◇彦九郎、朔太郎も“復権”

 前回、県民の“支持”を集めながら上毛かるたの選にもれた江戸期の思想家、高山彦九郎を取り上げたが、21世紀に入り、「復権」を果たした。2001年、5人の高校生が作った「平成版上州かるた」。その中で、「変革の 世にさきがけし 彦九郎」と詠まれた。

 平成版には、このほか、萩原朔太郎、中島知久平、山田かまち−−ら、“元祖”にはない新時代にふさわしい著名人が多く登場する。

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 平成版を作った5人は、県立吉井高校の2年(当時)の男子生徒たち。01年度から同校が導入した選択科目「群馬学」の中で、かるたづくりに取り組んだ。44札に何を詠み、五七五でどう表現するか。5人は頭をひねった。

 その一人、池田尚央さん(32)が担当したのは「つ」。「群馬県人なら誰もが知っている『鶴舞う形の群馬県』に代わる『つ』だから、気合を入れて作った」。選んだのは朔太郎だった。

 元祖からもれた理由について担当教諭からこう聞いた。「大人になっても定職に就かず、萩原医院という立派な病院をつぶした男」。写真で見る洗練された雰囲気が印象的だっただけに、時代や立場による評価の違いを知り、「ぜひ詠みたい」と思ったという。そして、完成した札が「『月に吠える』 近代詩の旗手 朔太郎」。

 平成版は、女性の「躍進」も目立った。「無重力 女性飛行士 向井千秋」「ハンセン病 生涯ささげた コンオール・リー」「かかあ天下 世界に誇る 上州女性」−−。

 館林出身の向井千秋さんは1994年、日本人初の女性宇宙飛行士として米スペースシャトル「コロンビア号」に搭乗した。英国人のコンウォール・リー氏(1857〜1941年)は、草津町にハンセン病療養所となる「聖バルナバホーム」を開設した。

 「意識して『女性』を選んだわけではなく、男女平等が当たり前という時代の表れではないか」。当時、社会科教諭として「群馬学」を担当し、現在は前橋市文化スポーツ観光部参事の手島仁さん(57)は振り返る。

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 こんなに誇れるものがあったなんて。平成版を作る中で、生徒たちは驚きの連続だったという。選考に頭を悩ます中で、すんなり決まった札もあった。「焼きまんじゅう 上州の味 からっ風」。上毛かるた自体も登場する。「県民に 愛され50年 上毛かるた」

 朔太郎を詠んだ池田さんは現在、公務員。家族と千葉県で暮らすが、1歳半の子どもには「いつか上毛かるたで遊んでもらいたい」と思っている。その時は、平成版を作ったことを自慢するつもりだ。【鈴木敦子】=つづく

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