私も多くの人と同じく、家計が窮地に陥っているとわかったとき、必死に倹約に取り組みました。それが正しいやり方です。倹約は、結果がすぐに表れる、最高のパーソナルファイナンス戦術なのです。

お金を使わない、あるいは、使うお金を減らすと決めたとたん、その効果が財布の中に「ただちに」表われます。単純に、財布に残る現金が増えます。

もちろん、パーソナルファイナンスを改善する方法は他にもたくさんあります。パートタイムの仕事をするのもその1つです。もう一度大学に通って、より有利な学位を取るのも1つ。マイクロビジネスを始めるのも1つです。もちろん、投資をするのも1つ。とはいえ、これらの戦術は効果が表れるまでに時間がかかります。その点、倹約はすぐに効果が表れます。これが、経済的な苦境に陥った人が真っ先に倹約に取り組もうとする理由です。

では長期的に見た場合はどうでしょうか?

多くの人が、倹約は長期的には効果が低いと考えています。その理屈は単純です。倹約ではたいしたお金を節約できないからというものです。生活スタイルが最適化されていくと、これ以上は節約できないという地点に到達します。そして、すでにその地点に到達しているなら、そこからさらに倹約をするとなると、生活から喜びが失われてしまいます。一方、収入を増やす、賢く投資する、などの戦略をとれば、長期的に見て、宇宙ロケットを打ち上げるように資産を増やしていくことができます。それに比べると、倹約には限界があるように思えます。

でも、私の見方は違います。

たしかに、収入を増やしたり、投資をするのは、経済的な目標に向かって宇宙ロケットを打ち上げるような効果が期待できます。ひとたび発射台を離れれば、ロケットは上へ上へと加速しながら飛び続けます。ロケットとはつまり、あなたが保有する資産のことです。

しかし、どんなロケットでもロケット燃料が必要です。それが倹約です。倹約は、ロケットが点火し、空へ浮かび上がるために必要な燃料でなのです。倹約は、ロケットが噴射を続け、高く、高く上空へ昇っていくために必要な燃料なのです。

燃料がなければ、ロケットは飛べません。そして、ロケットがなければ、燃料があっても意味はありません。つまり、成功のためにはロケットと燃料の両方が必要なのです。

これは、実践的には何を意味するのでしょうか?

まず第一に、倹約は投資をはじめるための資金を供給します。アメリカ人の大部分が、ぎりぎりの生活をしており、401kやRoth IRA(どちらも年金プラン)に投資する余裕を持っていません。ここで倹約が助けになります。倹約して支出を減らせば、たとえば、月に100ドル節約すれば、月に100ドルを投資に回せます。1年では1200ドルです。年利が7%だとして、10年間で投資に回せる総額は数万ドルにも上ります。そう、倹約が投資の軍資金を提供してくれるのです。そして、複利のパワーが、その軍資金ロケットを一気に上空に打ち上げてくれます。


第二に、大学へ通い直したり、キャリアチャンジを試みるなど、一時的に収入が低くなる場合、倹約がそうした期間をサバイバルする助けとなります。逆に言えば、倹約という戦略を使わなければ、余裕のない暮らしをしている平均的なアメリカ人にとって、そうした新たな挑戦は不可能だということです。倹約が挑戦を可能とするのです。

このように、家計の再建に取り組む際には、倹約が間違いなく大きな役割を果たします。

では、家計の再建が軌道に乗っていたらどうでしょうか? 年金に十分なお金を投資できていたり、高収入の仕事をすでに見つけられていたとしたら? もう余裕がある暮らしをしているなら、倹約は必要ないのでは?

もしそう思うのなら、あなたはまた、お金の過ちをおかしかけています。

まず第一に、最良の倹約戦略の多くは、日々の生活に一切ネガティブな影響を与えないということです。ストアブランドのハンドソープを選んだとしても、生活に悪い影響はありません。ストアブランドの角切りトマトを選んでも、生活に悪い影響はありません。壊れるまで、質素で燃費のいい車に乗り続けても、生活に悪い影響はありません。実際に見るものだけにチャネル数を絞ってケーブルテレビの料金を節約しても、生活に悪い影響はありません。ふだんめったに使わないサービスをキャンセルしても、生活に悪い影響はありません。いきなり本を買う前に、図書館で借りて試し読みをしても、生活に悪い影響はありません。

生活に悪い影響は与えないがお金の節約にはなる、そんな賢い小さな倹約の例をいくらでも挙げることができます。問題は、なぜあなたはそうしないのか? ということです。なぜ今あるハンドソープで十分手がきれいになるのに高いハンドソープを買ってしまうのか? なぜ修理も買い替えも必要ない車を買い換えようとするのか? なぜもう半年も行っていないスポーツジムにいまだにお金を払い続けているのか? どれだけ収入があろうと、こうした選択は馬鹿馬鹿しいの一言につきます。年収が2万ドルであれ、10万ドルであれ、こうした愚かな買い物をすればお金をドブに捨てているようなものです。

第二に、倹約すれば、ロケットが打ち上がった後でも、ロケットに燃料を供給し続けられるということです。年収が急上昇したとしても、投資による利息が急成長していたとしても、月に20ドル節約し、その20ドルを投資に回せば、あなたの資産はもっと早く増えていきます。

節約したお金を投資に回せば、それだけ目的地に早く着くことができます。リタイアも早くできるし、夢の家も早く購入できます。経済事情がどれほど上向いていたとしても、この真実は変わりません。

このことが、パーソナルファイナンスに関する重要な原則に立ち返らせてくれます。年収が1万ドルであれ、10万ドルであれ、100万ドルであれ、付加価値を提供してくれないものや、重要でないものにお金を使うのは、お金の無駄遣いだということです。

倹約とは、人生で重要でない領域はどこかを調べ、そうした領域に使うお金を最小化することです。また、人生で重要な領域で、同じ価値を持つものを、よりお金をかけずに手に入れることでもあります。

年収が1万ドルであれ、10万ドルであれ、100万ドルであれ、生活の質を落とさずに楽に月10ドル節約できる方法を見つけることには、大きな価値があります。その10ドルを早期リタイアのために投資できます。その10ドルを緊急用資金にできます。その10ドルを借金返済に回せばそれだけ早く返すことができます。

別の視点から、倹約の意義を疑問視する人たちもいます。その理屈の根拠は「時は金なり」というものです。パーソナルファイナンスに倹約が役立たないと言う人たちは、倹約は、投資した時間の割にはたいしたお金を節約できないという理由で、倹約は無意味だと結論付けています。

でもそれは本当でしょうか? あなたの時間はどれくらいの価値がありますか? 1時間はいくらに相当しますか? 20ドルの価値がありますか? もし自由時間を1時間余計にもらえたら20ドル払いますか? 40ドルなら? その答えは人によって異なるはずです。

自分の時間の価値がわかったら、次は、その倹約戦術に1時間費やしたとして、1時間分のお金が節約できるかがポイントとなります。その答えがイエスなら、倹約する意味は十分にあるでしょう。

また、倹約戦術の多くは時間の節約にもつながります。我が家では食事のつくり置きをよくします。たとえば、ラザニアをつくるときは、4回分を一気につくって、3回分は冷凍しておきます。こうすることで、食材を安い時にまとめ買いできます。まとめてつくると、通常より20%から30%余計に時間がかかりますが、3回分を冷凍保存できますので、その3回分をつくる時間はまるまる節約できます。つまり、結果的に、時間とお金の両方を節約できたことになります。

同じことが、買い物リストづくりにもあてはまります。買い物リストを入念につくってから買い物に行けば、無駄なお金を使わずに済みます。一方で、リストをつくる時間は余計にかかります。とはいえ、スーパーでは買い物リストがある方が早く買い物が済みますので、その分は時間の節約になります。時間的には差し引きゼロな感じですが、余計な買い物をしない分、お金の節約にはなります。

よほど高収入で、専用シェフや買い物係を雇うお金があるのでなければ、このような倹約戦略を無視するのは明らかに損失です。こうしたほんの少し時間をかけるだけで、お金を節約できる(ときには時間も節約できる)倹約戦略が本当にたくさんあります(時間の節約にもなることも)。

そのうえ、倹約と言っても、多くの場合、「安い」商品と高い商品とで、品質の違いがわからないようなときに、安い方を選ぶだけでいいのです。前述のハンドソープがいい例です。私には、ストアブランドのハンドソープと、有名ブランドのハンドソープをの違いがまったくわかりません。でも、価格はぜんぜん違います。同じように、まったく違いがわからない製品がたくさんあります。そんなときは、私はいつもストアブランドを選びます。本や映画を図書館で借りるのも同じ理屈です。こういう事例が、ほかにもたくさん、たくさんあります。

こうした倹約術は、生活に何ら悪い影響を及ぼさずに、お金の面では良い影響を与えてくれます。収入がいくらあるかにかかわらず、倹約を無視するのは、取れるはずのお金を取らないということです。

これが、経済再建を開始して10年が過ぎても、私がまだ倹約を続けている理由です。たいていのものはストアブランドの商品を買っています。2週間に一度図書館に行き、本や映画をたくさん借ります。スーパーに行く前に、しっかり買い物リストをつくります。最低、年に一度は自動車保険を見直します。こうしたことは、それほど時間がかかりません。むしろ結果的に時間の節約になるものもあります。そして、生活の質は落とさずに、お金の節約になります。やらない理由がありませんよね?

倹約は家計の再建をはじめるために必要不可欠な燃料です。また、ロケットが噴射し続け、成層圏にまで昇っていくための燃料にもなります。決して倹約を過小評価しないでください。


Frugality and Long-Term Financial Success | The Simple Dollar


Trent Hamm(原文/訳:伊藤貴之)
Image by Endai Huedl via Getty.