執筆:井上 愛子(保健師、看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
家族や友人に歯ぎしりを指摘され、ショックを受けたことはありませんか?
 
寝ている間、自分では気がつかないうちにしてしまう歯ぎしりは、原因の多くがストレスと言われています。
 
放っておくと、さまざまな歯のトラブルにつながる歯ぎしり。
 
その詳しい原因と対処法を知りましょう。
 

◆そもそも歯ぎしりとは?
 
「歯ぎしり」と聞くと、寝ている間に歯が擦れ合い「ギリギリ」「キリキリ」といった音を立てている様子を思い浮かべます。
 
しかし、歯ぎしりは必ずしも音が出るわけではなく、歯をぐっとくいしばったり、噛みしめたりすることや、歯をカチカチ鳴らすことも意味します。
 
起きている時も、無意識に行っている場合があり、とくに何かに集中したり、強い力を出そうとする時、つい歯ぎしりをしている人は少なくありません。
 
ところで、人間の噛む力は、どれくらいの強さかご存知ですか?
 
性別や個人による差もありますが、なんと自分の体重と同等か、それよりも強い力があります。
 
つまり体重50㎏の女性でも、ぐっと噛みしめると、奥歯には50㎏かそれ以上の力がかかっているということです。
 
普段の食事では、噛む力を半分〜4分の1程度に調節していますが、寝ている間の力は意識してコントロールすることはできません。その結果、睡眠中の歯ぎしりは、身体中にさまざまな悪影響を及ぼしています。
 
 
◆歯ぎしりの悪影響
 
一晩に数分程度の歯ぎしりであれば問題ありませんが、強い圧力で何十分も歯をくいしばっている状態が続くと、歯がすり減ったり、噛み合わせが悪くなってしまうといった悪影響がでます。
 
また、朝起きたとき顎が疲れているように感じたり、食事をするときに口を開けにくいなどの症状がでることも少なくありません。
 
ひどい場合は、歯が欠けてしまったり、折れてしまったりすることもあります。
 
さらに、口を開いた時にあごが鳴ったり、痛みが出たりする顎関節症(がくかんせつしょう)や、歯ぎしりをすることで身体の筋肉も緊張状態が続き、肩こり・腰痛などが起こり、頭痛に至る場合もあります。
 
つまり、歯ぎしりは、歯がダメージを受けるだけでなく、全身に負担を与える可能性があるのです。
 
ではなぜ、人は歯ぎしりをしてしまうのでしょうか。
 
 
◆なぜ歯ぎしりをしてしまうの?
 
はじめにもお伝えしたように、歯ぎしりの大部分は、ストレスが関係していると考えられています。
 
たとえば「イライラすると貧乏ゆすりをしてしまう」というように、誰しも不安や葛藤などの気持ちを解消するためについ行ってしまう癖があります。
 
ストレス社会と言われる現代、仕事や人間関係、環境の変化などによる精神的・肉体的ストレスを抱えている人は多く、睡眠中の歯ぎしりはそのストレスを解消するための手立てになっていると言えるでしょう。
 
また、その他にも歯並びや噛みあわせが悪い場合、歯ぎしりが起こりやすくなりますが、歯ぎしりが噛みあわせをさらに悪化させている可能性もあり、その関係は表裏一体です。
 
そのほか、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎ、喫煙、一部の薬の服用などが関わっていることも指摘されています。
 
 
◆歯ぎしりを抑えるためには
 
このように悩みの種になりやすい歯ぎしり。
 
日常生活のストレスが減って、歯ぎしりをせず熟睡できるのが理想であることは、言うまでもありません。
 
しかし生きていく上で多少のストレスはつきものですし、睡眠中の歯ぎしりは、自分の意志でコントロールできないものです。そんな中でも、歯ぎしりによる影響を抑えるために使われるのは「マウスピース」です。
 
就寝中に歯に装着することで、根本的な歯ぎしりはなくならなくとも、歯のすり減りや、顎にかかる負担を軽減することができます。
 
実際に歯ぎしりをしている人がマウスピースをして眠ると、翌朝「普段より顎が疲れていなかった」「肩こりがましになった」という声も聞かれます。
 
マウスピースは薬局などで購入可能ですが、自分の歯にきちんと合ったものを使うことが重要なので、歯医者さんで相談する方が良いでしょう。実際に歯科を受診する場合は、基本的に保険適用となり、5000円程度の費用で自分に合ったマウスピースを作ってもらうことができます。
 
市販の場合でも歯科の場合でも、毎日の洗浄や定期的なメンテナンスは指示通り行うようにしましょう。
 
周りの人に歯ぎしりを指摘され悩んでいる人、口や顎周りの不調が気になる人は、歯ぎしり対策の検討をおすすめします。
 
 
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供し