●"エセ"ではない優しさをもった3人
デビュー20年を経て、CD売上増、紅白歌合戦出場など新たな姿を見せているアイドルグループ・V6。年下の3人はComing Century、年上の3人は20th Centuryというユニットを組み、それぞれの活動も行われている。

坂本昌行長野博井ノ原快彦の3人からなる20th Century、通称トニセンは、CDやコンサート、舞台などで3人の活躍を見せており、これまでユニットとしての作品も多数存在する。全員が40代となっているが、2017年1月からは、完全オリジナルで新作の舞台 TWENTIETH TRIANGLE TOUR『戸惑いの惑星』を発信することとなった。発表されるやいなや多くの読者から反響を呼び、また「ぜひ取材してほしい」というリクエストもあったこの作品。今回は作・演出を務め、舞台の鍵を握る演出家/劇作家のG2に話を聞いた。

○3人がそろうなら、自分が演出したい

――今回の作品について、けっこう前からあたためていたというようなお話を伺いました。

ちょうど2年前に、3人が中心となった『ON THE TOWN』というブロードウェイのミュージカルがあって、翻訳・訳詞だけで関わっていたんです。でも3人が久々に集まるのに、「なんで俺が演出してないの?」という思いを抱いていて(笑)。

ブロードウェイのミュージカルですし、仕方ないなと納得していたんですけど、悔しいなと思っていたら、「今度は3人だけで何かをやりたいと考えている」という話を聞かされて、「それはぜひやらせてよ」と申し出ました。イノッチが『ON THE TOWN』打ち上げ中にもう、「G2さんがやってくれるって」と話を通していたので、向こうも「しめしめ」と思っていてくれたのかもしれません。

――たとえば劇団などではない商業的な舞台で、自発的に公演が出来上がることはあるんでしょうか?

出演者発信というのはなかなか難しい部分もあるので、珍しいでしょうね。

――そこに2年ほどかけて準備をされたきたんですね。

いや、2年ほどかけて、うだうだしてきました(笑)。集まってはなんてことない話をしながら、方向性を模索しまして。"うだ話"という形式からスタートしたために、こういう作品になったのかもしれない、というのもありますね。ご覧になっていただいたらわかると思います。今までそれぞれとは仕事をしてきたのですが、他の人から聞いた話で見えてくることもありますし、本人のエピソードなども生かしています。

○驚きの初対面

――先ほど「3人がやるなら自分が演出したい」というお話がありましたが、そろった時の具体的な良さはなんだと思いますか?

トニセンの3人と接していると、幸せになれるんですよ。その状態でものづくりができたらこんなに幸せなことはないというか。うまく言葉で伝えられないですけれど、3人が何か、人間としての潤いのコーティングを共有して包まれている、みたいな感じ。それで、そのコーティングの中に「俺も入りたいなあ」という気持ちにさせられるんです。

――その潤いのコーティングは何か、理由があるんでしょうか?

3人が苦労してきたということはあるのかもしれません。その苦労を、見ている人の胃がきりりと痛む方向で出さないのは、みんなに喜びを与える仕事をやっているという自覚ゆえなのか、良い方向に転化することを身につけた結果なのか、元々の天賦の才能なのか。そもそも、そんな3人をひとまとめにして、"トニセン"と名乗らせたジャニーさんがすごいのか、定かではないんですけど。

初めて3人に出会ったのは、酔っぱらったイノッチを、別の店でダーツ中の坂本くんと長野くんのところに送り届けた時なんです。届けに行ったら2人が、イノッチを「その辺に転がしといてください」と言ったのが、エセっぽい優しさではなくて、本当の優しさに感じて。その時から、「3人でいる姿はいいなあ」と思っていたんですよ。

――それはすごい初対面ですね。

イノッチが酔っ払っちゃって、「どこに帰るの?」と聞くと、「坂本と長野がダーツしてるから、そこに行きたい、行きたい」と言うから(笑)。大阪だったんですけど、「あの町のあたりで」「どの辺?」「こっちだ」といったやり取りで連れ歩いたのに全然見つからなくて。イノッチはもうふにゃふにゃですし、本当にどうしようかと思いました。

そしたらあるビルの窓から、坂本くんと長野くんがダーツしている姿がふっと見えて「あそこじゃない!?」って、嘘みたいな展開(笑)。大体は場所が合っていたから見つかったんですけど、イノッチが言っていたビルとも違いましたからね。さすがに十数年前の話なので、今はイノッチもそんなことにならないと思うんですけど(笑)。

●トニセン3人の、役者としての印象
○本人と役が入れ子構造に

――今回の作品では、設定としては作中の人物だけど、本人のエピソードは入れ込む、ということなのでしょうか。

本人と役が入れ子構造になっているんですが、ベースになっているのは本人なので、実際のエピソードを入れることによって、メタフィクション的な、現実か虚構かわからないところに持って行くという試みではありました。

彼らの話したことと、彼らの曲が作品の中に入ってくることは決めていたので、3人が自分で好きなトニセンの曲を選んでもらって、それを聴きながら書きました。

――概要を拝見したときに、トニセンさんの楽曲を使うということで、ジュークボックス・ミュージカル的な作品なのかと思ったのですが、それともまた違った形になりますか?

1曲今回のオリジナルがありますが、彼らの曲を使っているという意味では、そうかもしれません。でも、絶対に彼らの楽曲を使わねばならぬ、とは思っていなくて、台本が書き上がったときに、使ってなかったらごめんなさいと思っていました。

ジュークボックス・ミュージカル、カタログ・ミュージカルと言われている作品に、もちろん素晴らしいものもあるのですが、ただ曲を並べたバラエティショー的な感じになってしまうと、僕はあまり得意ではないんです。ストーリーやイメージ、あるいは何か比喩的な形で、強烈に結びついているという因果関係が好きなので、曲を並べただけの作品にはしたくありませんでした。いらっしゃる方も、「この作品のために作られた曲かと思った」「迷宮に迷い込んで旅をしていたら、トニセンの曲が聴けたね」といった感じで見てもらえたらいいなと頑張っています。

――台本が固まって、稽古が始まってみて、3人の感想などはありましたか?

なかなか言ってくれないんですよ!! やっぱり、僕が提示したものを「これはできません」とは言いたくないだろうし、ずっと話しながら段階的にやってきたので、すでにコンセンサスもとれているんですよね。3人とも「あれ?」ということはなかったんじゃないでしょうか。

でもコツコツと「ここはちょっとわかりにくくないですか?」と聞いていくと、「もう少しわかりやすい方がいいかもしれませんね」と言ってくれるから、ちょっとでも意見が出てくるとすぐに反映しますけどね(笑)。

3人ともピースな人たちだから、本質的な意味で意見がぶつかることもあるんだろうけど、意見を言う方法としてはとても平和で、すごくやりやすいんですよね。僕も争いごとは苦手で、「日本一権威のない演出家」と言われるので(笑)。

○トニセンの役者としての印象

――それでは、3人のそれぞれの役者としての印象を伺いたいと思います。まず坂本さんについてはいかがですか?

正統派ですよね。舞台出演も一番多いし、僕も彼とだけは2回やっているんです。1回はストレートプレイで、1回はミュージカルで。とても正統派で真面目で、よく考えてきてくれます。あとは、もっと大きく外れてもいいと思ってしまうくらいです。

――正統派な作品や役柄が似合うということでしょうか?

というよりも、作品への取り組み方が正統派ですね。ミュージカルスクールにいって手取り足取り教えてもらって、あるいは劇団に入っていたわけじゃないのに、我流な感じがしないんです。教育手順を踏んで成長してきたように見えるところが、逆に不思議。何かを作り上げるときに、一番真っ正直な方法でアプローチをしていく役者さんですね。

――では、長野さんはいかがですか?

長野くんと前回やった時は、ものすごい量の注文を出したんです(笑)。その注文地獄から、どう演じていくかと試してみたんですが、本当に懐が深いし、探究心もすごい人なんですよね。その深いところに、たくさんの注文を投げ込むことによって、化学反応を起こしたいなと思ってやっていました。

――例えばどんな注文を出されたんですか?

もう、一挙手一投足。「このセリフを言った直後にあちらに行ってください」とか、「このセリフはまるで独り言のようですけど、ここにいる3人中2人に聞かせてください」とか。温和な長野くんがフル回転している姿は面白かったです。ただ前はたくさん注文を出しすぎたので、10のうちの3つくらいは、「どうやったらそう見えるか」という近道の方法を教えてあげてしまったということがありました。今回は、あえて全部遠回りで行ってみてもらいたいなと思います。

――それでは、最後に井ノ原さんについては。

俳優としてのイノッチは素直で何色にでも染まりそうで、実際いろんなものを投げていくと染まっていくように見えるんだけど、ふと気づいて完成してみると"イノッチ"なんですよね。不思議な存在です。僕は、前々から「一人芝居は絶対にしたくない」と言っていて。一人芝居って本当に演じている人も演出する人も大変だし、大変な割に報われない印象があったんですけど(笑)、イノッチとならやってもいい。そのくらい、何かを言ってくと吸収力があるんです。

例えば何か注文つけた時に「ここはできたけど、ここはできてないな」ということが、普通は気になるんですけど、イノッチに関してはあんまり気にならないというか。気にさせないような雰囲気を持っているから、リラックスして向き合えます。

――ドラマや、NHKの番組『あさイチ』などで拝見しても、自然体のイメージがありますね。

イノッチは毎朝しゃべっていることで、言葉の説得力が増していますよね。普段のトークも当然なんでしょうけど、セリフを読む時も「前はこの説得力は得てなかったな」という変化は感じます。

○戸惑いは真理へのきっかけ

――他に、3人について、前の作品で接したときから変化があったと感じる部分はありますか?

でも3人とも、いい意味で変わらないですね。自分も含めて、人間って年をとると固くなっていくじゃないですか。10年ぶりに会って仕事をすると、どこかで「頭の関節が固くなっちゃいましたね」と思う人もいるのですが、3人にはそれがない。彼らに変化がないということではなく、柔らかいところが変わらないんです。

――そういうところも『戸惑いの惑星』というタイトルに含まれていますか?

元々は一番年下のイノッチが40歳になって「不惑」というトニセンの曲ができあがり、この曲をお芝居にしてしまう方向性についても話していました。結局「不惑」という曲を1本作品にするまではいっていないですが、かなり「惑う」という言葉をキーワードにしていますね。

40歳は「不惑」、惑わないという歳だけど「40歳そこそこで惑わないはずがないじゃない?」という。むしろ今まで若さだけで突っ走っていたところが、そうはいかんだろう、大いに戸惑う年齢じゃないのか、という考え方で、そういう時期にさしかかった3人の物語です。

――タイトルの「惑星」という部分についてはいかがでしょうか?

現在は太陽を中心に惑星が回っている図を教えられるんですけど、昔の人は知らなかったんですよね。そうすると、夜空を見たときにほとんどの星は全部一緒に動いているのに、惑星だけは変な動き方をしている。「なんだ、あの戸惑っている星は」ということで惑星とつけたそうです。

結局、彼らが戸惑った動きをしているおかげで、太陽系の存在がわかるきっかけとなる。だから、戸惑いは真理を得るきっかけなんです! というくだりを台本に入れたかったんですけど、セリフになっていないので、これは記事にしておいてください(笑)。

■TWENTIETH TRIANGLE TOUR『戸惑いの惑星』
夢を追い続けた3人の男たちの物語。不意に手渡された一通の手紙。そこには不思議な質問が記されていた。東京公演は東京グローブ座にて1月21日〜2月14日。福岡公演はキャナルシティ劇場にて2月18日〜19日。大阪公演はシアター・ドラマシティにて2月24日〜26日。