▼二人の遠藤で終わった新しいお祭り


ガンバ大阪5人目のキッカー、遠藤保仁がゆっくりとボールをセット。すると、背後から激しいブーイングの声が襲い掛かる。ここは埼玉スタジアム、観衆51,248人の大半を占める赤いサポーターが足もとを狂わせようとした。すでに4人目の呉屋が外し追い詰められた状態、だが遠藤保仁は何食わぬ顔でPKを決める。目の前にいるゴール裏の青いサポーターに小さく拍手をしてその場を去った。

続いて登場する浦和レッズ5人目のキッカーは、同じ名字の遠藤航。赤い群衆は勝利を求め、背中を押すように声援を送る。赤い後押しを受けた遠藤航は、プレッシャーから解放されGKの西川に飛びつく。2人の遠藤が最終キッカーのPK戦を、4-5で制した浦和レッズが優勝カップを掲げた。

第1回ルヴァンカップ決勝は、新たな祭りの始まりだった。
埼玉スタジアムに向かう電車内ではルパン3世とコラボしたCMが流れ、にやけた人はサポーターと一目でわかる。
開門を今かと待ちわびるサポーターの後ろには、青く着飾ったスタジアム。
ピッチの上には大きなお菓子のパッケージが置かれ、子供たちによる前哨戦ルヴァンカップキッズバトルのドリブル対決が行われている。
決勝の舞台に立つガンバ大阪と浦和レッズを待ちきれない少年は、スタンドで赤い旗を振っていた。

▼流れが変わったアクシデント


記念すべき新生ルヴァンカップは、90分を通して決着が付かなかった。しっかり引いてブロックを作るガンバは、ポゼッションを高め迫ってくるレッズの隙を狙っていた。その瞬間は前半17分、レッズの最終ラインが自陣に押し込んできた時にやってきた。ガンバが自陣でボールを奪った段階で、すぐ目の前にレッズの最終ラインがいた。アデミウソンに渡すと、独走状態に入り落ち着いてゴールを決めガンバが先制をした。

ガンバが先制したことで、より守るガンバ、攻めるレッズの構図が強くなっていく。だが前半36分、宇賀神の負傷交代により変化が起こる。宇賀神のいた左サイドにはスタメンで右サイドにいた関根が移り、右サイドは途中出場となった駒井が務める。避けたかった不測の事態が、逆の意味で大きな影響を及ぼす格好となった。それまで抑えられていた左サイドは後半から深くえぐりリズムを作る。そして、高木に代わりピッチに登場した李が大きな仕事をやってのける。後半31分、コーナーキックから投入されたばかりの李が頭でゴールネットを揺らす。スコアは1-1、そのまま延長へ向かった。

誰もがPK戦かと思い始めていた延長後半終了間際、スタジアムは時が止まったかのようにボールを見つめる。呉屋が放ったシュートはポストに当たり、ゴールライン上をゆっくりと転がった。「私の気迫がもう少しあれば、ゴールラインを割ったかもしれない」とガンバ大阪、長谷川健太監督は語る。一方、浦和レッズのペトロヴィッチ監督は、昨季のチャンピオンシップ準決勝を例に挙げる。バックパスがポストに当たり、カウンターからの失点での敗戦を思い出していた。埼玉スタジアムのポストと芝はPK戦を望み、ホームチームの勝利を助けた。

▼赤と青の戦いはこれからも続く


10月1日、Jリーグ2ndステージ第14節、この埼玉スタジアムでガンバは0-4の屈辱を味わっていた。それから2週間後の10月15日、「大阪に着くころには悔しいだろうけど、清々しい」と明るい表情で長谷川監督は決勝にふさわしい戦いをしたチームを評価した。運はなかったものの目が合った瞬間に「蹴ります」と言った勇気を買った呉屋、ニューヒーロー賞を受賞した井手口と始めとした新しい力に期待を寄せ、リーグの残り3試合、そして決勝がホームの吹田で行われる天皇杯に目を向ける。その思いは、優勝セレモニーでカップを掲げた宿敵をしっかりと目に焼き付けピッチを去った選手たちの目も次へ向かっていた。

ついにタイトルを手に入れたペトロヴィッチ監督は、「ひとつのタイトルが次のタイトルにつながる」と目を輝かせる。喜ぶ選手を見つめるペトロヴィッチは、「サポーターのため、ミシャのため」とMVPになった李の言葉にサムアップをして答えた。何度も優勝カップを掲げ......ない、とはしゃぐ選手たちにスタジアムは笑いに包まれ、待ちわびたタイトルを選手、スタッフ、サポーター一丸となって喜びを分かち合った。

ルヴァンのイメージカラーは青。白地に赤だったヤマザキナビスコカップは、ルヴァンカップという名称と共にロゴマークの色も変えた。優勝監督は最後に「このお菓子を持って帰ってください。おいしいですよ」と場を和ませ会見場を後にした。その言葉は、スタジアムの外で青いパッケージのお菓子を持った赤いサポーターたちにも届いていた。

佐藤功



岡山県出身。大学卒業後、英国に1年留学。帰国後、古着屋勤務、専門学校を経てライター兼編集に転身。各種異なる業界の媒体を経てサッカー界に辿り着き、現在に至る。