先日、見物人が見守るなか、ヒラリー・クリントンは、9.11の追悼式典を途中退席し、スタッフに抱えられるように待っていた車に乗り込みました。それから間もなく、クリントン民主党大統領候補の主治医が、彼女が肺炎と診断されていたことを公表しました。

しかしその後、実は、体調を崩していたのはクリントン氏だけではなかったという報道が流れました。翌日月曜日に『People』誌が報じたところによると、クリントン陣営では、最近、複数の人たちが脱水症状や呼吸器感染症などの病気にかかっていたというのです。

病気が相次いだ原因は、単なる不運なのかもしれませんが、移動の多さや長時間労働がまったく関与していないとは言えないはずです。

「誰でも、慢性的な睡眠不足と過労とストレスに見舞われれば、感染症に対する抵抗力が弱まるでしょう」と言うのは、ワシントン大学で地域医療学と国際医療学を教えているChristopher Sanford准教授です。

また、米大統領選に出馬しているいないにかかわらず、旅行というのは、概して人を病気にかかりやすくするものなのです。

旅行で体調が崩れる理由


「旅行で体調を崩しやすい要因は次の2つです。1つは、ウイルスや細菌、寄生虫にさらされることが増えるため。2つ目は、体がそれらの影響を受けやすくなるため。このうちの1つが起きるとリスクが高まるのです」と言うのは、スタンフォードメディカルセンターの家庭医Catherine Forest氏です。

旅行者は、乗り物で他の乗客と至近距離にいることで、さまざまな感染源にさらされるとSanford氏は言います。「飛行機によく乗る人、空港をよく利用する人は、人が大勢いる場所にいることによって、鼻風邪やインフルエンザを始めとする感染症にかかる確率が少し高くなります。託児所で働く人が、よく鼻風邪をうつされるのも同じ。ともかく、そばで咳をされることが多い人は、リスクが高いのです」

このことは、研究でも証明されているようです。なかでもよく引用されるのは、米国医師会雑誌『Journal of the American Medical Association』に掲載された2002年の研究結果で、飛行機の乗客をアンケート調査したところ、その20%が、搭乗の5〜7日以内に、呼吸器感染症にかかったことを報告した、というものです。

さらに、旅行中にしがちな特定の行動も、私たちの体を感染症にかかりやすくすることがわかっています。もっとも一般的なものの1つが睡眠不足で、外泊をする、時差がある場所へ行く、また普段の生活リズムが保てない、といった要因が、旅行者の睡眠リズムを狂わせるのです。

「睡眠不足が免疫力を少し弱めるので、鼻風邪などをひきやすくなる、と言ってよいでしょう」とSanford氏は言います。

2009年に行われたある研究では、7時間未満の睡眠を14日間続けた参加者が、風邪ウイルスにさらされると、風邪が発症する確率が、 8時間以上寝た参加者の3倍になることがわかりました。2015年に行われた同様の研究でも、同様の結果が得られています。 6時間未満の睡眠を1週間続けただけでも、風邪にかかる確率が、7時間以上寝た参加者の4倍になったのです。睡眠が5時間未満の人にいたっては、さらに発症率が高いという結果でした。

飛行機で時差がある場所に行くのは、旅行者の体への影響が特に大きく、なかでも、西から東への移動がきつい――そう言うのは、オレゴン健康科学大学で、肺疾患、睡眠医学、救命救急を専門とするAkram Khan医師です。

「タイムゾーンをいくつも超えるような移動は、(体にかかる)ストレスを大きくし、概日リズムを狂わせます」とKhan医師は言います。

またストレスは、どのようなものであれ一般的に、免疫力を弱めると付け加えています。ということは、飛行機に乗るために急いだり、強行スケジュールで動いたりすることも、感染症にかかりやすくなる要因になるということです。

幸いなことに、旅行者が身を守る手段はたくさん存在します。石鹸を使って手を頻繁に洗う、などよく知られたものも多いとSanford准教授は言います。

また「インフルエンザの予防接種を受けるのも有効」だと彼は勧めています。そして65歳以上の人には、肺炎ワクチンも、今では2種類ある」とのことです。


手洗い、水分補給、十分な睡眠を摂るといった習慣が重要


また、旅行中は、水分補給を怠らないことも、免疫系を強化するために大事だとKhan医師は言います。特に飛行機の中は、体が水分不足になりやすい環境です。そしてForest医師も、旅行する人は、長時間同じ姿勢で座ることで血栓ができるリスクが上がるので、定期的に足を動かし、ストレッチすることを絶対に忘れないでほしいと付け加えています。

そしてもちろん、決まった時間に寝起きする努力も、必要不可欠です。旅行者が時差をできるだけ早く克服する方法として専門家たちが一般的に勧めるのは、目的地に着いたら、できるだけ日光を浴び、極力昼間は寝ないで、夜早めに寝るようにするということです。時差になかなか慣れない人は、朝多少のカフェインを摂ったり、夜、入眠用に低用量のメラトニンを摂ったりするのも有効だとKhan医師は付け加えています。

Forest医師によると、一般的に、手洗い、水分補給、十分な睡眠を摂るといった習慣が重要だそうです。

旅行中は自分の体をいつも以上に大事にすること。旅行中に体調を崩さないようにするコツはこれしかないようです。


WHY WE ALWAYS GET SICK WHILE TRAVELING - AND HOW TO PREVENT IT|POPULAR SCHIENCE

Chelsea Harvey(訳:和田美樹)
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