年の瀬の朝、冬休みの体育館に「カンッ、コンッ」という小気味よい音が響く。府立なにわ高等支援学校(大阪市浪速区)の卓球部の休日練習だ。その中で、強いドライブを放つ小柄な左利きの選手がいた。発達障害を持つ1年の坂口海斗さん(15)=同市住之江区。活動範囲は障害者の大会に収まらず、昨年7月の健常者の大会でも1勝を挙げた。同校卓球部は2017年度、高体連に加盟する予定で「障害者と健常者が別々なのは嫌だ。夢は20年の東京五輪出場です」と目を輝かせる。

 坂口さんのプレースタイルは攻撃型で、「とにかく前に行くこと」を意識しているという。低くて早いサーブで崩し、ドライブと「粒高ラバー」を生かしたスピンでポイントを稼ぐ。昨年10月の障害者国体に市代表として出場したほか、健常者も出場する府立高校の大会でも1勝を挙げた。

 坂口さんは障害のため、教科によって極端に苦手な分野がある。中学まで一般の公立校に通ったが、体調が悪いと感情が乱れ、声を上げることもあり、そうなると言いたい言葉がうまく出てこない。結果、トラブルとなるが、落ち着くと「ごめんなさい」と謝る。善悪の判断が付きながら、思い通りに振る舞えないつらさを抱えてきた。祖母の小野容子さん(66)は「『自分は障害を持っている』というプレッシャーに苦しんでいた。高校で支援学校に進み、自分の特徴を理解する人々に囲まれ、とても楽しんでいるようです」と話す。

 そんな中、中1で始めた卓球は、一般校の大会で賞状をもらう戦績を収めるなど、自信を深めてくれた。スポーツは練習、試合を通じて、精神的な状態が極めて重要な要素となる。カッとしたときは「ちょっと落ち着かせるために、深呼吸するか、ラケットを触るようにしている」。落ち込んだ時は「端っこの方にいて、落ち着いたら元に戻る」。アスリートとしての進化は、坂口さん自身の成長でもある。

 スポーツ庁や全国高体連によると、どれだけの人数の支援学校生が高体連の大会に出場しているかを調べたデータはない。障害の種類によって参加できる競技はさまざまで、陸上など個人記録種目は参加しやすい一方、対戦型の競技は、知的障害や発達障害の場合はあまり例がない。大阪市障害者福祉・スポーツ協会の小山直幸・スポーツ振興室長は「一般的に障害者を特別視し過ぎる傾向にある。個々の障害の状態を把握し、安全に競技ができることが確認できれば、もっと道が開けていくはずだ」と期待を寄せる。

 坂口さんは部活動だけでは満足できず、自宅近くの卓球場にも通い始めた。小野さんも「友達の輪の中でたくましくなった。夢中になれることを一つでも続けてほしい」と目を細める。坂口さんら同校卓球部の、パラスポーツの垣根を取り払うチャレンジは、始まったばかりだ。【福田隆】