おかえりなさい、ジェイソン・ボーン!『ボーン』シリーズが9年ぶりに、マット・デイモンとポール・グリーングラス監督という最強タッグにより復活を果たした。その名も『ジェイソン・ボーン』(10月7日公開)として。来日したマットを直撃し、満を持して製作された続編の舞台裏についてインタビューした。

『ジェイソン・ボーン』で描かれるのは、マット・デイモンが最強の暗殺者、ジェイソン・ボーンを演じたシリーズ3作目『ボーン・アルティメイタム』(07)の数年後だ。すべての記憶を取り戻したはずのボーンが、自身の家族を巡る謎に迫っていく。ボーンを追い込む敵陣に名優トミー・リー・ジョーンズやヴァンサン・カッセルを、ヒロインに『リリーのすべて』(15)でアカデミー賞女優となったアリシア・ヴィキャンデルを迎え、気合十分の続編に仕上がった。

シリーズ1作目『ボーン・アイデンティティー』(02)は、リアリティを追求した新しいスパイ映画ということで、アクション映画の新機軸も打ち出して話題となった。「1作目を手掛けたダグ・リーマン監督が『ジェームズ・ボンドには共感できない。彼は女好きだし、殺しを軽く見ていて、のんきにマティーニを飲んでいる。それは60年代の感覚なんだ。僕はもっと人間として共感できるスパイ映画を作りたい』と言っていた。その思いを反映したのがジェイソン・ボーンで、当時そういうスパイはいなかった。ボーンは良識があり、1人の女性にずっと尽くそうとするし、自分のやったことに罪悪感もずっと感じている」。

『ボーン・アルティメイタム』から9年経ったいま、続編を作る意味については監督らと共にかなり試行錯誤をしたようだ。「続編をやるのは非常に難しい。ある程度は慣れ親しんだもの、期待されているものを提供しなければいけない反面、全く同じことをするわけにはいかない。そのバランスが非常に重要だったよ」。

9年間で時代が移り、ネット社会となったことが続編製作にはずみをつけた。「前作ではまだブッシュ大統領政権で、経済破綻もしていなかったし、ソーシャルメディアも今ほどはなかった。そこから世の中が非常に変わり、今日ではプライバシー対セキュリティという問題が浮上してきている。ここまでデジタルに頼る生活になったいまの世界でボーンが活躍することに僕たちはすごく興奮したし、新しいものができると思ったんだ」。

もちろん、前作よりもスケールアップした作品にするという思いは強かった。「ロケ地にも相当こだわった。ラスベガスの大通りで撮影したいと希望したら本当に許可が下りたので、徹底的にやろうという話になった」。

なかでもド派手なカーチェイスの後、車がカジノに衝突するシーンには度肝を抜かれる。「あれは、運も味方をしてくれたシーンだ。ちょうどリヴィエラホテルというカジノが取り壊される予定になっていたので、壊す前にロケで使わせてほしいと申し出たんだ。全部内装もきれいにして、そこで撮影できたから良かったよ」。

アリシア・ヴィキャンデルが、ボーンと駆け引きをしていくCIAのエージェント、ヘザー・リー役を演じた。マットは2人の関係性がとても面白いと言う。「彼女は謎めいた人で、観客も彼女を信頼していいのかどうかわからない。もちろんボーンは誰も信用しないけど、彼女は新しい若い世代なので『自分を信用してほしい』とアピールしてくるけど、さてどうなるかな。また続編があれば2人の関係をどんどん追求できると思う」。

ボーン役についてマットは「初めて演じた時から、ボーンのキャラクターにつながりを感じていた」と述懐。「年と共に肉体的な苦労は感じるが、演技という面からいくと楽になっていったよ。やはり人生経験が多くなればなるほど、いろんな意味でメンタルな演技に反映することができるようになるから。人生においては後悔や失敗と共に喜びもあるけど、僕はそれらすべてが演技に活かせると思っている」。

孤高のスパイ、ジェイソン・ボーンは、常に孤独と背中合わせで生きている。マットに「ボーンはいつか幸せになれるのでしょうか?」と尋ねると「幸せになったらそこで終わっちゃうからね」と穏やかな笑みで返してくれた。

ジャパンプレミアでは、共に来日した妻ルシアナ・ボザン・バロッソを優しくエスコートしていたマット。円熟味が加わり、人間としてもさらに深みが出てきたマットが演じるいまのジェイソン・ボーンも、これまた魅力的である。【取材・文/山崎伸子】