最近クルマのフロントガラスがギラギラしたようなカーフィルムを装着するカスタムが一部で流行っています。そうした中でそのようなカーフィルムの車検に関するルールが国土交通省により統一するという通達がなされました。では、実際にどのような影響があるのでしょうか。

車検の際、カーフィルムの検査はどのようにおこなわれるのか

 ときどき窓ガラスにカーフィルムを施したクルマを見かけることがあります。
 
 実は2023年1月、車検の際にカーフィルムが貼られた窓ガラスの可視光線透過率を測定する方法に関して、あるルールが統一されました。では、一体どのような内容なのでしょうか。

 クルマで街を走っていると、フロントガラスや運転席、助手席の窓ガラスにキラキラと光るオーロラフィルムやスモークタイプのカーフィルムなどを貼り付けているクルマを見かけます。

 カーフィルムはクルマのドレスアップ効果や、車内に入る紫外線・赤外線をカットする機能などがあり、特にクルマの外観にこだわるユーザーから高い人気があります。

 ただしカーフィルムをクルマに施工する際には、ドライバーが安全に運転できる視野を確保する必要があり、クルマのフロントガラスや運転席、助手席の窓ガラスについては可視光線透過率(外の光を通す割合)が70%以上という基準をクリアしなければいけません。

 この基準に適合していないと、不正改造車として取り締まりの対象となるほか、車検に通らないため、可視光線透過率をしっかりと測定することが重要といえます。

 この可視光線透過率の測定に関しては、2023年1月に国土交通省が「指定自動車整備事業における着色フィルム等が装着された自動車の指導について」という文書を発出。

 これにより車検時の測定についてのルールを統一しましたが、一体どのように変わったのでしょうか。

 そもそもクルマの車検を受ける際には「認証工場」か「指定工場」のどちらかに依頼しなければいけません。

 認証工場の場合は、工場が運輸支局や自動車検査登録事務所などの車検場にクルマを持ち込んで検査を受けるのに対し、指定工場では自分の工場で点検整備や検査をするため、クルマの車検場への持ち込みを省略できます。

 車検ではカーフィルムが貼られた窓ガラスの可視光線透過率についての検査もおこないますが、実は前述の文書が発出されるまでは可視光線透過率の測定器が明確に示されていませんでした。

 そのため、車検場へのクルマの持ち込みが省略できる指定工場では、それぞれ異なる測定器で透過率を測っている状況があったのです。

 測定器が統一されていないと、ある工場の測定器では車検に通るが別の工場では車検に通らないといった状況が出てくる可能性もあり、公平性に疑問が生じます。

 また国土交通省はカーフィルムの製作者から指定工場に対する指導が統一されていないという指摘を受けたこともありました。

国土交通省の通達で何が変わったのか?

 前述の文書において、指定工場で可視光線透過率の測定器を使用する場合は基準に適合する測定器を使用すること、測定器がない場合には運輸支局などにクルマを持ち込んで受検することを指導しています。

 さらに、基準に適合する測定器として独立行政法人自動車技術総合機構において使用されている光明理化学工業製の「PT−50」や「PT−500」を例示しました。

 この件に関して、愛知県日進市においてカーフィルムの施工やカーコーティングを手がけている株式会社ウエラ名古屋の担当者は以下のように話します。

「国土交通省からの文書が出るまで、業者によっては簡易測定器を使って可視光線透過率を計測しているケースがありました。

 簡易測定器は特定の波長付近しか測定できませんが、基準に適合する『PT−50』や『PT−500』は広範囲の波長を測定できるという特徴があります。

 そのため、簡易測定器の価格が3万円から4万円程度であるのに対し、『PT−50』や『PT−500』は50万円くらいと比較的高価であり、導入していない業者も少なくありませんでした」

 また、車検時の可視光線透過率の測定方法やフィルム施工後の透過率に関しては以下のように説明しています。

「フロントガラス、運転席および助手席の窓ガラスにカーフィルムを施工している場合、それぞれの窓ガラスを測定器で測りますが、窓ガラスのどの部分を測定するという決まりはありません。

 仮にオーロラフィルムを施工すると、可視光線透過率は純正ガラスと比べて2〜5%程度低下するため、当社ではその数値を考慮した上でフィルムを施工するようにしています」

※ ※ ※

 2023年1月に国土交通省が文書を発出する以前は、指定工場で簡易測定器や精度の低下している測定器などが使用され、カーフィルムを施工したクルマが車検に通らない事例も発生していたようです。

 前述の文書で可視光線透過率の測定器が明示されたことにより、業者による測定結果の違いや対応のばらつきが少なくなることが期待されます。