ひとりでできることには限界があるのだし、そもそも周囲との関わりなしに仕事を完結させることは現実的に不可能。とはいっても人はみんな価値観が違うからこそ、どうしてもソリが合わない相手、面倒な相手は出てきてしまうもの。誰しも、心当たりがあるのではないでしょうか?

ところが、どうだろう。周りを見渡せば、「誰とでも、何をやってもうまくいく人」は必ずいる。(中略)そういう人は、いったい何が違うのか。才能なのか、性格なのか、環境なのか...。
答えは、そのどれでもない。必要なのは、スキルや経験、習慣といった後天的なものである。だから、自分には大した才能もないなどと自信をなくす必要もない。必要なものを、これから身につけていけばいいのだ。(「はじめに」より)

そう主張するのは、『誰とでも何をやってもうまくいく人の考え方・仕事のやり方』(松浦拓平著、クロスメディア・パブリッシング)の著者。大学卒業後、新卒で入社した松竹を経て27歳で独立。順調な実績を生み出しているのだそうです。

しかし、自分には特別な能力があるとは思っていないのだとか。多くの人に支えられているからこそ、現在の自分があるということ。そして、いろいろな人に協力してもらえるのには、ちょっとしたコツがあるのだといいます。つまり、そのコツを明かしたのが本書だというわけです。第3章「誰とでも何をやってもうまくいく人は スピードにこだわる」から、いくつかを引き出してみます。

超・即レスが基本


著者のオフィスでは、「超・即レス」を徹底しているのだそうです。1時間以内に反応がないと、寝ているか、もしくは病気だと判断されるほどのレベルなのだといいます。つまりベンチャー企業においては、素早さが命だということ。だからこそスピードを重視するのは当然だと考えているというわけですが、これは組織に限ったことではないともいいます。

なぜなら冒頭でも触れたとおり、基本的にひとりで完結する仕事はないから。誰かと協力したり、誰かにお願いしたり、多かれ少なかれ、そこには自分以外の人間が存在するということです。

著者自身も一対一というより、複数のメンバーとチームを組んでプロジェクトを進めていくことが多いといいますが、そんなときにいちばん必要となってくるのはコミュニケーション力。お互いがお互いを思いやり、きちんと理解しあっているプロジェクトは、とても円滑に進むもの。そして、円滑なコミュニケーションに求められる基本スキルこそ、「超・即レス」だというのです。

相手が社内の人間なら、そこまで急ぐ必要はないかもしれませんが、外部の人とのコミュニケーションとなれば話は別。たとえば「自分は東京にいても相手が海外にいる」など、距離がある人とコミュニケーションをとらなければならない場合もあるわけです。そんなときこそ、「超・即レス」が重要な意味を持つということ。距離を感じさせることなく、その場で話しているようにチャットでポンポンとやり取りできなければ、プロジェクトは一向に進まないというわけです。

メールにしても同じ。メールを開いたら、すぐに返す。そして、開いていないメールは手つかずのタスクとして、あえて未読にしておく。これを徹底すれば、「開いたメール=返答済み」という状態が当たり前になるため、うっかり返信し忘れることもなくなるわけです。そういう意味でも、円滑なコミュニケーションのコツは、「超・即レス」にあると著者は主張します。(54ページより)


7割で上出来


企画や資料の作成を頼まれたときには、どのくらいのクオリティを目指すべきか悩んでしまう人も多いのではないでしょうか? この点についていえば、著者の場合は7割くらいの完成度にして、まずは確認を仰ぐようにしているのだそうです。

なにかをつくるとなると、どうしても完璧を目指したくなってしまうもの。しかし、「相手が喜ぶもの、納得するものを100%の状態にしてから出したい」という完璧主義の人は、決まって完成が遅くなるものだといいます。

たしかに、1度の確認だけで100%を出せた方が、手間が少なく、信頼も獲得できそうです。ところが、こちらが100%だと思って出したものが、外部の目から見たら50%も仕上がっていないという可能性もあるわけです。だからこそ、「本当に完璧なものなど、いつまでたっても生まれはしない」というくらいの気持ちでいたほうが、物事はスムーズに進むものだといいます。

事実、著者は毎週2〜3本の企画書をつくっているので、いったん7割、あるいは6割程度の段階で、相手に「こんなトーンでどうですか?」とボールを投げることが多いのだそうです。そうすれば、かえって手間が少なくなり、結果的にいいものがつくれるということ。

例えば、クライアントから「ロンハーマン的な感じでオシャレに仕上げてほしい」と依頼を受けたとする。自分の頭の中では、「ロンハーマンはハッピーで、オーセンティックで、遊び心と本物の両立だ」と感じても、それはあくまで主観的なものであって、先方のイメージとは微妙にずれている可能性がある。そうなれば、やり直しの作業が発生してしまうだろう。(58ページより)

たとえ7割のクオリティであっても、そのぶん早めに外部の目に触れさせて確認をとっておけば、「思っていたのと違う」「やりなおしてくれ」などといわれることもなくなるということ。早い段階で方向性やトーンなどをすり合わせ、相談しながら完成させていくスタンスをとったほうが、ムダな作業も減り、結果的に信頼されるというわけです。(57ページより)


企画書は美しく


とはいっても質は高いに越したことがなく、特に企画書の質には気を遣いたいところ。「たかが資料じゃないか」と軽く考えるのは大きな間違いであり、美しい企画書は、人を巻き込むうえで欠かせないアイテムだとすら著者はいいます。見た目がキレイなだけで、受け取った側の印象が大きく変わるというのです。

でも、見る人の心をつかむ美しい企画書をゼロからつくろうとすれば、当然のごとく時間がかかります。では、時間をかけず、極力質の高いアウトプットをするためにはどうしたらいいのでしょうか? この問いに対し、著者は次のように述べています。

まずは、日ごろからさまざまなデザインに触れておく。次に、そこから受けたインスピレーションで企画書をつくる。そして、それらのフォーマットをひとつのパワーポイント資料にまとめておく。この3つを繰り返し行えば、自分専用のテンプレート集ができあがるというわけです。

ちなみに著者は、自分の作品だけをストックしているわけではないそうです。個人フォルダには、これまでにもらった企画書や配布資料のテンプレートが、業種別で編集できるようになっているのだとか。それらを参考にして、クライアントや目的にマッチするデザインを選んで参考にしているということ。

さらには、ときに有料素材も活用し、「お金で時間を買う」という発想を大切にしたいともいいます。スピードを意識するからこそ、普段からそのような心がけが必要だという考え方です。(59ページより)


捨てる! データ整理術


会社員時代を振り返り、「デスクが汚い人は仕事ができなかった」と著者は断言しています。机だけでなく、パソコン内のデータも含めてのことだとか。

「ものを捨てる」とは、「捨てる決断をする」ということ。捨てるものを決められない人のパソコンは、いるものといらないものが混在していて、欲しい情報がすぐに引き出せないというのです。探すだけで時間がかかってしまうため、「仕事が遅い」「大事な仕事は頼めない」と思われてしまうということ。

しかし自分なりに「捨てるルール」を決めておくと、情報管理が楽になり、作業スピードも一気に上がるといいます。そして著者は、次のことを心がけているといいます。

1. 情報の一元管理
鉄則は、情報を1つの場所に管理すること。自分のローカルフォルダでは、必ず使い慣れたアプリで管理をするべき。でないと、最新情報がどこにあるのかが把握できなくなるから。どこにどのファイルがあるのかを、常に把握しておくことが大事だということです。

2. フォルダ・データの整理
いらなくなったフォルダやデータは、どんどん捨てていく。この作業を怠ると、フォルダ内がゴチャゴチャになってしまうことになるからです。

3. デスクトップの整理
デスクトップは常に空にしておく。使うのは、なにかファイルを別名保存したり、添付のために情報を一時的に保存しておくときだけ。常にこの状態を保っておけば、作業がスムーズになるわけです。

4. 「お気に入り」をさらに仕分け
気に入ったサイトは、まず「お気に入り」に登録。さらにそれらのページをフォルダ分けし、お気に入りウェブページの仕分け作業をするようにしているそうです。

5. 「最近使ったフォルダ」機能
「最近使ったフォルダ」機能は、多用したほうがいいとか。保存したデータを使おうというとき、いちいちフォルダの階層を下がっていくのは時間がかかるもの。そこで「最近使ったフォルダ」を使い、一気に該当のデータにたどり着けば、30秒程度を短縮できるといいます。(76ページより)



他にも、情報とのつきあい方、ブランディングの仕方、心の持ち方、仕事の仕方、休み方、キャリアの描き方など、ビジネスパーソンとして成功するための術をさまざまな角度から明かしています。広い視野に基づいているからこそ、応用できることが見つかる可能性大。仕事をより円滑を進めたい人は、手にとってみてはいかがでしょうか?


(印南敦史)