エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

独流ゆで卵はエコのたまもの!?

みなさんは、ゆで卵ってどう作ってますか?

お鍋に卵がかぶるくらいの水をはって、沸騰してから5〜7分くらいでしょうか?

「はいそれ、エコじゃないからダメ〜!」

……って、うちのドイツ人の夫なら言うかも。

というわけで、今日はドイツ人の「エコ意識」について書いてみたいと思います。申し遅れました、私、メシ通レポーターの溝口シュテルツ真帆といいます。2年ほど前にドイツ人と結婚し、以降ミュンヘンで暮らしています。

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

30歳を優に超えてのはじめての外国暮らし、外国人夫との結婚生活。それはもう、いろいろあります。かつて食の雑誌を長く編集していたこともあり、人一倍食い意地のはっている私は、とくに食べ物に関する場面でかなりつらい思いをしています。

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

勢いあまって『ドイツ夫は牛丼屋の夢を見る』という本も書いたので、そのあたりの苦労はぜひこちらをお買い上げいただけるとうれしいです!

さて、冒頭のゆで卵問題は、こちらの本のなかにも書いたエピソード。私が彼の前ではじめてゆで卵を作ったとき、

ちょ、ちょっとなにその作り方! ああっ、水もガスも使いすぎ! エコじゃない!


って、叱られたんです。「えっ、なにを言ってるの?」ってもう、ポカ〜ン、ですよね。

夫の作り方はこれ。

卵の殻に専用ツールで穴を開け、1cmほどの深さの水に入れて火にかけふたをして、沸騰したら2、3分

水はごく少量なので、ゆで卵というより蒸し卵。火にかける時間も短いので、仕上がりはもちろんかなりの半熟(ドイツ人全般が柔らかめのゆで卵を好む傾向にあるようです)。

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

夫好みのゆるゆるのゆで卵を食べるためには、エッグスタンドとスプーンが必須。ドイツに来てはじめてエッグスタンドの存在意義がわかりましたよ……! ナイフを使って殻の上部を上手に切り取るのも熟練の技(?)が必要です。

環境に配慮して水やガスを大切に使ったり、節電を心がけたりするのはとてもよいこと。でも、「ゆで卵くらい私の好きなように作らせてよ!」と言いたくなる。いまでも互いに我流を通している、どうしても相いれないケンカの火種なんです。

とまあ、そんな風に「エコ意識高い系」である夫。それは彼特有のものではなく、やはりドイツ社会全体に漂う雰囲気、そして母からの教えによって身に染みついたもののようです。そう、義母とのエコなバトルもありましたよ……。

“シュパーザム”な夫&義母に衝撃

結婚前、はじめて義母の家にお邪魔したクリスマス。天井まであるツリーや可愛い小物で飾られた室内はまさにヨーロッパ。思わず感嘆の声が漏れます。

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

キッチンで忙しく立ち働く彼女を手伝いたくて食器洗いをはじめた私。すると、その手元を後ろから覗き込んだ彼女がぽそっと口にしたひと言は、

Es ist nicht sparsam


sparsam(シュパーザム)。そのときはまだドイツ語がわからなかったのですが、「ん? なんかネガティブっぽいことを言われたぞ」と後で調べてみれば、「倹約的な、つつましい、節約する」といった意味のドイツ語。つまり彼女が言ったのは「それはシュパーザムじゃない」。私が水を使い過ぎているというお小言だったのです。

洗浄機に入れたくない食器類を手洗いすることはあっても、流水で洗剤分を落とすのは水の無駄遣い。おけなどに張った水にさっと通せばそれでOKだというのです。もちろんちょっとぬるっとしていてもおかまいなしの様子。

この“雑”な食器洗いの方法に関してはイギリスやオーストラリアなどほかの国でも同様だと聞いたことがありますが、この「シュパーザム」という言葉が、ドイツらしいなあ、と思うのです。

もちろん、水資源の豊かな日本と比べて、ドイツでの水道代はやや割高。これでもけっこう気を使っているつもりなのですが、それでも夫や義母にとっては「じゃぶじゃぶ水を使う嫁」なんでしょう。(その後、私のシャワーの浴び方についてもチクチク言っていたとずいぶん後になって夫から聞かされました……)

合理的という名の「ケチ」

あるときドイツ歴の長い日本人女性と話をしていて、彼女の言葉にはっとさせられたことがあります。

「ドイツ人は、合理的なんじゃなくて、ケチなの」

なるほど! と膝を打つ思い。

「エコ」なんて言っちゃう夫ですが、たぶん根底にあるこの「シュパーザム」、要は「ケチ」。「環境に配慮しようよ! それに、節約にもなるしね(←こっちが本音)」といったところなのでしょう。義母と夫のエコ、もとい「シュパーザム」なエピソードはまだまだあります。

ドイツの暖房設備はえてして優秀ですが、そのポテンシャルが発揮されているとは言い難く、義母宅では「5」まである目盛りが真冬でも「2」か「3」くらい。

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

「ちょっと寒いんだけど……」なんて言うと、「あらそう?」と分厚い毛布をドサッと手渡してくれます。いや、その前にその目盛りを……。

義家族のなかでは私は「いつも凍えているマホ」。「今日は寒くない? 大丈夫?」と優しく心配してくれますが、いや、その前にその目盛りを……。

ごちそうなのに夫婦ゲンカ。その訳は……

つい最近も、こんなことがありました。

家での料理担当は私。でも、どうしてもマンネリは避けられないし、買い物に行くのが面倒なときもある。そんなときに、友人が気に入って利用しているというレシピ&食材宅配サービスを紹介してくれました(食材や調味料、その献立のレシピを添えたお料理セット。なにを作ろうか? と悩むこともなく、材料もまとめてそろうので便利)。

自分では決して思いつかないおしゃれなレシピに、普段使わないようなスパイスやハーブ。使い切れる便利な量。もちろんやや割高ではありますが、私にとってはそれを補ってあまりあるサービスでした。

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

どうでしょうこれ? なかなか美味しそうだと思いませんか?

じゃがいもはオーブンでホイル焼きにしてじゃがバタ風に。パウチになっている市販品のザワークラウトに、みじん切りにしたりんごやにんじんなどの野菜を加えるというのも私にとってはなるほどなアイディアでした。

しかし、これが久々に険悪なケンカを引き起こしました。

夫「こんなにゴミが出るなんてエコじゃない」

私「いやいや、保冷材や段ボールは引き取って再利用するって書いてあるよ」

夫「このレシピなら本にも載ってるし」

私「でも、買い物するのも大変なんだよ」

次第に語気が荒くなる私たち。

夫「スーパーで揃えれば半額以下じゃん!」

私「買ってるのも作ってるのも私だ!」

夫「でも、このソーセージとザワークラウトなんて、普通すぎじゃない?」

私「私には普通じゃないの! 文句を言うなら食うんじゃなーい!!」

覚えたてのドイツ語を使ってさらに言い募ります。

私「あなたのは『シュパーザム』じゃなくて、『ガイツィヒ』だ!」

「シュパーザム」がどちらかというとポジティブな響きなのに対して、「geizig(ガイツィヒ)」はその逆。日本語で言うなら、「シュパーザム」=つつましい、「ガイツィヒ」=しみったれ、といったところでしょうか。しまいにいつものケンカの結末と同じく、むっつりと黙り込む私たち。こうなると、ドイツの効率的な働き方も、ムーディーな間接照明も、DIYも「てゆうかケチだからでしょ?」と言いたくなってくる。

そういえば夫が手をかけて育てているベランダ菜園も、使えるハーブ類ばかり……。

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

合理的でエコ、もとい「シュパーザム」で「ガイツィヒ」な国での闘いはまだまだ続きそうです……。

※溝口シュテルツ真帆さんには以前にこんな記事も作成していただきました。ドイツで恋しくなった日本の味に、現地の食材でトライ! ぜひぜひ読んでみてくださいね。(メシ通編集部)

書いた人:溝口シュテルツ真帆

エコか? ケチか? ドイツ人夫と日本人妻の、たぎる「ゆで卵バトル」

1982年、石川県生まれの編集者。(株)講談社にて楽しく週刊誌→グルメ誌編集者をしていたはずなのに、なんのご縁か2014年、ドイツに嫁ぐことに(自分でもびっくり!)。現在はフリーランスとしてドイツのあれこれなどを研究、発信中。

ウェブサイト:南ドイツの旅と暮らし / am Wochenende

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