映画関係者の間でかなり評判が高いとウワサの、小松菜奈&菅田将暉をW主演に迎えた青春ラブストーリー『溺れるナイフ』(11月5日公開)。マスコミ向けの試写会は連日満席状態だというが、一体、近年の恋愛映画とはどこが違うのだろうか?

物語は、人気モデルとして活躍する15歳の夏芽が、東京から田舎町に引っ越してくるところから始まる。退屈な毎日を過ごす夏芽は、その町を守る神主一族の跡取りで、強烈なオーラを放つ同級生のコウと出会い、惹かれ合って付き合うようになる。だが、ある事件をきっかに2人の関係は崩れ別れることに…。

と、ストーリーだけ見れば特筆すべき点はないかもしれないが、違いは演出面にある。メガホンをとったのは平成元年生まれの監督・山戸結希。『あの娘が海辺で踊っている』(12)、『5つ数えれば君の夢』(14)が、観客や名だたる評論家たちから高く評価され、“若き天才”として注目されている日本映画界の新鋭だ。

田舎に暮らす女子高生の初恋を描いた『おとぎ話みたい』(14)は、テアトル新宿のレイトショー観客動員記録を13年ぶりに更新。ロックバンド・おとぎ話とタッグを組んで製作されたこの作品は、“MOOSIC LAB 2013”でグランプリほか3冠を獲得するなど一部で熱狂的に支持された。

そんな山戸監督が初めてメジャー作品に挑んだのが今回の『溺れるナイフ』。印象的なのが、見る者の心に残る台詞まわしだ。学生時代に哲学研究者を目指していたという山戸監督の言語センスは過去作でも光っていたが、本作でもそんな台詞が数多く登場する。ジョージ朝倉は原作を「実写化させないようなマンガにしようと思って」描いたというが、山戸監督の脚本を読み、思わず舌を巻いたというほどだ。

そんな台詞とともに、恋愛の甘酸っぱさや胸キュン要素だけでなく、本作が主人公たちの痛々しさや醜さまで描いていることも、最近の恋愛映画とは異なるポイント。山戸監督のもと、小松と菅田が演じる夏芽とコウが、感情剥き出しでぶつかり合い、求め合い、傷つけ合うリアルな心理描写は、誰もが経験したことのある懐かしい青春時代を思い出させ、特別な映像体験であることを印象づける。なかでも、海での水中キスシーンは、胸が締めつけられるほど切なく、美しい。

山戸監督が10代の少年少女の心情に寄り添いながら描いた、新しいラブストーリー。最近の恋愛映画に物足りなさを感じている人にこそ、このかけがいのない10代の青春のひと時を味わってほしい。【トライワークス】