ワイン用ブドウ苗木の全国有数の産地である山形県の苗木業者に、全国から注文が殺到している。国産ブドウ100%の日本ワインの人気が高まる中、醸造所(ワイナリー)の新規参入や栽培面積の拡大が相次いでいるためだ。需要に供給が追い付かず、県内のブドウ生産者ですら苗木確保に苦労している。(山形総局・宮崎伸一)

 果樹苗木専門店「菊地園芸」(南陽市)の菊地善和社長(62)は「北海道から九州まで全国から注文が相次いで生産が間に合わない」と言う。
 2013年のワイン用ブドウの苗木販売は約1万5000本。昨年は3万5000本に増えた。栽培面積は3年前の約3アールから今年は8アールに広げたが、栽培する苗木は全て予約済み。来季分の問い合わせもある。
 特に需要が多いのは白ワイン用のシャルドネやリースリング、赤ワイン用のメルロー。1番人気のシャルドネは北海道の生産者から数千本単位の注文が続々と舞い込む。
 日本果樹種苗協会によると、ブドウ苗木を扱う専門業者は全国で十数軒。うち7軒は山形県にある。
 菊地社長は「県内の他の業者も状況は同じようだ。生産者の要望に応えたいが限界がある」と漏らす。
 苗木の育成にはブドウの穂木を接ぐ台木が必要だが、台木の育成には2、3年かかる。苗木として出荷するまでに3、4年を費やし、急な増産はできない。
 需要急増の要因となっている日本ワインは、品質の向上とともに愛好家の評価が高まっている。15年には国税庁が国産ブドウ100%を原料に国内製造されたものを「日本ワイン」とする表示基準を明確化。さらに注目が集まるようになった。
 同庁の統計によると14年現在、ワイナリーを含む全国の果実酒醸造所286カ所のうち、09年以降に新設されたのは39カ所。規定より少ない生産量で製造免許が得られる「ワイン特区」を申請する自治体が相次いでおり、今後も増加が見込まれる。
 欧米で盛んな「垣根仕立て栽培」というブドウ栽培方法の普及も、苗木不足に拍車を掛ける。
 山形県園芸推進課などによると、垣根仕立ては国内で主流の「棚仕立て」に比べ剪定(せんてい)作業が比較的楽で、棚仕立てほど高い技術を要しない。一方、棚仕立てが10アール当たり20本程度を植えるのに対し、垣根仕立ては400本以上が必要になるという。
 苗木は今や地元でも入手が困難な状況だ。上山市の生産者組合「南果連協同組合」では、栽培面積を拡大できない組合員が出始めた。同組合ワイン部会長の渡辺義仁さん(48)は「苗木不足が続けば、計画通りに栽培面積を増やせないかもしれない」と懸念する。
 上山市は7月、効率的な苗木の育成方法の研究推進を農林水産省に要望した。市農業夢づくり課の担当者は「安定的にブドウ栽培の成長を図るために、育成技術の進歩は、もはや欠かせない状況だ」と話した。