ファッションモデルで女優の森川葵が昨年主演したドラマ「テディ・ゴー!」は、不思議な雰囲気のコメディドラマです。くまの編みぐるみに強面のおっさん刑事の魂が宿っていたという設定からも、何が起こるか解析不能な感じが漂う作品でした。実はこの原作は加藤実秋の推理小説シリース「テディシリーズ」の第2作なのです。

第1弾 「アー・ユー・テディ?」

2003年に「インディゴの夜」で創元推理短編賞を受賞してデビューした加藤実秋が描く不思議なエンタテイメントシリーズの記念すべき第一弾です。
ほっこりとしたものに包まれて生きたいと願っている主人公の和子は23歳のフリーター。将来はカフェを開くのが夢というよくいる女の子。自分の店に並べる雑貨集めに余念がありません。そんなときフリマで出会ったのがくまの編みぐるみでした。ただし、それには事件の捜査中に事故で殉職した刑事の魂が入っていたのです。和子は刑事の魂が何とかくまの編みぐるみから出て行って欲しいと捜査に協力することになりました。中年おっさんの刑事とどこにでもいるフツーの女の子という凸凹コンビによって織り成すエピソードの一つ一つが愛らしいものに仕上がっています。

第2弾 「テディ・ゴー!」

天国に逝ったはずの刑事の魂が再び戻ってきて、和子はまたまた捜査を手伝うはめになります。バイト先の輸入雑貨店から連れて帰ったぬいぐるみのカエルにおっさん刑事が宿っていたのです。そんなある日、和子はあらぬ疑いを掛けられて盗作事件に巻き込まれてしまいます。無実を証明するためにまた二人が協力することになりました。単なる探偵ストーリーだけでなく登場人物それぞれの家族に対する思いも丁寧に描かれていて、切ないシーンも含まれているのはさすがです。

細部に対する愛ある描き方が魅力

その後、テディシリーズは第3弾「マイ・フェア・テディ」、第4弾「クマ刑事」までがオリジナルで文庫出版されています。全体的にファンタジーの雰囲気はシリーズを通して一貫しています。けれど、細部に対する作者のこだわりが作品を見事にリアルな小説へと昇華されていて毎回見事に事件解決へと向かいます。家族への思いが交錯したり、ずっと好きだった雑貨への思いが薄れていく自分にとまどう和子の心、相変わらずゲスなところは変わらないクマのおっさん刑事なども愛おしさは変わらずです。

ドラマ化をきっかけにテディシリーズを知った人ならぜひ作家の見事な手さばきが光る原作シリーズを手にとってみてはいかがでしょうか。原作ファンが口にする、リアルな描写や家族への思いの大切さ。そんなポイントが小説ならではの味わいで胸に迫ってくることでしょう。