流星ワゴンは、直木賞受賞作家である重松清さんの書いた長編小説で月刊誌である現代小説で2001年1月から12月の間に連載された作品です。2002年2月に単行本で刊行されました。14年の時を経て2015年1月に西島秀俊、香川照之主演でドラマ化されました。原作とドラマ、あなたはどちらが好きですか。

『流星ワゴン』の内容は?

主人公である永田一雄は、人生に対してある種のあきらめを感じるようになっていました。入院中の父親の世話と、引きこもりがちな息子、そんな状況に耐えかねた妻は離婚を宣言して出て行ってしまいます。残された状況の中で、死んでもいいかなと考えてしまいます。ある日、酔っ払っているところに一台のワゴン車が通りかかり、一雄を車中に招きました。その車を運転していたのは、5年前に交通事故で亡くなったと新聞で報じられた橋本親子です。一雄は橋本の運転する車の中で、自身の人生を振り返り、どうしてこうなったのかを思い返します。そして着いた先で見たものは、38歳の姿の父親でした。そしてそれから若い父親との語らいの時間を過ごしていくことになりました。その中で、一雄の心境を変える父親の一言一言が読み手に感動をあたえてくれる物語です。

満を持してドラマ化!

西島秀俊さん、香川照之さん、井川遥さんと豪華キャストでのドラマ化実現しました。14年の時を経てベストセラー小説がドラマ化するとあって多くの人から注目を浴び、原作本にも再び注目が集まりました。ドラマは、原作を意識しつつも演出などで設定が多少変更しました。
例えば、原作小説では広樹は転校していないし、一雄の仕事も見つかっていない。ドラマでは電子部品の営業マンがいきなり地元で漁師をはじめ、荒れていた息子は転校をきっかけに明るく笑うようになり、やさぐれていた妻がしおらしい顔で訪ねてくるという展開は少々できすぎている感がありましたが、制作側が練りに練った素晴らしい設定でした。
原作とドラマ、どちらがより魔法で、よりリアルなのか「流星ワゴン」で重松清さんのを知るきっかけとなった人にとっては楽しみだったはずです。

他にもドラマ独自の演出が…。

ドラマの中には、原作にはない演出やセリフが多く出てきます。代表的なのが最終回での親子の会話です。原作では、一雄が「親子ってなんで同い年になれないんだろう」「広樹(息子)が38になったら今の俺が会いに行きたい」というと父親の忠は、「何アホなこと言うとんねん」と笑い飛ばしていました。
しかしドラマでは父親の忠が息子を幸せにできなかったことを悔やみながら、「わしらは親子としてはいけんかったけど、朋輩だったらどうじゃったろう」と語っています。観る側にとっても原作で伝えたかったことの意味を、どちらの表現からも同じように感じることができるでしょう。

まだまだあるドラマと原作の違い、探してみても楽しい。

原作との違いに一喜一憂するのも、原作のあるドラマの面白さのひとつだ。どちらにもあった「連れション」のシーン。ドラマでは、「この世でいちばんお前のことをおもうてきたんわ、このわしじゃ」と別れが近づくなか、思いを告げる忠さん。そして、「お前を幸せにしてやれなくて、ほんまにすまない」と頭を下げる。
そして、二人並んで連れションをする。原作では「わし、ひとつだけやってみたいことがあったんじゃ」と忠さんが言いだし、二人で連れションをするシーンが登場するが、ドラマに比べるとかなりあっさりしている。連れションを終えた後もあっさり。原作の忠さんは生き霊になっても相変わらず、不器用でぶっきらぼうだ。ドラマ版の忠さんは熱く語るシーンが多い。そして、「流星ワゴン」ならではの流れでは、原作小説でのタイムスリップは3回。ドラマでは6回もワゴンは時空を越えた。

最後も違うドラマと原作

ドラマ最終話では、一雄が目を覚ますと携帯に妹から大量の着信が入っている。留守電を聞くと、父親の容態が急変したことを告げる知らせだった。家に戻り、息子の広樹を連れて父親の入院先に急ぐ。葬儀の後、妻・美代子(井川遙)に離婚届けを渡し、「どうするかは君が決め手くれ。だけど、俺は待ってる。ずっと待ってるから」と告げる。そして、一雄は漁師見習いになる。

原作では一雄が先にワゴンを降りるという設定になっている。そして、一雄は死ぬ間際のチュウさんにも会っていない。「僕と別れてからどこに連れていってもらい、どんなことをやり直していったのか、いつか、ずっと先のいつか、訊いてみたいと思う」 と一雄は思う。現実世界に戻って5日後に妹からの電話で亡くなったことを知らさる。ドラマのようなわかりやすいハッピーエンドではなく、少しだけ変わった新しい未来があった。少しづつ変わりそうな予感とともに。