路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

こんにちは、メシ通レポーターの松永です。

みなさんはコーヒーはお好きですか? サードウェーブコーヒーの流行から、自家焙煎だったりエスプレッソマシンや豆にこだわりのあるお店が注目されてきましたよね。
けっこうコーヒーを特集した本なんかも出ています。

今回は、僕が京都で一番好きなコーヒー店をご紹介します。
その名はこの「HiFi Café」。

京都御所の南の閑静な通りに、見落として通り過ぎてしまいそうな入口、そしてその路地の奥にたたずむカフェがあります。

では行ってみましょう。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

10メートルほどある路地。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

正面のドアのむこうにも長細い路地、キッチンへと続く典型的な町家造り。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

靴を脱いで上がります。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

大声での会話はNG、調度品には触れてはいけません。(撮影の許可は頂きました)

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

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町家らしさを残した少しレトロな雰囲気がある店内。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

畳で足を伸ばしてのんびりできます。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

BGMは伸びやかなジャズヴォーカル。レコードをかけているんですね。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

レコード棚の「触らないでね!」のコメント。「Thank you」のハンコが優しさをかもし出しています。

音楽に関しては、中学の時に映画音楽から入って、オールジャンルなんでも聴く派の吉川さん。敬愛するのは、映画音楽界の巨匠ヘンリー・マンシーニとのこと。個人的に次来たら音楽の話をしたい……。

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

棚のまわりもきれいに整っています。店主の几帳面さががうかがい知れますね。

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こちらが店主の吉川さん。人見知りとのことで、表情がカタイですが、とても優しい方です。

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早速ブレンドの78rpm(ふわり)500円を注文。「マイルド」と「ビター」はわかるんですが、「ふわり」の何ともユルい表現。でもほんとに「ふわり」の表現が似合う味なんです。

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▲ブレンド78rpm(ふわり)500円

うん、美味しい……(しみじみ)。

最初はびっくりしたんですが、まず、ここのコーヒーは温度が低い。口当たりが柔らかく、すっと口に入ってきますが、舌にコーヒーが乗ると、とても濃い苦味が広がります。それでも不思議と後味はスッキリで、何度も飲みたくなる味。

僕自身、何度か来店して記憶に残っていましたが、今回、そのインパクトのある味の秘密をうかがうことができました。

吉川さん「うちのコーヒーはいわゆる『ぬるい』『甘苦い』『濃い』という3つの特徴があるコーヒーですね。豆をハンドロースターでじっくり時間をかけて焙煎していくんですが、深く深く焙煎すると、豆の甘みが上がるんですよ。そして、だいたい80〜70℃ぐらいのお湯でネルドリップ。これまたじっくり15分ほどかけて落とすことで甘みがよく出るわけです。甘みが苦みと拮抗(きっこう)するので、より苦くても甘く感じる味になっています」

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ネル(布フィルター)を使ってドリップ。ペーパードリップだと、味にエッジが立ちすぎてきつくなるのだとか。

──コーヒー豆の甘みなんて初めて聞いた気がします。

吉川さん「そもそも豆にはごくわずかな甘みしかないのですが、それを引き出します。トロッとしたし舌触りが感じられたらベストな状態です」

──なるほど、甘みがさらに苦みを引き立てるわけですね。

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──ハンドロースターを見せてもらいました。福引きのガラガラみたいなフォルム。こんな形をしているんですね。

吉川さん「胴の部分に豆を入れて、ガスバーナーの上でぐるぐる回すわけです。穴が空いている方は直火、閉じている方は蒸し焼きにできます。豆の種類によって使い分けています」

──アナログ! 焼き加減なんかはどうやって把握しているんですか?

吉川さん「香りと色、パチパチ、チリチリ……っていうハゼ音、ハンドルにかかる重みなどを観察しながら、最後は感覚ですね。豆の種類、その日の気温湿度などを鑑みながら調整しています」

──それにしても、どうして、この濃い味にたどり着いたんですか?

吉川さん「東京の飲食店で修行をしていた際に、南青山の大坊珈琲店でこういった種類のコーヒーに出合ったんです。最初に飲んだ時、濃くて苦い! とびっくりしました。でもなぜかまた行きたくなって、それで通うようになってわかったんですが、濃いというのは、よく(コーヒーの味と甘みが)出ている、ということだったんです」

──そうでしたか! よく出ているというのは、ネルドリップで、味がよく抽出されているということですね。


(再びコーヒーをすすり)う〜ん、この濃さが美味しい。

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壁には、大坊珈琲店からのグリーティングカードが。京都に来られる際にはこちらにも立ち寄られることもあるとか。

──この濃さは修業時代の出会いから来ているんですね。それでこの味を目指すようになったと。大坊さんから教わったりしたんですか?

吉川さん「いえ、通いつめてひたすら味をみつめていました。コーヒーの焙煎と味に関しては、基本的には自分で詰めていったものです」

──独学で! まさに職人技ですね。

吉川さん「喫茶店での経験はあったので、そこからコーヒーについて研究しました。原理はわかっていたので、あとはいろいろ試すのみ。今でも毎日豆と格闘中です。コーヒー豆は農産物ですし、条件はそれぞれ違いますので」

──すごい……。

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ちょっと見せてもらった日々の焙煎ノート。豆の種類での味や焙煎時間などの違いが条件ごとにメモされている…。

──この味、大げさですけど、最初はびっくりしますね。これがコーヒーの味なのかって。口に合わないお客さんもいるのではないですか?

吉川さん「そうですね。熱々のやつで、アメリカンが欲しい、と言われたこともありますし、ドリップの時間も長いですから、例えば、4人でこられたら、全部出すのに60分かかっちゃいます」

──確かに……。団体のお客さんのときは実際にそんなに時間をかけるんですか?

吉川さん「お客さんが待ってくださるなら……。どうしてもお急ぎの場合は、ペーパードリップで早めに出しますし、温度も熱いものでも対応可能です」

──職人気質のお店だったら、突っぱねてしまいそうなところですね。

吉川さん「お客さんに無理強いはできませんし、背に腹は変えられないというか(笑)。せっかく来てくれて、という思いもありますから……」

──こだわりはしっかり持っていつつも、状況に応じて入れ方を変化させる柔軟さは、吉川さんの人柄ですね。懐が深い!

吉川さん「でも、それまでずっとコーヒーに砂糖とミルクを入れて飲んでいた方が、だんだんコーヒーを気に入ってくれて、ブラックで飲むようになり、『ほかのコーヒーはもう飲めない』って言ってくれるようになる。それはうれしいことですね」

誰も知り合いがいない土地でお店をオープン

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

大阪出身の吉川さんは、自分のコーヒー店を開くべく、東京と横浜のコーヒー店や飲食店などで働き、地元の関西へ独立のために帰ってきました。

「人見知りなので、客商売を大阪でやるのは、お客さんとの近すぎる距離感がちょっと苦手……」ということで、特につながりもなかったのですが、同じく喫茶文化の根強い京都でお店をやることにします。そうして2011年の2月に「HiFi Café」はオープンしました。

お店の方針としては、お客さんが気持ちよく個人の時間を過ごしてもらいたいということで、吉川さん自身からお客さんに話かけることは少ないと言います。

ちなみに、あの注意を喚起する張り紙は、観光地ゆえにはじめてのお客さんも多く訪れることを想定して書いたもので、最近は常連さんも多く、あの注意が発動することは滅多にない空間になってきたそうです。

それにしても、いきなり知らない街でお店をやるのは勇気が必要だったはず。

吉川さん「ええ、最初は本当にお客さんが来なくて……。僕自身奥手ですから、話しかけたりもしなくて。でも、不思議と同業者の方とかが来てくれるようになって、ショップカードを(自分のお店での配布用に)多めに持って行ってくれるようになったんです。」

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書店からレコード店、大阪、東京の喫茶店のショップカードも。

吉川さん「見るに見かねたんでしょうね(笑)。でも、近所でしかも同業者の方が優しくしてくれるのなんて、ひょっとすると京都ならではなのかもしれません。関東では、そんなことはありえなかったですね、もちろん僕が見てなかっただけかもしれませんが。ともかく気にかけてくれたことはうれしかったですね」

吉川さん「それから、お店の看板や宣伝関係も実は常連さんが作ってくれたものなんですよ」

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ここで再び入り口の看板。

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コーヒー豆をモチーフにした看板まで!

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

「HiFi Café」が発行するフリーペーパー『NEW WORLD SERVICE』は現在vol.19。喫茶店のほか、銭湯や映画館、書店など市内50か所近くで配布されているんですって!

──もしや、このフリーペーパーもそうですか?

吉川さん「はい、知り合いのライターさんが作ってくれています。お店に関係する人が執筆してくれたりしています」

一徹なコーヒーの味と、居心地の良さ、吉川さんの人柄で、宣伝しなくてもお客さんが集まってきてくれたんですね。 ミュージシャンや文化人も多く訪れると言います。

最後にランチの名物「ドライカレー」をいただいて帰るとします。

スパイス使いにもコダワリ 名物カレー

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

▲コーヒー付きで1,000円のハイファイカレーセット

本日はドライカレー。日によってチキンカレーや南洋カレー、ブラジルの豆料理フェイジョアーダになることもあるとか。

これは美味! 汗が出る辛さと、スパイスの濃さが印象的です。さては吉川さん、スパイスにも一家言ありそうですね……?

吉川さん「味ってコントラストとバランス、そしてコクで決まるものだと思うんですよ。僕のコーヒーが甘みと苦みの拮抗(きっこう)のように、カレーも辛さの中に甘みがあることで美味しく感じたりするのだと思うんです。スパイスもオタク化する要素がありますから、僕が美味しいと思うバランスまで持っていくのに時間をかけました。フェイジョアーダも、ブラジル留学していたというお客さんと一緒に、ああでもないこうでもないと言いながら作った自信作ですよ」

……と、カレーの話も長くなりそうなので、この辺で。コーヒーにしてもスパイスにしてもなんでも凝り性な吉川さんは話がつきません。

路地奥のカフェということで、その入り口の雰囲気の通り、ひっそりとはしていますが、マニアックな店主の趣味にたっぷり浸れる、あまり人に教えたくない系のお店よりレポートでしたっ!

お店情報

HiFi Café

住所:京都府京都市中京区藤木町41-2
電話番号:075-201-6231
営業時間:12:00〜19:00(土曜日・日曜日・祝日は10:00〜)
定休日:不定休

※金額はすべて消費税込みです。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

おまけ: ベタですが、濃いめのコーヒーを家で入れるときのコツを聞いてみました。
「当たり前ですが、まずは深煎りのいい豆を買うことですね。そして、ドリップする際、豆はいつもの2倍の豆の量を使って見てください。豆はたくさんだと苦くなってしまうと思われがちですが、実は逆で、濃ければ濃いほど甘みが出てくるんです。あとは、70℃ぐらいの低めのお湯で、できるだけゆっくり落としてみてください」

書いた人:松永大地

路地奥のカフェで  超コダワリのコーヒーに出会う 「HiFi Cafe」【京都】

1981年、静岡県生まれ。大学から京都に住み、早17年。出版社、大学勤務を経てフリー。唐揚げとミルクが好物です。お酒は極めて弱く、チューハイ2杯が限界ですが、酒場とアテは好き。

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