人気女優の杏さんが主演で2014年・2015年と2シリーズ、ドラマ化された「花咲舞が黙ってない」。「半沢直樹」「下町ロケット」「民王」「ようこそ、わが家へ」「ルーズヴェルト・ゲーム」などなど次々とドラマ化される池井戸潤さん作品の中で初めての女性主人公ということでも注目を集めた。

原作となったのは『不祥事』と『銀行総務特命』の2冊

「花咲舞が黙ってない」は小説「花咲舞が黙ってない」が原作でなく、池井戸潤さんの「不祥事」と「銀行総務特命」2冊の小説が原作になって構成されています。「不祥事」は2004年に、「銀行総務特命」は2002年に刊行された池井戸潤さんの作品です。このうち「不祥事」については主人公は花咲舞ですが、「銀行総務特命」の方は銀行が舞台ではあるものの主人公は別の男性「指宿修平」になっている。「不祥事」も「銀行総務特命」も短編小説集なのでドラマでの展開に取り込みやすかったのかもしれない。理由はともかくこの二つの原作がドラマの展開を面白くしていることは間違いない。

池井戸潤さんが描く魅力的なヒロイン

池井戸潤さんと言えば、銀行や企業を舞台に骨太な筋書きと男のドラマが描かれる読み応えのある作品が多く、ドラマチックな展開や魅力的な「オジサン」キャラクターが登場することで、映像化されやすい作家なのではないでしょうか。そんな中で、唯一女性主人公の作品が『不祥事』です。ですが花咲舞のキャラクターは、言いたいことをズバズバ言う、歴代の主人公に負けないくらい男らしいのです。女性版『半沢直樹』といったところでしょうか。上司に対しても臆することなく立ち向かっていく爽快感のあるヒロインが人気の秘密になっています。

短編形式のテンポの良い物語

『不祥事』は8つの短編小説がそれぞれ関わりがあり、同じ銀行を舞台として伏線にもなっている形式でした。池井戸潤さんの小説には銀行が舞台となるものが数多くあります。作者ご本人が銀行に勤めていた経験からなのでしょうが、描写にリアリティがあり、「そんなこと本当にあるのか」と思わせるくらいのドラマチックな事件が起きても嘘くさく感じさせないので、物語に説得性があるのでしょう。8つの短編どれもが長編としても成り立つような内容で、主人公の魅力と相まって引き込まれてしまう話ばかりなのです。

実はこちらが先『銀行総務特命』

先に刊行された『銀行総務特命』の続編として出されたのが『不祥事』でした。ドラマ化にあたり、先に原作として取り上げられたのは『不祥事』の方であり、ドラマのタイトルも『花咲舞が黙ってない』となりました。第2シリーズのドラマ化にあたり、本来主人公は花咲舞ではありませんが、前身となる『銀行総務特命』の内容も取り入れられてドラマは作られたようですね。『銀行総務特命』もまた8つの小作品からなる短編集です。『不祥事』よりも銀行の闇の部分を描いたハードで重厚な印象の作品になっています。情報漏洩や裏金など、扱うテーマも重く、『不祥事』に比べると爽快な読後感があるものではありません。ですが、むしろこちらの方が池井戸潤さんの作品らしさが詰まっているといえるでしょう。

『花咲舞が黙ってない』ドラマ化で再度注目された作品

『不祥事』『銀行総務特命』ともに池井戸潤さんの作品の中でも人気があった小説です。刊行後文庫化もされていましたが、ドラマ化にあたり再度注目を集めました。テレビドラマを見てから原作を読んだ方は、その内容の濃さ、緻密さに驚くかもしれません。またこれだけ細部にわたるリアリティさ、計算された骨太のストーリーだからこそ、今回ドラマ化になったのだと納得できるはずです。決して「花咲舞」というヒロインだけで映像化が決定されたのではありません。池井戸潤さんの魅力的な世界観が味わえる小説だからこそですね。

「花咲舞が黙ってない」はドラマと同じタイトルで、2014年にコミカライズされました。そして2016年1月17日から「読売新聞」朝刊にて池井戸潤執筆による新聞小説「花咲舞が黙ってない」の連載を開始した。「花咲舞」は本当に黙ってない。