【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

高円寺に「場所代として1,000円払えば、酒・食べ物の持ち込みは自由。時間制限無しで居放題」そんな、とんでもない居酒屋さんがあるといいます。自他ともに認める酒場フェチの筆者は「こいつは、なかなかのディープスポット情報だぞ!」と、狂喜乱舞。

さっそく好奇心で高鳴る胸を抑えながら中央線に飛び乗り、高円寺に向かいました。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

噂のそのお店「ふるさと」は、JR高円寺駅の南口を出て徒歩3分ほどの場所にありました。好立地にもかかわらず、まったく賑わってる気配がなかったのは、周囲が閑静な住宅街だからという理由だけではないでしょう。このレトロな佇まい、正直なところ営業しているのかどうかすらわからない!

その店がまえから、ただただ「ただものじゃない感」が伝わってきました。

しかし、ここで入ってみなければ、このお店のことは何もわからない! 意を決してお店の扉を開いたところ……。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

く、暗っ!

なんと、扉は開いていたのに中には誰もいません!

というか、ここ本当に営業してるの!? ってレベルです。電気はついておらず、こうこうと着いた灯りの下は……ぶ、仏壇!? 目を凝らしてよーく見ると大きな冷蔵庫にこんな張り紙が。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

……なるほど。こういうシステムですか。しかし、このインターフォンを何度呼び出しても応答がありません。

コール音のみが響く暗闇のなか、「これ……マジで営業してないんじゃ……」と疑念を抱いた筆者は、お店を後にすることにしました。

しかし……。帰る前にせめて、とお店の周辺だけでも撮影しておこうと建物の裏にまわると、「ふるさと」とは違うもう一つの看板に出会ったのです。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

へ?「スナック萩」??

なんと「ふるさと」の真裏に、こんなお店が。人がいる気配がしたので恐る恐るドアを開けると、店内ではご年配のご婦人がひとり、テレビを見ながらのんびりと食事をされていました。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

実はこの「スナック萩」は、「ふるさと」のもう一つの顔らしいのです。

すでに開店している店内で、悠々と夕飯を食しているこの方こそが「ふるさと」の女将さんだということ。この二つのお店は中でつながっていて、「場所代1,000円で、酒・食べ物の持ち込みは自由。時間制限無しで居放題!」はこちらの「スナック萩」でも有効らしいです。ちなみにカラオケも歌い放題だそう。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

「ふるさと」の謎めいた店内とは打って変わり、古き良き昔ながらの飲み屋さんといった雰囲気。ちなみに、看板ではスナックと書いてありますが、近日中に「カラオケ萩」に変更予定だとか。8名ほど座れるカウンターの他に、ゆったりとしたソファー席もあり居心地はかなりいいです。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

せっかくなので女将さんに突撃インタビュー開始! なぜ、こんな変わった形態のお店を作ったのでしょうか? てゆうか、このお店いつからあるのよ!? 私のぶしつけな質問に、女将さんは笑いながら答えてくれました。

女将:「ふるさと」が出来て、もう50年になるねぇ。もともとは普通の焼き鳥屋さんだったはずなんだけど、いつの間にかこんなお店になっちゃった。

なんと、半世紀前から存在していたという「ふるさと」。その知られざる歴史を、女将さんがとうとうと語ってくれました。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

若い時から料理をすることが大好きだった女将さん。いくつかのお店で修行を積んだあと、某大手企業の食堂で働き始めたそうです。しかし、自分のお店を持つことを諦められず、約50年前にこの「ふるさと」をオープンしました。


女将:毎日、食堂の仕事が終わったら、会社近くで不動産の営業やってた旦那さんに車で迎えに来てもらって、大急ぎで家に戻るの。そこから開店準備をして、朝まで営業。それで翌日もふつうに仕事に行って、夕方からまたお店。そんな生活を定年まで続けたわよ。

正直、常人ではありえないほどハードなスケジュール! しかし、自分の作った料理を、美味しい美味しいとみんなが平らげてくれることがうれしくて仕方なかったといいます。もっといっぱい食べて欲しい……その一心で女将さん、なんと「酒代以外は無料」というとんでもないシステムで料理を提供し始めたのです! 学生や劇団員ばかりだったお店の周辺で「ふるさと」は大評判になり、高円寺きっての人気店になったそうです。

ちなみに「スナック萩」は、「ふるさと」の人気にあおりを受けて閉店してしまったお店を買い取って始めたのだとか。居酒屋さんとスナックで連日大繁盛だったお店を、今のようなシステムにしたのはちょうど10年ほど前だったといいます。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

女将:やっぱりねぇ、旦那さんが亡くなっちゃって、ちょっとガクンときちゃったのよね。あれだけ大好きだった料理もなかなか出来なくなっちゃって。本当は今でも、昔みたいにお客さんに料理を振る舞いたいんだけどね。

体力と気力の衰えを感じた女将さんは、「ふるさと」で料理やお酒を提供するのを止めました。けれど、お店を畳むという選択肢はまったくなかったそうです。


女将:だって、賑やかな方がいいから。毎晩来てくれる長年の常連さんもいるし、こうやって貴女みたいにフラっと来てくれる人もいるし。もちろん、昔みたいにいろんな料理を出せればそれが一番だけど、もう年齢的に難しくて……。せめて寄っていってくれるだけでもって気持ちで、お代は場所代として1,000円にしてるの。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

その後も、女将さんの話(10年ほど前にプロカメラマンに弟子入りしていた、ソシアルダンスから日舞まで踊れる等)を聞いていると、もうひとり店員らしい女性が現れました。その女性は、女将さんの娘さん。お店は最近、ほとんど彼女が切り盛りしているそうです。ちなみに「ふるさと」のインターフォンは彼女の居住地である二階につながっていて、本来ならそのタイミングでお店に降りてくるらしい……(この日は外出していたそう)。


「ふるさと」も一応は営業をしていますが、少し前から足腰が弱ってしまった女将さんの寝食の場になったため、基本的にお客さんは「カラオケ萩」の方へ誘導しているそうです。そうか、だから仏壇があったのか……。ただ、どうしても「ふるさと」の方で飲みたいという方には、事情を説明したうえで開放するとのこと。

女将:あの独特な空間が好きっていう、物好きな方も意外と多いんですよ(笑)。本当に、何も出せないのが申し訳ないし、私の居住空間だからちょっと恥ずかしいけど、みんなで楽しく使ってくれるならうれしいわ。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

最後に、50年以上の歴史を持つこのお店が今でも続いている秘訣を聞いてみました。

女将:料理が好きで好きで仕方なかったから、どんなに忙しくて大変でもやってこれたの。今はもうできなくなってしまったけど、それでもお店を開けていれば誰かが何かしらの形で立ち寄ってくれる。だから、まだまだこれからも、この場所でお客さんとふれあい続けていきたいと思うのよ。続いてる秘訣って言うなら、そういう気持ちかしらねぇ。

女将さんの言葉を思い返しながら、筆者はちょっと涙ぐみ……カラオケで山口百恵の名曲を歌わせてもらいました。どんなに変わったシステムであろうと、ディープスポットと言われようと、「ふるさと」は今も高円寺の街に存在しているのです。

「私を待ってる人がいる」

この店は、女将さんのそんな思いひとつで続いているかもしれません。

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

どれだけ持ち込みをしても、どれだけの時間居たとしても、お代は1,000円ぽっきり。逆に、持ち込みをしなかった場合は、瓶ビールとカワキモノ込みで1,500円とのこと。最新の機材を搭載したカラオケも歌い放題なので、二次会で訪問すると非常にお得なのではないでしょうか。

みなさんもぜひ、この不思議で楽しい空間をご堪能ください。

お店情報

ふるさと(カラオケ萩)

住所:東京都杉並区高円寺南4-42-10
電話:非公開
営業時間:不定
定休日:なし

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

書いた人:もちづき千代子

【人情酒場】1,000円でダラダラし放題の居酒屋さんで、ママさんの話を聞いてたらホロリと泣けた【高円寺】

人生が常に大殺界な人妻ライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像技術者・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を始める。人生のテーマは「酒と涙と男と女」。

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