松下奈緒が主演を務めるドラマ特別企画「往復書簡〜十五年後の補習」が、9月30日(金)よる8時57分からTBS系にて放送されました。原作は湊かなえの「往復書簡」に所収の「十五年後の補習」。松下奈緒演じる岡野万里子が、失っていた事件の記憶を徐々に取り戻していく過程にゾクゾクし、果たしてそれは万里子にとって幸せなのか不幸なのか、と胸が押し潰される思いの2時間でした。

2つの放火事件

OLの万里子は、恋人・永田純一(市原隼人)が海外ボランティとして突然辺境の国へ旅立ってしまったことで、そんな大事なことを相談もなく決めてしまったのは、なぜなのか? という不安な思いを手紙に書くことにしました。翌日、材木倉庫で女性の焼死体が発見され、現場を訪れた刑事の亀山隆三(鹿賀丈史)は、15年前に同じ倉庫で起きた未解決の放火殺人事件を思い出します。

出火した材木倉庫の中に、当時中学生の万里子(西畑澪花)と、同級生の大島一樹(篠田諒)が閉じ込められ、万里子は駆けつけた純一(福山康平)に助け出されましたが、一樹は亡くなってしまいました。倉庫に外からかんぬきがかけられていたことから、放火殺人の線で捜査されることになり、その事件を担当したのが亀山でした。そして万里子たちの同級生である久保田康孝(今井悠貴)に疑いがかかりましたが、康孝は事件翌日に自殺し、さらに万里子が事件前後の記憶を失くしてしまったことから、真相が解明されないまま捜査は打ち切られていました。

今回同じ倉庫で発見された焼死体は康孝の母・久保田綾子(大沢逸美)で、殺害されたあげく放火されていました。その報道に驚く万里子のもとを、15年ぶりに亀山が訪ねて行くことに…。

万里子と純一の往復書簡

万里子は15年前の事件で友達2人が亡くなり、しかも自分が記憶を失くしたから事件解決に結びつかなかったことで、ずっと責任を感じていました。そんな万里子を近くで優しく支えていたのは、純一でした。離ればなれになってしまった純一と手紙を交わしていくことで、万里子は当時の記憶を断片的に取り戻していくのですが、記憶が戻ってくるのと同時に浮かび上がってきたのが、純一への疑惑です。

一樹が康孝をイジメるようになったのは、女手ひとつで子育てをしていた一樹の母・大島百合(多岐川裕美)と康孝の父・久保田進 (梨本謙次郎)が不倫関係になったことがきっかけでした。康孝は父を奪われた腹いせに一樹を罵り、言われた一樹は悔しさから康孝に暴力をふるっていたのです。純一は万里子への手紙の中で、当時純一の父・永田恵一(山崎銀之丞)も百合と付き合っていたことを明かします。純一も一樹を憎んでいた? 一樹を死に追いやり、そして康孝に自殺を仕向け、さらには万里子が記憶をいつ取り戻すかを見張るために、純一は万里子のそばにいたのでしょうか…!?

戻りつつある記憶に途方もない絶望を感じる万里子でしたが、万里子はさらに真実の記憶を取り戻すことになります。そして、驚愕の事実と直面することになるのです!

真実の記憶

15年前の記憶、それは…万里子と一樹が倉庫に閉じ込められた時、一樹が万里子に襲いかかり、万里子は一樹から逃れようと近くにあった木材で一樹を殴打したという記憶です。純一が倉庫に駆けつけた時には、一樹は頭から血を流して倒れていて、万里子はショックで気を失っていました。純一はその時に、好きだった万里子を一生守る覚悟で倉庫に火をつけ、放火を康孝の仕業にしようと決めたのです。

ドラマ化にあたって、加えられたストーリー

原作には出てこない、亀山の存在と2つ目の放火殺人事件。プナチナ色の白髪で登場した鹿賀丈史の存在感はインパクトありました! 心残りだった未解決事件の真相に近づいていく亀山の鋭い目線とやるせなさが、原作にはないアクセントを加えています。そして第2の放火殺人事件については「康孝が濡れ衣を着せられたまま自殺したのは、夫を寝取った百合のせい」だと思った綾子が百合を殺すつもりで倉庫に呼び出し、持ってきたナイフで揉み合っているうちに、謝って百合が綾子を刺してしまいました。恐ろしくなった百合は、綾子が持ってきた灯油を撒き倉庫に火をつけたという、やるせない事件でした。

正義について考えずにはいられない

万里子がイジメられている康孝を助けていたのは、正義感から。15年前の記憶を失った万里子に真実をつけずに支えていた純一も、また正義感からでした。15年ぶりに戻った記憶は、万里子にとって衝撃の事実でしたが、真相が明かされていく心理サスペンスを展開させながら、同時に純愛も描かれました。原作では、湊かなえ作品にたびたび出てくる《罪のない正義感》によって、歯車が大きく変わってしまうという嫌ミスならではの後味を残していますが、ドラマ版では万里子と純一にわずかな希望を持たせました。万里子と純一の背中を優しく見守りたい、そんな気持ちになるドラマでした。

湊かなえ×TBS ドラマ特別企画 「往復書簡〜十五年後の補習」公式サイト (http://www.tbs.co.jp/ofukushokan/)