Inc.:オバマ大統領の夏の読書リストには、小説がたくさん入っています。ヴァージン・グループ会長のRichard Branson氏が最も影響を受けたという本のリストも同様です。この超多忙な2人のアイコンが、なぜ忙しいスケジュールを縫ってわざわざ古典文学や、将来古典になりそうな本を読んでいるのでしょう?

それは、今科学者たちが立証し始めているある事実を、彼らが直観的に知っているからかもしれません。それは、偉大な小説を読むとEQ(心の知能指数)が上がるという特異な効果のことです。

文学には時間を費やす価値があるという科学的根拠


複雑な文学と、心の能力の向上に因果関係があることを最初に提唱したのは、ニューヨークのニュースクール大学の心理学者、David Kiddと Emanuele Castanoの両氏です。2人は数年前に、著名学術雑誌『Science』で、文学小説を読むことと、人のより細かな表情を読む能力に因果関係があるという研究論文を発表しました。

しかし、その研究報告にすべての人が納得したわけではありませんでした。2人がその仮説を実験するために使った文学のサンプルは、ほんの一握りの、いささかランダムな本だと批判する人がいたのです。そのような限られた実験によって大ざっぱな一般論を導いてよいのか、という疑問です。そこで Kidd氏とCastano氏は、追加実験を計画しました。

前回の実験は、被験者にDon DeLillo やLouise Erdrich の作品の一部を読ませるというものでしたが、今回は、2,000人以上の人に、多くの著者のリストのうち何人を知っているかを聞きました。文学小説作家をたくさん知っている人は、たくさん文学小説を読んでいるはずだと推定したのです。そして、対象者に目の写真を見せ、写真の人物がどのような感情を抱いているかを識別させたのは、前回と同様です。

「結果には、明確なパターンが存在しました。より多くの文学小説作家を知っていた参加者ほど、感情認識テストの成績が高いという傾向があったのです。この因果関係は、心の能力や文学小説の多読に関わる他の因子――学歴、性別、年齢など――の影響を差し引いても、まだ認められました」。研究結果をこうまとめているのは、英国心理学協会のブログ「Research Digest」です。


それでも決定打とは言えない


こうした新しい研究報告は、多面性のある複雑な登場人物が出てくるフィクションの世界に没頭すれば、人の心の働きが深く理解できるようになるのだろう、という仮説を証明するものではあります。しかし、仮説を証明する決定打とは到底言い難い、と英国心理学協会は強調しています。

たとえば、顔の写真を感情と結びつけるテストで測定されるのは、共感力というより、言葉の知識なのではないか? という疑問があります。また、各種の感情を表す言葉を知っていることと、言外のニュアンスを読み取る必要のある小説を読むことが結びついているのは、当然なのではないか? という意見もあります。

たしかに、科学的には、単純明快に証明できることではありませんが、この研究は、本を深く広く読むことの効果がまた1つ認められたという点で、大きな意味があると思うのです。本を読む時間をとるべき、議論の余地のない理由は、この他にもすでにたくさん知られています。真に優れたリーダーになりたいと思っている人は、時おり古典文学や、評論家イチオシの最近の文学を手にしても、EQに悪いわけがない、と言えるのではないでしょうか?

あなたが最後に文学小説を読んだのはいつですか?


More Evidence Piles Up That Reading Literary Fiction Boosts EQ |Inc.com

Jessica Stillman(訳:和田美樹)
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