大相撲秋場所12日目の22日、全勝の豪栄道は鶴竜を押し出しで破り、ただ一人無敗を守り、13日目にも初優勝の可能性が出てきた。琴奨菊を転がした日馬富士と、三役で2場所連続勝ち星を2桁に乗せて大関取りの足場を固めた新関脇・高安、平幕の遠藤の3人が2敗を守ったが、13日目に遠藤と高安が敗れ、結びで豪栄道が日馬富士との直接対決に勝てば、豪栄道の初賜杯が決まる。

 照ノ富士は6連敗で負け越し、来場所は2場所ぶりの3度目のカド番になる。新関脇・宝富士と小結・魁聖も負け越した。

 ◇あふれる興奮隠せず

 荒い息で支度部屋に戻り、先に風呂に入った日馬富士を待つ豪栄道。風呂場に向かうために立ち上がった瞬間「よっしゃ!」と叫んだ。待つ間の約10分間、報道陣には淡々と応じたが、あふれる興奮は隠せなかった。

 我慢の相撲だった。狙った双差しになれなかった豪栄道は下からあてがって応戦。はたこうとする悪いくせが顔をのぞかせたが思いとどまり、逆に鶴竜がたまらず引いたところに乗じて押し出した。

 これに驚いたのが土俵下の友綱審判長(元関脇・魁輝)。「落ち着いて相撲を取る豪栄道は記憶にない。大変身だね」

 豪栄道も「今場所は今までにない感覚があるか」との報道陣の問いに「そうですね」とうなずく。対策を練って方針を決める。この日は「引かず、我慢」。勝っていくうちに、相手の動きもよく見えているから「体の動きに任せて」思い通りの相撲を取れている。「彼(豪栄道)もカド番で考えることがあったかもしれない」とは鶴竜。後がない緊張感が好転した形だ。

 「僕には経験がある」は、豪栄道が今場所よく口にする言葉。大関13場所目の30歳。2桁勝利はこの場所を入れてわずか2場所しかなく苦しんだ。その経験を生かして並べた12個の白星。初優勝に大きく近づいた。【倉岡一樹】