何年もの間、カフェや自宅のソファで仕事をしてきた私が、まちがいなく断言できることが1つあります。リモートワークは大変だ、ということです。本当に大変なんです。巷では、あたかも夢の働き方のように言われています。好きな時間に働けて、四六時中、上司に監視されることもなく、パジャマで仕事をすることさえ許される...。

しかし、自宅で仕事をすると、生産性が低下したり、やる気が減退したり、すぐに先延ばしの罠にはまってしまったりします。仕事時間の半分は、気晴らしや雑事の誘惑との闘いであり、残りの半分は、誘惑に負けてしまった罪の意識との闘いなのです。

どうすれば、自宅で仕事をしながら集中力を保てるでしょうか? 私は9年以上、リモートワークを実践しており、友人のダン・シュアーと一緒に、実際に役に立つ生産性戦略を練りあげてきました。以下に紹介する戦略に従えば、どんな場所で仕事をしたとしても、生産性を保つことができます。

1. 1日を正しく始める


1日の始め方が、1日の終わり方を決定します。朝起きるなりFacebookを開いてしまえば、残りの時間もそんな風に過ごすことになります。

研究結果もそれを裏付けています。エネルギーや意志力が最も高くなるのが朝です。それから時間が経つにつれ、意志力は低下し、気が散りやすくなっていきます。朝をダラダラ過ごしてしまえば、Netflixを3時間見続ける誘惑にも負けてしまうことでしょう。

エクササイズやダイエット、瞑想のほかに、1日を正しく始めるために私が築いてきた習慣が4つあります。


できるだけ早く仕事を始める

ヘミングウェイは毎朝書いていました。リチャード・ブランソンは、私有の島にいるときでさえ、朝の5時45分きっかりに起床するそうです。

日の出より早く起きるのは、多くの成功者が共通して持っている習慣です。

これは、生産性の観点から見ても合理的です。早朝は意志力も高く、気が散りずらくなります。朝起きてすぐToDoリストに取り組めば、1日の終わりに仕事が片付かないといって冷や汗をかくこともなくなります。

また、朝早く起きると幸せになれる、という研究結果もあります。


朝一番でベッドを整える

私は朝起きると何よりも先にベッドを整えます。この習慣は、元米国海軍大将で、アメリカ特殊作戦軍の第9代司令官、ウィリアム・マックレーベン氏のアドバイスに従ったものです。

マックレーベン氏は、朝起きてすぐベッドを整えることについて、こう言っています。


朝、ベッドを整えれば、その日の最初のタスクを達成したことになる。すると、小さな自信が生まれる。そして、次のタスクに取り組もうというやる気が出てくる。1日が終わるころには、小さなことがどれだけ重要かに気づくだろう...。小さなことを正しく行えないなら、大きなことも正しく行えるわけがない。


ティム・フェリス氏も同じことを勧めています。朝起きてベッドを整えれば、達成感が得られ、リストから少なくとも1つのToDoタスクを消すことができます。その後の1日をどう過ごしたとしても、とにかく1つはコントロールできたということになります。

また、朝一番でベッドを整えることで、生産性を大きく低下させる元凶、ベッドの中でスマホをチェックするという悪習慣に陥らずにすみます。


朝起きたらグラス1杯の水を飲む

ご存知かと思いますが、水分補給を十分に行っているかが、生産性にも大きく影響します。アメリカ人の75%は、慢性的な水分不足に陥っており、多くの人が推奨摂取量の3.2リットルに達していません。

水分不足は健康にも、生産性にも悪い影響を与えます。



健康的な成人は、水を飲むことで、代謝率が最大30%上昇する。とくに朝起きたときに飲むと効果的。
水を飲むと、脳が働く速度が14%アップする。8時間の睡眠をとった後など、体が脱水状態になっているときには、とくに効果的。


朝起きてすぐ、グラス1杯の水を飲むことで、2つの問題を解決できます。代謝を高められること、推奨摂取量である3.2リットルに早く近づけることです。朝に一杯の水を飲むことは、大きな問題に対するシンプルな解決策なのです。


2. 前日の夜に準備をする

「練習の有効性の多くは、準備にある」とスティーヴィン・ナハマノヴィッチ氏が、その著書『フリープレイ』の中で語っています。同氏が話しているのはアートや音楽についてですが、同じことが仕事にもあてはまります。

1日を始める前に環境を整えておけば、心のガスタンクから漏れてくる雑念にとらわれることなく、すぐに重要なタスクにとりかかることができます。

ですので、デスクから気が散るものを片付け、さらに水拭きでもしておけば、生産性をかなり高めることができます。寝る前に、翌日のToDoタスクを決めておきましょう。また、昼食や軽食も用意しておけば、意思決定のコストを払わずに、体に燃料を補給することができます。

また、メールの受信箱もできるだけ前日の夜に処理しておきましょう。そうすれば、朝、メールを開く用件が発生したときでも、新着メールに気がとられてしまうリスクを減らすことができます。


2. 定期的に環境を変える


私は基本的にいつも自宅で仕事をしています。でも、ときどき、カフェや近所のコワーキングスペースに出掛けて、環境を変えるようにしています。

一般に考えられているのとは逆に、カフェのざわつきなどのアンビエント・ノイズは生産性をむしろ高めてくれます。『Journal of Consumer Research』に掲載されたある研究によると、軽いノイズ(70db程度)があるほうが、静寂(50db)の中にいるときよりも、集中力が高まるそうです。

また、注目されているとやる気が増すという「ホーソン効果」も期待できます。人から見られていることで、ソーシャルメディアに逃避することもなくなるというわけです。多くの人が、コワーキングスペースで仕事をすると、生産性が6-7%高まると報告していますが、その理由の1つはこのホーソン効果です。

とはいえ、必ずしも大きく環境を変える必要はありません。座った姿勢からスタンディングデスクに移動するだけで、生産性が急上昇することもあります。


意志力について理解し、最大限利用する


意志力は最も人間らしい特質の1つですが、多くの人があまり理解していません。

研究により、意志力は、エネルギーと同じく、有限の資源であることがわかっています。毎日、ある一定の「意志力ポイント」を持って目覚めるとイメージすればいいでしょう。意思決定(あるいは先延ばし)をするたびに、意志力ポイントが消費されていきます。ポイントがなくなると、誘惑や雑事に気をとられやすくなるのです。

生産性を高める鍵は、この「意志力ポイント」をうまくやり繰りして、難しい意思決定をしたり、集中するためのエネルギーを残しておくことです。

私とダンにとって有効だったやり方が2つあります。


「最小抵抗の道」を選ぶ

誘惑と戦うたびに意志力ポイントが減っていきます。そして、目の前にドーナツがあると、ないときに比べて、ずっと困難な闘いを強いられることになるのはわかるでしょう。

私はこれを「最小抵抗の道を選ぶ」と呼んでいます。誘惑と戦うのではなく、周囲から誘惑の源を排除してしまうというやり方です。

誘惑がなければ、意志力を消費することもありません。

体重を減らしたいなら、冷蔵庫にアイスクリームを置かないことです。手が届く場所にアイスクリームがなければ、衝動にかられることもなくなります。同じく、ソーシャルメディアから遠ざかりたいなら、サイトを完全にブロックしておくことです。Facebookを開きたくなる衝動と毎回戦うよりも、そのほうがずっと意志力を温存できます。


雑事にとわられないように環境を整える

私の場合、毎朝、仕事部屋に入ると、以下の3つの環境がすでに整っています。

ノートパソコンが起動してあるその日のToDoリストが置いてある仕事でよく使うツール、Googleカレンダー、Googleドキュメント、Photoshopがすでに開いてある

こうしておけば、朝、ノートパソコンを起動したり、とりかかるタスクを決めたりする時間を節約できます。

あらかじめ仕事環境を整えておけば、雑事に気をとられることなく、すぐに仕事にとりかかれます。意志力も節約できるし、時間の浪費も防げます。


4. 仕事の場所とプライベートの場所を分ける


自宅で仕事をしていると、つい、ノートパソコンを持ってベッドに寝転がり、それで仕事をしているつもりになってしまいます。正直言って、私もずっとそうでした。

あるとき、仕事をする場所とプライベートの場所を分けてみたところ、生産性が大きく高まることがわかりました。寝室は寝るためだけに、リビングは友人ともてなすために使い、それとは別に、仕事専用の部屋を用意しました。

これで、生産性を高めるための基礎ができあがります。仕事部屋に入れば、昼寝をしたり、テレビを見ようとは思わなくなります。脳がここは仕事をする場所なのだと自動的に認識するためです。

仕事を始める前に、仕事着に着替えれば、さらに効果は高まります(少なくともパジャマよりはフォーマルな格好をするべき)。

また、場所を分けることで小さな「通勤」が生まれます。寝室から仕事部屋へ歩いていくだけでも、これから仕事をするのだという気分が高まります。そして、仕事部屋のドアを開けた瞬間、脳が自動的に生産的なモードに切り替わってくれます。


生産性ツールを使いこなす


私の知り合いで生産的な人はみな、生産性ツールに関する独自の「レシピ」を持っています。なかには、ごくシンプルに、2、3種類のツールだけを使う人もいます。一方、いくつものツールを複雑に組み合わせて、あらゆるデータを記録・管理している人もいます。

私が生産性向上のために使っているツールは以下です。



音楽/アンビエントサウンド:生産性音楽の『Brain.fm』、アンビエントサウンドの『Noisli』、カスタマイズされたYouTubeプレイリストを切り替えながら使っています。
ToDoリスト:タスク管理には『Any.do』と『Todoist』を切り替えながら使っています。
『Keybr』:私は仕事で文章をたくさん書きます。このツールを使ってタイプする速度を高めれば、自ずと生産性も高まります。
『Trello』:長期のプロジェクトや人との共同作業に、『kanban boards』とTrelloを組合せて使っています。
『Tasker』:Androidで使えるパワフルな「自動化」アプリ。仕事中は通知をブロックする、運転中はメッセージを音声で読み上げるなど、さまざまな設定や操作を自動化できます。
『StayFocused』:Facebookなど、ついつい時間を忘れて没頭してしまうサイトを、一定時間が過ぎるとブロックしてくれるChrome拡張機能。毎日、ソーシャルメディアの誘惑と戦っている人には大助かりのツールです。

集中力と生産性を維持するための、あなた独自のツールセットが必要です。Zapierが提供している、アプリの総括とレビューをチェックして、自分にとってベストなソフトウェアを見つけてください。1つのツールを使って効果がないときは、別のツールを試してください。


6. 生産性メソッドのABテストをする


Zapierで最も人気のある記事は、「革新的な」生産性テクニックを紹介するものです。私が試したものはたとえば、



ポモドーロ・テクニック:25分仕事をして5分間休憩するという基本セットを繰り返すテクニック。
GTD(Getting Things Done):頭の中のタスクをすべて書きだし、優先順位をつけて取り組むテクニック。
ABC&パレートの法則:ビジネス系のマネージメントでよく使われるメソッド。 まず、タスクをA(緊急かつ重要)、B(重要だが緊急ではない)、C(緊急でも重要でもない)の3つのカテゴリーに分ける。次に、パレートの法則(80:20の法則)にもとづき、Aのなかで最も時間がかからないタスクを選び、優先的に取り組む。

しかし問題もあります。こうしたテクニックが誰にでも有効だとは限らないことです。たとえば、大人気のポモドーロ・テクニックは、25分仕事をしたら必ず5分間休憩せねばなりません。

1日を時間単位で区切るような「マネージャースケジュール」で仕事をしている人たちなら問題ないでしょう。しかし、ライターやプログラマーなどクリエイティブな仕事をしているなら(つまり、「メーカースケジュール」で仕事をしているなら)、25分に1回の休憩は多すぎます。

特定のメソッドに自分のワークスタイルをはめ込むのではなく、A/Bテストを実施して、どのテクニックが自分に合うかを確かめてください。そうすれば、当てずっぽうではなく、自分に最も合った生産性システムを見つけることができます。

A/Bテストでは、あるテクニックAを1日試し、別の日にテクニックBを試すというやり方をします。そして、何週間か、気分と生産性を記録すれば、どちらのテクニックが自分に合っているかがわかります。


7. 生産性を計測し、ゲーム化する


マネジメント科学には、1つのシンプルな格言があります。「計測できるものは改善できる」です。

この格言は生産性にもあてはまります。日々の労働時間、気分、達成したタスクの数を計測すれば、弱点を見つけ、パフォーマンスを改善することができます。また、ゲームの要素を採り入れてさらに効果を高めることも可能。たとえば、5日間連続で8時間以上働けたら、自分にご褒美をあげるのもよいでしょう。

『RescueTime』などのアプリで生産性を自動計測することも可能ですが、私は古いやり方が好きです。『Toggl』などの時間計測アプリを使って労働時間を計測し、月ごとのスプレッドシートに実績を入力しています。また、自動化アプリ『Zapier』を使えば、TogglとGoogleシートを連携させて、日々の労働時間を自動記録することも可能です。

より効果を高めるために、私は1日の労働時間に上限値と下限値を設定しています。下限を下回ると罰則があります。上限を超えたらご褒美がもらえます。

月ごとにグラフを作成して、生産性の変動を監視しています。たとえば、実績を入力したスプレッドシートが以下だとします。



これをグラフ化したのがこれです。生産性の変動がひと目でわかりますね。



これで、自分がちゃんとやっているか、怠けているのかがすぐにわかります。また、日、週、月の平均労働時間もわかります。


8. Xカードテクニックで習慣づくりをする


これらの戦術の多くには、新しい習慣づくりが必要不可欠です。それにはどれくらい時間がかかるでしょうか?

フィリッパ・ラリー氏はロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの健康心理学の研究者です。ラリー氏らは、新しい習慣を作るのにどれくらい時間がかかるかを調べ、『European Journal of Social Psychology』に発表しました。

96人の被験者を12週間追いかけた結果、新しい習慣が自動化されるまでに、平均で2カ月、性格には66日かかることがわかりました。

この数字は絶対だとは言いません。66日たったら魔法のように習慣が根付いているというわけではないでしょう。しかし、良い目安にはなるはずです。

進歩を計測する1つの方法は、Xカードテクニック(サインフェルドテクニック)を使うことです。

このテクニックは非常にシンプルです。まず、縦横7マス、合計49マスのXカードを作ります。『7 weeks』などの専用アプリを使ってもいいし、普通の紙のカレンダーでもOKです。

カードの上部に、作りたい習慣を書き込みます。その日、その習慣を実行できたら、マスに大きなバツ印をつけます。

たとえば、毎晩、0時を過ぎる前にベッドに入ると決めたら、Xカードは次のようになります。



毎晩ベッドに入る前に、その日のマスにバツ印を付けます。しかし、ここで注意点があります。バツ印が途切れてはいけません。新しい習慣を作るには、毎日同じ行動を繰り返す必要があります。習慣を1日も欠かさないことが大切なのです。今日はモチベーションが下がっていると思ったら、1日でも怠ければ鎖が途切れ、また始めからやり直さなければならないことを思い出してください。

自宅で働きながら生産性を維持するのは大きな課題です。おそらく、リモートワークの最大の課題と言えるでしょう。

この課題にどう取り組むかで、生産性だけでなく、将来の成功や幸福さえも決まってきます。また、これらのテクニックを生活全体に適用すれば、仕事以外の生産性も高められることがわかるでしょう。


Be Productive Anywhere: 8 Proven Strategies for Better Remote Work|Zapier


Dmitry Dragilev(原文/訳:伊藤貴之)
Image by Caroline Tomlinson via Getty.