このたび、ABC創立65周年記念スペシャルドラマに、直木賞作家 桜木紫乃書き下ろし作品「氷の轍」11月5日(土) 午後 9:00〜11:06の放送が決定し、撮影を終えた主演の柴咲コウ、沢村一樹、宮本信子ら出演者・スタッフからのコメントが届いた。

北海道に生まれ育ち、北海道を静謐に描く直木賞作家、桜木紫乃が書き下ろしたスペシャルドラマ「氷の轍」に登場する、北の大地で事件を追う主人公の刑事・大門真由を演じるのは柴咲コウだ。

20日間に渡る極寒の釧路ロケでは、マネージャーすらも同行せず、主人公さながらに自身の孤独を見つめ、ストイックな役作りに挑んだ柴咲。桜木が描いた「寒さ」「かなしみ」「あふれる情」をどう演じるのか、放送が待ち遠しい。

●主人公 大門真由とは?

屈託と孤独。柴咲コウが演じる物語の主人公、大門真由は若くしてこの両方をあわせ持つ新人刑事。真由にとっての屈託とは自分を産んだ母の顔も名前も知らないことであり、孤独とは唯一の肉親である父の命が間もなく尽きようとしていること。

抗うことのできない運命を前に真由は、心に重石を抱えたまま他者に理解を求めない生き方を選び、父と同じ刑事の道を歩んでいる。

熱くもなく冷たくもなく、ただまっすぐな視線。不用意に他者と交わらない無意識の距離感。そんな真由の気質を、柴咲は雪原に立つ一本の木のように凛とした姿で表現。華やかな衣装に身を包むでもなく、派手なアクションを繰り広げるでもなく、ただひたすらに役と深く向き合った女優、柴咲の魅力を、静かに堪能したい。

●実力派俳優達が北の大地に集結

物語の舞台は、すべてのものが凍りつく冬の北海道・釧路。

?? 殺人事件を扱う捜査一課の刑事としてまだ駆け出しの真由は、年老いた男性の遺体を二体、立て続けに目の前にする。一つは雪に埋もれた冷凍状態で、もう一つは凍てつく海で。一見、無関係に思えた二つの事件を結びつける接点を、真由は捜査を地道に積み重ねる中で発見。それが突破口となり、事件の原点は遠く1960年代の青森へと遡っていく。??

真由の刑事としての成長を縦軸に、時間と空間を超え誰一人望まなかった結末を釧路で迎える事件の謎解きを横軸に、じっくり描く今回の物語には、本格的な作品にふさわしく、ドラマ好きを唸らせる実力派俳優陣が顔を揃える。

半人前の真由を導く頼れる先輩刑事には沢村一樹が、事件の舞台となる釧路で有名な水産加工会社を経営する女社長には余 貴美子が、真由と冬のスケートリンクで顔を合わせる独り身の女性には宮本信子がそれぞれ扮し、ドラマの屋台骨を築く。また、余命宣告を受けた身で刑事としての魂を娘に託そうとする真由の父には塩見三省、さらには嶋田久作、品川徹、岸部一徳、といった演技派が脇を固め、密度の濃いドラマ世界に仕上がった。

撮影は冬の釧路で敢行。およそ20日間、キャストとスタッフが文字通り寒さに閉ざされた釧路に缶詰めとなり撮影を行った。
柴咲自身も、演じる大門真由と向き合ううちに「自分も孤独でなければならい」と感じ、「自分をがんじがらめにさせようとした」と語るほど、ひたすらに自分を役へと追い込んだという。

そんな、キャスト、スタッフ共に心血を注いで作ったドラマに期待が膨らむ。

●ドラマと書籍が連動

直木賞作家の桜木紫乃がこのドラマのために原作を書き下ろした書籍が、ひと足早く小学館より発売されている。
桜木の筆によって、自身の出身地でもある釧路に産み落とされた大門真由という刑事が、「屈託」と「孤独」に苛まれた人たちにより、図らずも引き起こされた事件と出会い、同じ痛みを抱えた人間だからこそたどり着ける真実。注目の女流作家の最新作をドラマと書籍が連動したメディアミックス展開で楽しむことができる。

ABC創立65周年記念スペシャルドラマ「氷の轍」は、11月5日(土) 午後 9:00 〜 午後 11:06、ABC・テレビ朝日系で放送される。

●柴咲コウ コメント

?? 撮影を終えて

柴咲 今まであまり一カ所に滞在してロケを行った経験がないのですが、20日間近く釧路で撮影ができたことは、真由の思いと対峙する上ですごく良かったです。私、合宿形式が好きみたいです。撮影をしてご飯を食べて、寝て起きて、ストレッチをして、撮影をして…という毎日毎日その繰り返し。ルーティンとはこういうことなのだと思いました。私が普段の生活でルーティンが中々作れない人間なのですごく心地よかったです。

?? 長い期間一カ所に滞在して撮影するということが今までにあまりなかったということですが、約20日間「大門真由」と向き合い続けることで、いつもと違う発見や、新たに女優として感じることはありましたか?

柴咲 少し『孤独でなければならない』という感情はあったかもしれません。自分を(大門真由という役で)がんじがらめにさせようとしているような…。現場にも、マネージャーさんに来てもらうことなく、マネージャーさんもいない状況でなるべく一人の時間を作るようにしていました。

?? 台本を読んだときの印象は?

柴咲 「人間ドラマだ!」というのが第一印象。「屈託」というキーワードが出てきますが、私は自分自身や自分の周りにおいても、他の人には分かり得ない思いや悩みを抱えているのが人間社会だと思っています。このドラマでは、そこが濃く描かれていると感じました。小説などのフィクションでは、つい優劣とか善悪をつけたくなりますが、今回の登場人物はそれぞれに事情があって、「屈託」を抱えたくて抱えているわけではない。そんなことを、脚本を読んでいた時よりもさらに切なく感じながら演じました。

?? 大門真由の屈託とは?

柴咲 家庭環境で屈託を抱えざるを得ない人と、内向的な性格でいろんなものを抱え込み自発的に屈託を抱える人とがいると思うんですけど、真由の場合は前者。私は作詩をするんですが、孤独はテーマの一つです。ネガティブなことではなく、生まれて死んでいくのは一人きりで行うということ。もちろん、誰かの影響とお陰で生命を得るんだけど、死んでいくときは一人だと。真由は、そういうことを小さいときから考えざるを得ない環境にあったんだと思いながら演じました。

?? 沢村一樹さんの印象は?

柴咲 二度目の共演ですが、以前と変わらず気さくで、いろんなおしゃべりをしながらリラックスさせてくださいました。真由は他人に対して自分の本心をさらけ出さない人物ですが、信頼できる先輩刑事を得られたのは沢村さんが演じてくださったお陰だと思います。

?? 宮本信子さんの印象は?

柴咲 初共演でしたが、いろんな作品で拝見しており、すばらしい俳優さんだと思っていましたので、共演が叶ってとてもうれしかったです。朗らかで、明解で、ハッキリしていて、またいい緊張感の中で撮影ができ、とても多くのこと学ばせてもらいました。

?? スケートの撮影は大変でしたか?

柴咲 小さいころに経験があって、まったく滑れないということではなかったので、なんとか切り抜けたかなという感じ(笑)。練習も楽しめましたし、リンクは屋内だったのであまり寒さを感じることもなく、港などでのシーンに比べれば撮影しやすかったです。

?? 父親役の塩見三省さんの印象は?

柴咲 今の塩見さんにしか出せない演技があったと思いますし、塩見さんに触発されて瞬発的に私から出てくるものもあったと思うので、とても感謝しています。真由の父親としての屈託と、塩見さんご自身の屈託とが相まって、個性的な役になっていて、娘として受ける影響は大きかったですね。親子の関係を表現するときに、どう会話をするかは大きなポイント。しっかり目を見て話すのか、それとも顔をほとんど見ないのかで関係性を表現できます。今回はあまり視線を絡めず、言葉の端々に出てくる思いを汲み取って返答するのがふさわしいのかなと思って演じました。

?? 瀧本監督の現場はいかがでしたか?

柴咲 人の心を動かす映像を撮ることを使命にされているんだと思いますが、それ以前に、監督ご自身が撮っているものに感動して涙しちゃってるんですよね。優しい人なんだな〜と思いました(笑)。そういう情に厚い人に指揮してもらえると人間ドラマって生きてくるので、本当にこの仕事を引き受けて良かったと思いました。一緒に仕事ができてうれしかったです。

?? 孤独と屈託というドラマのテーマを普段感じることは?

柴咲 北原白秋の詩(『二人デ居タレドマダ淋シ 一人ニナッタラナホ淋シ、シンジツ二人ハ遣瀬ナシ シンジツ一人ハ堪ヘガタシ』)は、共感するなという方が難しいくらいに的を射ている。たった4行で人生の厳しさ、はかなさ、ものがなしさ、人間関係の大変さ、家族で血がつながっていても難しいということを、まざまざと考えさせられる言葉です。あれ以上に、削ぎ落とした真実を突きつけられる詩はないと思います。真由に限らず、今作の登場人物全員に当てはまる言葉。私はまだ経験していないのですが、監督が「本当に結婚してもそうだからな」とおっしゃっていて(笑)、パートナーの有無に限らず、自分という人間を生き抜く大変さが込められた詩だと思いました。

●沢村一樹 コメント

?? 撮影を終えて

沢村 撮影中ずっと釧路に滞在することができ、作品に集中できたのが良かったです。釧路の寒さは質が違いますね。昼間も氷点下という経験は今回が初めて。散歩を10分もしたら、耳が「俺たち取れるぞ」って訴えてくるんです(笑)。東京で暮らしている人間と、釧路の人間との生活感覚は違うんじゃないかと肌で感じました。

?? 台本を読んだときの印象は?

沢村 最初の印象は、セリフが少なくて楽だなと…(笑)。殺人事件が起きて刑事が犯人を追いかけていくのですが、それがメインの内容ではない。そこに出てくる人たちを取り巻く環境、仕事、いろんなことがあって今に至っているという生き様がメインで、そうしたことを僕が演じる片桐刑事の表情や目線に反映させながら表現できたらいいなと感じました。

?? 片桐周平の印象は?

沢村 衣装合わせのときに、「猫じゃらしにはもうまったく反応しなくなった猫みたいな役ですか?」と言ったら、みんながきょとんとしていたんですが(笑)、僕のイメージはそれ。怖いものはもうそんなにないし、うれしいこともたくさんはない。猫じゃらしくらいで心動かないよ、という。そんな片桐にもうれしいことが一つあって、それは自分が育てていこうとしている柴咲コウちゃん演じる刑事が、きらっと光るものをときどき見せてくれること。それが仕事をしていて一番うれしいことで、それ以外には興味がない人だと思います。

?? 柴咲コウさんの印象は?

沢村 好きと嫌いがはっきりしている人。経験や常にアンテナを張り感覚を磨いている上での判断なので、なんの根拠もなく選り好みをしているのとは違うんだけど、意外と楽じゃないと思うんですよね。でも、それを貫いている女優さんだと思いました。演じるときも、僕が「ここのセリフをこうしたいんだけどどう思う?」って聞くと、「そうしてもらえると楽です」とか「そうすると次のセリフが言いにくくなります」とか、ダイレクトに言ってくれる。もちろんその理由もある。現場ではこうしたやり取りをかなりしたんだけど、ストレートでとてもやりやすかったです。

?? 撮影中に印象に残っていることは?

沢村 ほとんど出演者の方と現場で顔を合わせることができ、みなさんの本番が始まるまでの「あり方」、「役への入り方」を近くで、しかも長時間見ることができたことが印象に残っています。品川徹さんは今80歳でいらっしゃるのに、寒い中、文句のひとつも言わずにいる。この仕事が本当に好きなんだなぁと思いました。

?? 瀧本監督の現場はいかがでしたか?

沢村 一人ひとりの役者に目と気を配ってくれました。俳優より常に監督の方が一つ先に行っていて、「ああそうか」と素直に納得できることが多かったですね。逆に、自分の力の足りなさを思い知らされましたけど、そこはこだわらずに監督にお任せしました。とても信頼できる監督です。

●余 貴美子 コメント

?? 撮影を終えて

余 この辛くて悲しい物語を演じるにあたり、釧路という土地が助けてくれたように思います。その場所にいるだけで、逃げ場がないという小百合の気分が理解できるんです。台本を読んだときから、沖縄のように暑い土地で育った人たちの考え方ではないと感じていましたが、北海道の土地は広くて、どこまでも広くて…。撮影にお借りした釧路の飲み屋さんとかアパートとかも広いんです。あの広さと寒さの中にいると、小百合が「何か悪いことが起こるんじゃないか」という気持ちになるのが分かる気がして、釧路で撮影できて本当に良かったと思います。

?? 小百合と通じる部分は?

余 私も心配性の女なんです。人生どうせうまくいかない…と考えているところもありますし(笑)。でも、人間それでも生きていくというところまで含めて、小百合の気持ちは分かる気がしました。私が一番気に入っているのは、小百合の泣きぼくろ。初めて泣きぼくろのある女を演じることになり、以前から色っぽいな、うらやましいなと思っていたのでうれしかったですね。

?? 宮本信子さんとの共演の印象は?

余 信子さん演じる女性が小百合にとってどういう関係にあるのか、小百合は気づいていないのですが、そんなぼやっとした感じが逆に人生ってそういうものかなと思わせてくれました。そうした空気感を大先輩である信子さんが作ってくださいました。

?? 柴咲コウさんの印象は?

余 柴咲さんは聡明で周囲にとっても気を遣う方。親子役を演じたこともありますし、これまでの付き合いがある分、今回違う役どころで出会うことができ、楽しくできました。

?? 瀧本監督の現場はいかがでしたか?

余 パワフルでおっしゃることのすべてが信じられる。居心地のいい現場でした。

?? 孤独と屈託というドラマのテーマを普段感じることは?

余 都会ゆえの孤独を感じる瞬間はありますね。釧路で小百合が感じたであろう、逃げ場がないけどこの世にいなければならない孤独とは違って、都会だと逃げられる感じはしますけどね。

?? 印象に残ったシーン?

余 結婚式のシーンは妙に印象に残りました。監督も泣いていたんですよ。顔に遠慮なく雪を当てられて大変だったシーンもあるんですけど、そうした肉体的な感覚より精神的な寂しさが結婚式にはすごくありました。

?? 視聴者にメッセージを?

余 本当に心にしみる物語です。辛くても生きていくんだということが伝わるドラマになっているので、どうぞご覧ください。

●宮本信子 コメント

?? 撮影を終えて

宮本 釧路滞在は2週間ほど。こんなに長いロケは久しぶりでしたが、なかなか充実した日々でした。釧路の冬は零下になることは知っていましたが、滞在していたホテルの中は暖かくて、その差にびっくりしました。

?? 台本を読んだときの印象は?

宮本 準備稿は事件が中心に書かれていたのですが、決定稿でガラッと変わって登場人物がそれぞれによく書き込まれていて、すばらしい台本だと感じました。

?? 千恵子を演じるために心がけたことは?

宮本 千恵子が過去に背負ってきた大きな重いものを、説明的な芝居ではなく自分の体にどうしみ込ませるかということ。台本に書かれた言葉だけではなく、裏の裏まで、または裏をさらに裏返しにするということも芝居では用いますし、その一つひとつがつながったときに、ドラマを観る方にどう伝わるのか。大変な役だと最初から思っていましたので、そんなことを常に考えながら演じました。おもしろかったですよ。

?? 余 貴美子さんの印象は?

宮本 なんの気兼ねもなく楽しく芝居させてもらいました。息も合っていたと思いますし、余さんに感謝です。長いこと離れていても、たとえ音信不通であっても、「血」ってあるでしょ。そういうものを余さんとのシーンではすごく感じることができました。

?? 柴咲コウさんの印象は?

宮本 柴咲さん演じる真由と千恵子は孤独な女同士。スケートで心を少し通わせるという展開は、監督の演出も含めて非常におもしろかったです。

??瀧本監督の現場はいかがでしたか?

宮本 演出が明白。決断力がある。情熱がある。そして真剣。大好きです! 若いスタッフまで全員が妥協をしない現場。それを瀧本監督が作っていると、いつものことですが今回も感じました。

?? 孤独と屈託というドラマのテーマを普段感じることは?

宮本 私は前向きな女なのでね〜(笑)。理解できないことはないですが、個人的にはいつも、すぱっと生きています。

?? 印象に残ったシーン?

宮本 どのシーンも、役の重さ、質をものすごく感じながら芝居をしましたので印象に残っています。でも、あえて選ぶなら、方言で心情を吐露するシーン。それともう一つは、取り調べで思わず泣いてしまったシーン。カメラが回っている最中に計算していない芝居が出たのは久しぶりだったので、自分でもびっくりしました。

●原作者・桜木紫乃 コメント

 「血」は、かなしい救いです。ドラマ「氷の轍」には、土地が育てる気質や北海道の景色が余すところなく描かれていました。登場人物それぞれが「孤独」と「縁」の間で迷い、それでも自分から伸びた細い根を信じ生きている。見えないゆえに、つよく。
 「ひとの生い立ち」が六十年という時間を超えて交差する物語。映像の後ろに流れる弦の音に心をきしませながら、至福の時間を過ごしました。緊張感あふれる二時間でした。瀧本監督には「原作はきっかけ、好きに作ってください」と申し上げました。「俺たちの『饑餓海峡』を作ろう」がやっと実現しましたね。映画監督の心意気と矜持、役者さんの魂、支えてこられたスタッフの献身に、心から感謝申し上げます。
 視聴者のみなさまに、あの「寒さ」と「かなしみ」と「あふれる情」がまっすぐ届きますように。ひととき、冬の北海道を旅していただけたら嬉しいです。

●プロデューサー飯田新(ABC)コメント

 柴咲コウさんに初めてお会いした時のこと。柴咲さんから「(出演オファーを)なぜわたしに?」と訊かれ、一緒にいた瀧本智行監督と思わず答えた言葉は「孤独と屈託があるように見えたから」。「屈託」とは、ある一つのことが気にかかって、他のことが手につかず、くよくよすること。「屈託のない笑顔」という言い方はよくありますが、「屈託があるように見える」とは、今思えば随分と失礼な言い方だったなと。しかしそれが、その時の偽らざる本音でした。主人公の大門真由は、厳寒の北海道で「孤独と屈託」を抱えながら生きるひとりの女性。メガホンを取った瀧本監督がイメージしたのは、「釧路湿原に降り立ち、凛と佇む一羽の鶴」。舞台となった釧路は、静かに流れる空気のなかで、ピンと張り詰めた緊張感が漂う場所。そんな凍てつく街で繰り広げられる濃密な人間ドラマを、じっくりとご覧いただければ幸いです。