一見、普通の恋愛小説のようで大どんでん返しありの斬新なミステリー小説「イニシエーション・ラブ」は2004年に刊行され、探偵小説研究会編著の2005年版「本格ミステリ・ベスト10」で第6位にランクインし話題になった。その後2007年に文庫版が発売され文庫本は2015年映画公開前に100万部以上を売上再ブレイクした。もちろん同年5月に公開された映画も大ヒットだった。

ラスト2行でガラっと変わる世界

冒頭、何気ない合コンでの出会いから、徐々に心が近くなっていき恋愛関係へと発展していく物語。淡々とした恋愛小説のような描写が続くのですが、実はそれにはさまざまな伏線が仕かけられています。1980年代後半の静岡で、マユとタッくんが合コンで知り合い、恋人同士として甘い生活を送っているのが、「Side-A」です。就職し、東京本社に転勤することとなった、タッくんの新しい生活と、壊れてゆく2人の関係を描く「Side-B」は、切ないラブストーリー。そして、大どんでん返しが起こるのはたった最後の2行なのです。それだけでこの作品は全く別の色を持った作品へと一気に変化します。最後の2行で「そういうことか」とこの騙され方はあまりに痛快でした。

二度読みたくなる展開

そもそもこの作品は「Side-A」と「Side-B」二部構成になっています。1回目は恋愛小説として、2回目はミステリー小説として読んでみるのもよいでしょう。学生時代の物語と、社会人での物語ですから。ただ登場人物のたっくんがどうも違和感があるんです。「Side-A」と「Side-B」に登場するたっくんは同じ人ではなく別人なのです。そして同時進行にも読めるのです。違和感を感じてやはり二度読みたくなるのです

懐かしいフレーズの数々

この作品の見どころは、1980年代の懐かしい雰囲気が感じられるところにもあります。SHOW ME・初恋・約束・君は1000%・街角トワイライト・Yes-No・フレンズ・秘密の花園・愛のメモリー・君だけに・CHA-CHA-CHA・木綿のハンカチーフ・SACHIKO・哀愁のカサブランカ・夏をあきらめて・そして僕は途方に暮れる・心の色 ・恋人よ・思い出は美しすぎて・恋におちて・ルビーの指環など当時ヒットしていた楽曲も多く登場します。1980年にどっぷりとつかって読んでください。そして、「男女7人夏物語」「男女7人秋物語」もお忘れなく。

映画「イニシエーション・ラブ」もすごい

「イニシエーション・ラブ」は、映像化不可能だと言われていました。原作者の乾くるみさんも、「あれを映像化するのですか? どうぞ、ご自由に。恐らく、原作とは、かなり異なるでしょう」と映画化の話の時に話たとか。その挑戦を受けて立ったのが「TRICK」、「SPEC」でお馴染みの堤幸彦監督。原作「イニシエーション・ラブ」を読むとその難しさを実感すると思いますが、映画「イニシエーション・ラブ」を観ると堤幸彦監督のスゴさを実感することでしょう。もちろんキャスト陣も素晴らしいです。特に、惚れない男はいないと思わせる繭子の人懐っこさや愛くるしい笑顔に誰もが癒されるはずです。女優前田敦子が魅せる純粋で無邪気な繭子にはトンデモナイ秘密が隠されているのです。現在、「毒島ゆり子のせきらら日記」でもその片鱗は観ることできますよね。さすがAKB総選挙1位は伊達じゃないですね。映画の場合は「最後の5分」前田敦子の純粋さがガラガラと崩れ落ち笑顔が恐ろしく感じられるでしょう。

有名人も大絶賛!

「イニシエーション・ラブ」が大ヒットするきっかけになった背景には、あるお笑い芸人の存在があるとネット話題になっています。それはくりぃむしちゅーの有田哲平さん。彼がレギュラー出演する日本テレビ系バラエティ番組の中で、この本を「最高傑作のミステリ」と絶賛したのです。他にもお笑いコンビ・アンジャッシュの渡部さんや、ミュージシャン・UVERworldのTAKUYA∞さんもそれぞれTBS系列番組の中でこの本を推薦したことで発表から10年程が経っていたこの本が映画公開前に2度目のブレイクをすることになるのです。

2度読みたくなる小説「イニシエーション・ラブ」。2度観たくなる映画「イニシエーション・ラブ」。原作と映画の一騎打ちを体感してください。