家宝として代々伝わる大切な刀はやたらと使うものではない。ここぞという事態になってようやく抜くことから、「伝家の宝刀」には切り札や奥の手の意味がある。国会や地方議会の伝家の宝刀といえば、このところよく耳にする証人喚問や百条委員会だろう。強力な調査権限を盾に関係者を強制的に呼び出す。うそをつけば罰することで真実を語らせ、事の核心に迫る。東京都議会では豊洲市場問題を検証する百条委が開かれ、石原慎太郎元知事が出席した。喚問する都議とどんなつばぜり合いがあるかと期待された。残念ながら元知事は「記憶にない」を連発し、移転を巡る謎は解明されなかった。議会は論点を絞り込めず付け焼き刃の感があった。ともに豊洲を推してきた自民都議が「豊洲と決めたのは大英断だった」と元知事を称賛する場面に拍子抜けした人もいただろう。夏の都議選に向けたパフォーマンスと批判されても仕方ない。チェック機能を果たしてきたとは言い難い議会には後ろめたさもあるのか。大上段に構えた割に大した成果がなければ、百条委の神通力も傷付く。何より混乱の責任がどこにあるのか分からないままでは都民でなくてもいら立ちが募る。とはいえ、過去の責任を問うだけでは話は済まない。この先、食の安全を確保しつつ市場をどこに移転させればいいか。切れ味鋭い「伝家の宝刀」が欲しい。