ベストセラーとはいえ、自分に役立つとは限らない。それでも、誰の心にも刺さる本というのは存在する。現代人が考えるべきテーマから、おすすめの3冊を紹介します。

ロシアに詳しい作家が本音で語る「資本論」の本質

格差社会と言われる昨今、カール・マルクスの『資本論』や小林多喜二の『蟹工船』などが読まれる傾向がある。
『いま生きる「資本論」』は元外務省主任分析官で作家の佐藤優がおこなった講座の内容を収録したもので、『資本論』の本当の意味を解説してくれる。
佐藤は同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省に入省。ロシアのエキスパートとして活躍するが、鈴木宗男事件に連座する形で有罪判決を受けて失職。その後、作家や評論家として活躍している。
これまで『資本論』の解説は一般的に経済学者や社会学者らがおこなってきた。しかし、本書は特殊なバックグラウンドを持つ佐藤の斬新かつユニークな視点で書かれており、革命の書のように言われてきた『資本論』の見方を真っ向から否定し、社会のからくりをわかりやすく解説する。講演の興奮がそのまま伝わってくる本書は、キレ味の良い語り口とわかりやすいたとえが、なんとも言えない切り口の良さを醸し出している。

ピケティ経済学をピケティ自身が解説

いま世界中が注目している経済学者といえばフランス人のトマ・ピケティだろう。彼の『21世紀の資本』は700ページ超え、5,000円を超える経済専門書にも関わらず全世界での発行部数は160万部(2015年1月)を超えている。
今回、紹介する『トマ・ピケティの新・資本論』は、トマ・ピケティの経済学を彼自身がよりわかりやすくまとめた本だ。カール・マルクスの『資本論』を強く意識したタイトルだが、内容はヨーロッパ経済の今後を予測したものとなっており、膨大な資料や統計から格差が社会の活力を失うことを経済学的に証明している。
また、本書でのピケティはフランスやEU首脳の経済政策に対しても辛口の批判をおこなっており、政治学者・歴史学者としての一面が垣間見える。複雑な数式や理論がわからなくても読める、ピケティ入門書として最適な一冊。

生物学者である福岡伸一氏の講演会を書籍化

分子生物学を専門とし、フェルメールの研究者としてもよく知られる福岡伸一はいま最も注目されている生物学者の1人だ。
彼は『生物と無生物のあいだ』『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』など数々のベストセラーを出版し、サイエンス物では珍しいほど売り上げを伸ばしている。
今回、紹介する『あなたはご本人様でいらっしゃいますか〜動的平衡の中で考える 未来授業〜明日の日本人たちへ〜』は、2012年に母校である京都大学での特別講演を書籍化したもので『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』の解説本と言ってもよいかもしれない。彼の作品は、高校生の読書感想文の指定図書にも選ばれるほど、読みやすくわかりやすい。講演の収録本ということで理解しやすく、馴染みやすい語り口はまるで目の前で話してくれているような気になる。
本書の他、阿川佐和子との対談『センス・オブ・ワンダーを探して 〜生命のささやきに耳を澄ます〜』も『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』の解説本としてはオススメだ。

注目3人の学術的な専門書からはわかりづらい本質の部分だけを、やさしく解説する本を選んでみた。特に佐藤と福岡の本は講演会の内容の書籍化なのですんなり頭に入り、肩の力を抜いて読むことができる。