Inc.:「Inc.com」のようなビジネスサイトでコラムを書いている関係で、筆者の受信箱やRSSリーダーは、連日「生産性ハックネタ」を押し売りする専門家であふれかえっています。内容の大半は聞き覚えのあるものばかりですが、最近気がついて驚いたことがあります。それは、「何もしない」という生産性ハックが増えていること。

確実なアウトプット向上の手段として「何もしない」を専門家がうたっている事例として筆者が最初に気がついたのは、精神科医のSamantha BoardmanさんのWSJブログ記事でした。彼女のもとには、「何もしない」ことに奮闘する患者が増えているのだそうです。

何もしないことが困難ってホント?


何もしない時間が困難になっています。彼らはワーカホリックなわけではありません。ただ、常に何かに心が占められている状態に慣れてしまっているだけ。ただ座って考え事をすることが、とにかく落ち着かないのです。実際、1人で考え事をする時間が完全なる恐怖になることすらあります。

しかしBoardmanさんは、「孤独は自由、クリエイティビティ、深い知識、高い精神性と関係している」とする研究結果を引用し、恐怖を乗り越えなければならないと続けます。そして、(多くの専門家と同じように)瞑想を試すことを勧めています。

これを読んで、筆者は少し驚きました。私たちはそれほどまでに、常時接続の麻薬にはまってしまったのでしょうか。ただ座って考え事をすることの必要性を、他人からいちいちリマインドしてもらわなければならないほどになってしまったのでしょうか。

その1日か2日後、タイミングよく「Medium」から、「生産性ハック:何もしない」というニュースレターが送られてきました。著者はDavid Kadavy氏。彼は半ば冗談交じりに、そのハックを「どこでもできる、いつでもできる」と推奨しています。

でも、なぜわざわざそんなことを? 彼はその記事において、「何もしないとは、心理学者が孵化(インキュベーション)と呼ぶ活動のカテゴリーの1つで、本質的な課題解決に役立ちます」とする前置きしたうえで、「何もしない」ための方法を説明しています。端的に言うと、その方法とは基本的に、「不安を無視する」こと。

何もしないことは最初は難しいかもしれません。でも、それがうまくできるようになれば、わざわざ飛行機や外食などで1人の時間を見つける必要はなくなります。自宅でくつろぎながら、何もしないことを選べるようになるのです。

Boardmanさんの記事のストレートなテーマとは異なり、Kadavy氏の記事にはダークなユーモアがあります。私たちは、自分1人で考えることがクリエイティビティや自己認識に不可欠であることを、わざわざ他人からリマインドされる必要があるのでしょうか?

それは非常に難しいことなので、そのための方法を教えてもらわなければならないというのは、真面目な話なのでしょうか。それとも何かの風刺? 「何もしない」が、果たして生産性ハックと呼べるのでしょうか?


The Surprising New Way to Boost Your Productivity | Inc.

Jessica Stillman(訳:堀込泰三)
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