下重暁子著「家族という病」という本がベストセラーになりました。この本はなぜそんなに売れたのでしょうか。どんな点に読者は興味を持ったのでしょうか。多くの人が抱える問題を取り上げているから売れたのかもしれません。この本には賛否両論の意見があるようです。

著者とその背景について

この本の著者である下重暁子さんは戦前生まれです。父親は職業軍人であり、戦後は公職追放になりました。また、下重さんには子供がいません。厳しい環境で育ち、子育てを経験されていないことで、読者の中には「現代の家庭や子育てについて知らないのに」と反発を感じる人もいます。自分で経験していないことを想像で書いている、とモヤモヤを感じるようです。この本は賛否両論があり、単なる個人の家族に対する不満を綴ったエッセイだと受け止める人もいれば、家族の問題に対して鋭い意見が書かれていると共感する人もいます。このように同じ本を読んでも感じることは様々で、賛否両論になったことがますます本が売れた理由の一つかもしれません。それだけ読者の興味をひく内容であるといえるでしょう。

戦後に大きく変わった家族の形

戦後の日本は家族の形がどんどん変わっていきました。何世代も一緒に住む大家族から、核家族への変化があります。昔は当たり前だった、高齢者の家庭での介護は少なくなり、介護施設に入る人が増えました。子育ては、おじいちゃんやおばあちゃんが関わらず、母親が日中に一人で育てているような家庭が増えました。核家族になると家族間の距離が変わってくることが多いです。夫婦の関係は近くなり、ケンカになっても止めに入る家族はいません。密室での虐待が増えている昨今です。夫婦間トラブル、親子トラブルが増え、濃密になっています。ですから人々の家族に関する悩みは多く深く、深刻な状況に発展することもあります。悩む人たちがこの本を手に取ったのではないでしょうか。

家族という形にひそむ問題

この本に出てくる話題の中に、家族の写真入り年賀状の話があります。こんなものを送ってこられて迷惑だ。実は、同じように感じている人は多いのです。ネットの相談サイトなどでもよく取り上げられて論争になっています。なかなか結婚できない人、子供が授からない人が増えているため、家族写真(特に子供の入ったもの)を送られると、見るに耐えないほど辛い思いをされているのです。家族の幸せを見せつけられた、自分はみじめだと感じるでしょう。ここにも「家族という病」が存在します。家族とは幸せなものだ、家族を持てない自分は不幸だ、もしかするとそれは思い込みかもしれません。幸せなように見える家族も、たいてい何かしら問題を抱えていたりするものですから。

親子間のしがらみや依存

また、この本に取り上げられていることの一つに、親子間のしがらみや依存があります。この問題も現代の家庭に多く見られるものなので、共感する読者も多いでしょう。遺産相続で揉める、親子で共依存になる、オレオレ詐欺にすぐ引っかかるくらい子供に甘い親、毒親という言葉も流行っています。自分のことだけしか考えていない親が子供に依存するのです。本の中では著者の家庭について、親のためにさんざん辛い思いをしたことが書かれていますが、多くの家庭で同じようなことが起きています。社会現象である大きな問題だからこそ、人々が興味を持ってこの本を買い、読んだのでしょう。実際に親子問題を抱えている人には救いになった部分があったかもしれません。

幸せな家庭は幻想にすぎないのか?

家族問題を何も抱えていない幸せな家庭生活を過ごしているという人には、この本は何も興味をそそることなく、読む必要もないでしょう。しかし、何も問題のない家族などどれだけあるでしょうか、少数派ではないでしょうか。もはや幸せな家庭というのは幻想にすぎないのでは? と思えるほど、問題を抱えた家庭は多いです。毒にしかならない親に疲れて本を手に取った人は多いでしょう。共感する人が多かったこと、また逆におおげさすぎる、自分語りにすぎないじゃないかと反発を感じた人も多かったからこそ、この本は大きな反響を呼び、売れたのではないでしょうか。

現代人の多くが家族の悩みを抱えています。著者は戦前生まれの人ですが、昔から変わらず家族間には問題が多く発生します。家族のことで辛い思いをしている人がこの本に興味を持ち話題になっていったのでしょう。