犯罪とは無関係な金融口座の誤凍結問題で、大阪市内の40代男性は昨年秋、ヤミ金業者から借金した直後に預金口座を止められた。警察が「業者の関連口座」と判断したためだが、男性の「無実」の訴えが聞き入れられたのは7カ月後だった。男性は取材に「口座を自由に持てず、惨めな生活を強いられた。凍結の運用を見直すべきだ」と訴えた。

 「ログインできません」。昨年11月、自宅のパソコンで預金口座の残高を確認しようとすると、アクセスを拒否された。男性の問い合わせに銀行は「京都府警の依頼」と説明し、府警の担当者からは電話で「口座がヤミ金業者に使われている」と告げられた。

 男性はこの1カ月前、ネットで探したヤミ金業者に連絡を取り、5万円を借りた。振込先として、業者に伝えたのが凍結された口座の番号だった。

 男性は集合住宅で足が不自由な高齢の母親と暮らす。通信会社でのアルバイト収入で介護費や生活費を賄うが、昨年秋は母親の手術などで出費がかさんだ。数年前に自己破産して正規の金融機関から融資を受けられず、このヤミ金業者を1度だけ頼った。

 男性の口座に入金された5万円は、同じ業者から融資を受けた別の客が業者と思い込んで振り込んだ返済金だったとみられる。

 ヤミ金業者は近年、顧客に返済金の送金先を指示する際、勝手に別の客の口座を伝えるケースがある。ヤミ金被害者は返済口座を「業者の口座」と勘違いし、相談を受けた警察は確認が不十分なまま振り込め詐欺救済法に基づき金融機関に口座凍結を求めることが、誤凍結の主な原因とされる。

 男性は府警に「自分は業者ではない」と何度も訴えたが、「一度凍結されたら解除は難しい」と取り合ってもらえなかったという。

 今年4月には給料の振込先などにしていた残る2口座も使えなくなった。警察庁は救済法で凍結した口座の名義人情報をリスト化。別の金融機関にも情報提供し、他の契約口座も順次凍結される。

 男性は新たな口座凍結で家賃や公共料金を払えなくなった。勤務先の上司に事情を説明し、給料を手渡しでもらえるよう頼んだ。男性は「本当に情けなかった」と漏らした。

 男性は5月、ヤミ金被害者の支援団体の仲介で、ようやく府警に口座凍結の解除を求める機会を得た。業者側との関係性を否定するキャッシュカードの提出を初めて求められ、府警側から6月に電話が入った。「犯罪と無関係の証明ができたので、リストから名前を外します」。担当者の説明は素っ気ないものだったという。

 男性は「警察や銀行は何も悪くない私に『無実』の証明を求めた。早く運用を改めないと、私と同じ被害はなくならない」と憤った。【向畑泰司】

 ◇防止確認を徹底、支援団体要請へ

 男性から相談を受けたヤミ金被害者の支援団体「大阪クレサラ・貧困被害をなくす会」(通称・大阪いちょうの会)は近く、警察庁や全国銀行協会に対し、口座の誤凍結を防ぐ確認作業の徹底を求める申し入れを行う。

 誤って口座が止められた場合、現在は名義人が自ら警察や金融機関に申告して間違いと証明する必要がある。民事裁判に発展して解決が長期化するケースも出ており、同会は解除の迅速化を図る運用改善も訴える。

 同会ヤミ金対策委員長で司法書士の前田勝範さん(47)は「資産が底を突くヤミ金被害者らの口座凍結は、日常生活への支障が大きく、生活再建が困難になることもある。救済制度の見直しが必要だ」と話す。