行列の途中に、人が割り込むことを「横入り(よこはいり)」と表現することがある。東京出身の記者(20代)は聞いたことがあったのだが、どうやらこれは方言で、言わない地域もあるらしい。

そこでJタウン研究所では、「『横入り』って言う?言わない?」をテーマに都道府県別のアンケート調査を行った(総得票数1693票、2016年8月19日〜9月20日)。果たして結果は――。

「愛知」での使用率が高い

全国平均の集計結果では、「言う」が71.9%にのぼった。「言わない」は約3割となり、かなりの地域で「横入り」が使われているとわかる。都道府県ごとの使用率を比べてみると、青森、宮城、群馬、愛知、滋賀、高知、宮崎の7県が90%以上にのぼった。関東地方で高いのは神奈川県(86.4%)。「横入り」には神奈川発祥という説もあり、それを信じている人も多い。

「横入り」分布図

言わない派が優勢だったのは、新潟、兵庫、鳥取、広島、山口、大分、佐賀、長崎の8県。中部地方から東北にかけて「言う」地域が広がっているが、あまり西日本では使われていないようだ。

ではそもそも、どの地域で「横入り」が誕生したのだろうか。資料を調べてみると、毎日新聞中部版(2009年9月18日朝刊)のコラム「清水義範のなごやキーワード事典」に興味深い記述を見つけた。

「この『横入り』という言葉の意味がわからない名古屋人はいないと思うが、『列への割込み』のことだ。そしてそれは、名古屋弁であり、ずーっと東京では通じない言い方であった」

ここでは小説家の清水義範さんが、もともと「横入り」は名古屋弁で、地元出身の学生が東京で方言を使うことで広まった「東京新方言」の一種だと指摘している。愛知県の「言う」割合は90%であることから、この説は正しいのかもしれない。

地方から普及し、のちに東京へ

「横入り」の起源については、井上史雄さんと鑓水兼貴さん編著の『辞典<新しい日本語>』(2002年、東洋書林)も詳しい。ここでは「新語が地方に先に普及し、東京が遅れた例」として紹介されている。

地域としては神奈川、東京、埼玉、群馬などに加え、若い世代では「中国地方から関東地方にかけてと北海道でもよく使われている」とある。なお新潟県では水上や小出、小千谷で使用されているとあるが、今回の調査では「言う」は16.7%にとどまっていた。

同書では「名古屋由来」について触れられていないが、共編著者の井上さんは後に、ニュースサイト「はまれぽ」(2011年9月22日付、16年9月17日再掲載)のインタビューで、「横入り」を中部地方から横浜へ入ってきた言葉だと説明している。

調べた限り、「横入り」は全国的に浸透しているとわかった。また確たる証拠はないが、中部地方から神奈川の若い世代へ広がり、東京経由で全国区になったた可能性は高そうだ。なお今回、読み方については投票を受け付けなかったため、地域によって「よこいり」と読む可能性もあることを指摘しておく。