南海トラフ巨大地震の津波被害が予想される14都県の139市町村のうち、神奈川県藤沢市など64市町が災害後の仮設住宅の建設に備えて事前に用地確保を進め、三重県伊勢市など25市町村が役所や消防といった災害対策の中心を担う公共機関の高台移転を進めていることが毎日新聞のアンケートで分かった。一方、阪神大震災(1995年)を教訓に国が自治体に勧める「事前復興計画」を策定したのは3市町にとどまることも判明した。

 調査対象の139市町村は、政府が南海トラフ地震の津波避難対策特別強化地域に指定している。仮設住宅用地を確保していたのは三重県四日市市▽和歌山県有田市▽宮崎県日南市−−など。公共機関の高台移転に取り組んでいるのは高知県須崎市−−などだった。徳島県美波町は津波の浸水想定区域の住民に、高台に事前に集団移転してもらう対策を進める。高知県黒潮町も検討中という。

 また、仮設住宅の提供について建設業団体などと事前に協定を結んでいたのが▽静岡県袋井市▽三重県川越町▽和歌山県御坊市▽高知県香南市−−など14市町。被災した自治体の要請を待たず必要と思われる救援物資を送る「プッシュ型支援」のための拠点を事前に確保している自治体も多く、▽千葉県館山市▽神奈川県平塚市▽静岡県沼津市▽愛知県南知多町▽和歌山市▽徳島県鳴門市▽鹿児島県志布志市−−など76市町に上った。

 だが、被害を最小限に抑え、復興への作業をスムーズに進めるために、防災に強いまちづくりを進めたり、被災後の対応手順などを決めておいたりする「事前復興計画」策定の動きは低調だ。具体的には、高台移転などの都市計画のほか、避難所の運営、物資や住居の確保などの方法を事前に決定することなどが想定されている。阪神大震災半年後に改訂された国の防災基本計画に初めて文言が盛り込まれた。それから20年以上が経過したが、策定しているのは浜松市、静岡県富士市、高知県安田町のみ。ただ、53市町が策定を検討していると回答した。【石川貴教】

 ◇防災策の整理 重要

 室崎益輝・兵庫県立大防災教育研究センター長(防災計画)の話 どのような形で防災施策を用意しておくかは各自治体が判断すべきだが、「事前復興計画」としてまとめる作業は、各分野にまたがる施策を交通整理し、見直すことにつながる。重要性が理解されてきつつあり、体系化しようという動きもこれから出てくるだろう。