テレビ朝日で9月17日(土)夜9時から放送されたスペシャルドラマ「瀬戸内少年野球団」は、阿久悠の自伝的小説が原作。映画では夏目雅子×渡辺謙が演じた役を、今作では武井咲×三浦貴大が熱演した。直木賞候補となった原作に忠実に、終戦後の淡路島で、野球を通して生きる力を取り戻していく人々の姿を生き生きと描いたドラマである。

結婚、そして駒子をおいて旅立つ正夫

昭和19年、春。小学校の教諭である中井駒子(武井咲)は、網元の息子・中井正夫(三浦貴大)と結婚式を挙げた。まもなく出征する正夫の無事の帰還を願う駒子は、一緒にキャッチボールをしたボールをお守りとして正夫に渡す。数日後、正夫は戦地へ。日本国民の兵士として立派に旅立つ正夫の背中を見送りながら「ばんざい! ばんざい!」と叫ぶ駒子だったが、顔には大粒の涙が流れるのだった。
翌年の昭和20年8月15日、終戦。
淡路島にある江坂国民学校で、駒子が担当する初等科5年のクラスにいる足柄竜太(坂田湧唯)の元に、父の戦死の知らせが届く。遺骨と思ってあけた箱には父が使っていたという歯ブラシが入っていた。「お父ちゃんが、歯ブラシになってしもうた…」子供らしい発言をする竜太が無性に切ない。そして、駒子の元には、紙切れ一枚が。正夫が戦死したという知らせだった。

終戦後、アメリカナイズされていく日本

日本が戦争に負けたことで、一変。
進駐軍が上陸し、島はたちまちアメリカ文化に感化。横文字の看板が普及し始める。子供たちにはチョコレートや飴玉が配られ、床屋を営んでいた穴吹トメ(友近)は、即座にキャバレーへと商売替え。駒子の学校にも、男女平等の政策としてクラスに女子がやってきた。そこには海軍提督の父を持つ波多野武女(むめ・本田望結)の姿も。セーラー服に三つ編み、凛としたら可愛らしさを持つ武女に竜太はひとめぼれする。
一方、正夫の死の知らせを受け、中井家に嫁いだ駒子は肩身の狭い思いをしていた。正夫の父・銀造(大杉連)と母・豊乃(高橋惠子)は、次男・鉄夫(栗山航)との再婚を提案するが、駒子の正夫への思いは揺るぎなかった。
竜太と同級生の三郎(山下真人)の兄・二郎(えなりかずき)は大阪で一発当てると島を出て行く。半ベソの三郎と一緒に二郎を見送る竜太。そんな二人の前に、謎の三本足の男が現れる。それは、戦地で片足を失い松葉杖をついた正夫だった!

再出発、野球を始める駒子たち

死んだと思われた正夫が帰ってきた。「日本もわしら夫婦も一から出直しや」
夫婦として再出発をする二人。
戦争が終わり、世の中が急変し子供たちが戸惑っていると話す駒子に正夫は、大人の都合に左右されない確かなルールのある野球を子供たちにやらせてはどうかと提案する。元甲子園球児の正夫に見守られながら、駒子は監督として教え子たちと少年野球団を結成する!

子供たちは、木の棒と正夫が使っていたボール、親に作ってもらったつぎはぎのグローブでなんとか練習に励む。駒子は野球チームを組んでいる隣町の学校にお願いして、試合をしてもらえるよう取り付ける。しかし、ちゃんとした野球をするためには、軟式のボールとまともなバット、グローブが必要だ。駒子は校長にかけあうも予算がなく断念。途方に暮れていると、そこに現れたのは三郎の兄・二郎。なんと大阪で成功した二郎は道具を一式、ユニフォームまで揃えて寄付してくれたのだ。子供たちの目が大いに輝くのだった。

そして、試合の日

試合当日、校庭には家族以外にも町中から応援に人が集まった。初めての試合に胸が高まるチームのみんなだったが、さすが相手チームは手強かった。初回からぶっ飛ばし、ホームランを打たれまくり、6回の裏ですでに0対25という結果。ピッチャーを努めていた武女はまめがつぶれて手から血が出始める。もうここまでか…。諦めようとした時、竜太が一喝する。
「俺がピッチャーをやる。まだやまだまだ!」試合はまだ終わっていない。気を取り直した駒子たちのチームは、ラスト一球、竜太がホームランを打ち、初めての一点を獲得。初めて入った一点球に皆は大喜び! その後、試合終了の笛がなったのも気付かず、竜太が入れたたった一点球に歓喜するのだった。

変わるもの、変わらないもの

この竜太は何を隠そう、阿久悠本人である。ラストにそれぞれが大人になったその後が語られる。弁護士になった者、実家の家業を継次いだ者、教員になった者、そして日本を代表する作詞家になった者…。皆、戦後の大変な時代を必死で生き抜いて大人になった。そして今、生きている。一人一人が画面に映され、語られるその姿に涙が止まらなかった。抑圧された時代を知っているからこそ、反骨精神が生まれ、ほんの一瞬の幸せに最高の笑顔が輝く。時代が変わっても、一生懸命頑張る人が見せる笑顔が美しいことは、変わらないのだ。あの時代を生きた人々の必死で美しい生き様を感じられるドラマだった。

スペシャルドラマ「瀬戸内少年野球団」公式サイト(http://www.tv-asahi.co.jp/setouchi/)