映像化は不可能だと言われ続けてきた、累計240万部突破の逢坂剛の警察小説「百舌シリーズ」が常識を打ち破り、TBSとWOWOWの共同制作でSeason1・2、そしてその完結編として「劇場版 MOZU」は公開された。もちろん映像化された本シリーズも素晴らしいのだが、原作を手に取って逢坂剛の映像化できない細かい描写を感じてほしい。

作品と出演者の演技による強烈なマッチがたまらない

Season1・2、劇場版を観て作品のファンになった方も多いと思います。作品の内容の素晴らしさもさることながら、その中で役を演じる西島秀俊さん、香川照之さん、真木よう子さんなどのキャスト全員の存在が私たちを「MOZU」の世界に引き込んでくれます。
Season1は「百舌の叫ぶ夜」、Season2は「幻の翼」が原作です。映像化は不可能とまで言われていたこの作品を実現させたテレビマン・映画人たちの情熱が感じられる作品になっています。しかし、そこには30年近く映像化されなかった多くの要因が原作に隠されているのです。

「MOZU」という殺し屋

いろいろな角度から今まで刑事物の中で殺し屋という存在が描かれていました。しかしそれはあまりにも残酷になってしまうと女性や子供たちには敬遠されてしまいますし、あまりにも単純な殺し合いになってしまうと面白みがなくなってしまいます。そういう意味では殺し屋という名前でギリギリの恐怖感、ギリギリのリアル感で観客を惹きつける魅力が逢坂剛の作品には溢れているのです。殺し屋の枠を超えた殺し屋の魅力が存分に詰まった作品がこのMOZU。スリル満点でもあり半端では無いハラハラドキドキ感がちょっとした快感になってくる、そういうタッチがこの作品なのです。

登場人物から垣間見る素顔がたまらない

ひとりの人間やコンビになったパートナーがお互いを支えあって助け合うといった刑事ものはこれまでにも数多くありました。それはあくまで正義でありヒーローであったわけです。事件を解決し、犯人を成敗する。それが刑事物語の一連の流れだったんです。しかし、この作品では、ある登場人物のそれぞれの仕事とは違う時折垣間見せるその素顔に、とりこにさせられてしまった観客の方や読者の方も多かったのではないでしょうか。人が持つ哀れみや悲しみを表に出さないものの、それを不器用に持ち合わせて生きていく姿がこの作品をよりいっそう深みのある物に仕上げているのではないでしょうか。

1986年発行から30年近く映像化されなかった百舌シリーズです。映像化に際し、主演の西島秀俊はなぜこんなおもしろい本が今まで映像化されなかったのかと不思議に思うと同時に、よくぞ映像化されないでいてくれたと思ったそうです。逢坂自信が、原作では倉木(主人公)の心理描写は一切していない。彼が何を考えているかは、彼のしぐさや表情、あるいは周囲の人々から感じられるように書いたと言っています。倉木の心理をあなたの想像力で感じてください。