会を支配する“もう1人の大統領”がいるという状況なんです。議会で与野党が入り乱れていればそうはなりませんが、いまは野党を含めて完全に一元支配されている。たとえば、条例案や予算は議会が承認しなければ通らない。その議会を10年以上にわたって牛耳っているのが“ドン”なのです。その影響力は絶大。“もう1人の大統領”ですから」

豊洲新市場とともに、東京五輪の競技会場建設を巡る問題でも、“ドン”の影が見え隠れしている。『週刊文春』(8月4日号)の報道によると、現在、建設中止を含めた抜本的な見直しが提言されている3施設のうち、2つの競技会場(有明アリーナ、オリンピックアクアティクスセンター)の工事を落札した共同企業体(JV)の中に、“ドン”が監査役を務める電気整備会社が含まれていることが判明したのだ。さらにその後、豊洲新市場の電気工事も受注していることがわかった。

「五輪高額施設に“ドン”が監査役の企業が参加……ようやく各メディアが動きだした。今回の都知事選で、これまで闇の存在であった“都議会のドン”の名前が世間に知れ渡り、小池さんも勝った。闇というのは闇にいるから強いのであって、光が当たれば弱い。いまは光が当たってしまったので動けなくなっている。世間が見ていますからね。これからは“ドン”の力が失われていくプロセスになっていくのかもしれません」