環境、社会貢献、企業統治を重視して投資先を選ぶ「ESG投資」が、大手生保など国内機関投資家に広がっている。財務情報だけでなく、環境保全など長期的な企業価値向上につながる情報を重視しながら収益を求める手法で、超低金利下でも比較的高い利回りが期待できることも拡大を後押ししている。【中島和哉】

 三井生命保険は昨年11月、世界銀行が発展途上国の持続的開発を支援するため発行した豪ドル建て15年債に、約100億円を投資した。ESGに配慮したプロジェクトに絞って投融資を行う「テーマ投資」と呼ばれる手法で、利回りも3%超と、豪ドル建て国債(10年債で2.3%程度)を大きく上回った。

 第一生命保険も昨年11月、アフリカ開発銀行発行の農業支援のための債券(10年債利回り2%)に、約52億円を投資。日本生命や住友生命、明治安田生命も、「食料確保」や「女性活躍支援」などに使い道を絞った債券にテーマ投資を行った。いずれも同格付けの国内債券を上回る利回りを確保したという。

 三井生命は「社会的課題に取り組む企業ほど、長期的には安定的な高利回りを得られる傾向がわかってきた」として、今年度中にESG関連で計230億円を積む方針だ。日本生命、住友生命、明治安田生命もこれまでESG関連に約1000億〜1500億円の投資を行った。日興リサーチセンターの調査によると、2015年9月時点の日本のESG投資は46兆円で、12年3月時点の27兆円から7割も増えたという。

 国際団体GSIAによると、欧州では運用資産残高の6割がESG関連とされるのに対し、アジアでは14年時点で1%未満にとどまる。だが、15年に公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連の責任投資原則に署名したことで、日本国内でも流れが加速しつつある。三菱UFJ信託銀行は「海外投資家から『チームにESG担当者はいるのか』などと当然のように聞かれるようになった。数値に表れない情報にどれだけ取り組んでいるのか投資家に注目されている」と重要性を指摘する。

 【キーワード】ESG投資

 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance=統治)の英語の頭文字から作られた言葉。「責任投資」「持続可能な投資」などとも呼ばれる。国連が2006年、「機関投資家の投資意思決定にESGの視点を反映させるべきだ」とする責任投資原則を提唱して機運が高まった。手法には、(1)投資先企業との対話を通じてESGへの取り組みを促す(2)ESGの観点で問題ありと判断した企業を投資先から除外する(3)資金の使途をESG関連に絞って投資や融資を行う(テーマ投資)−−などがある。国際団体GSIAによると14年時点の世界のESG投資残高は21兆3575億ドル(約2450兆円)で、12年から1.6倍に増加した。