東京商工リサーチは9月23日、「社会保険の適用拡大」に関するアンケート調査の結果を発表した。調査は8月18日〜31日、インターネットによるアンケートを実施し、有効回答を得た6,941社を集計・分析したもの。

社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象を拡大する制度改正が10月1日から施行される。従来、週30時間以上の短時間労働者が対象だったが、拡大後は従業員501人以上の企業に週の労働時間が20時間以上、月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)、1年以上の雇用見込みで勤務する学生以外の短時間労働者も対象となる。厚生労働省は約25万人が新たに適用されると推計している。

社会保険の適用拡大について知っているか聞いたところ、「知っている」と回答したのは67.5%。産業別では、サービス業他(70.6%)で最も認知されており、次いで、運輸業(70.0%)、建設業(69.1%)、小売業(69.0%)、製造業(68.6%)と続き、5産業が全体を上回った。一方、最も認知度が低かったのは不動産業(58.6%)だった。「知らなかった」(32.5%)と回答した大半は、従業員数500人以下や短時間労働者の雇用がなく、今回改正の対象外となる企業で認知されていない傾向がみられた。

適用拡大について、何らかの「対応を実施した(予定含む)」のは21.4%。従業員数別では、501人以上で「対応を実施した」のは37.8%、500人以下では20.2%で、17.6ポイントの開きがあった。今回の改正で対象とならない従業員500人以下の企業は、「検討しない/対応しない」が44.3%と最も多かった

適用拡大に「対応した/する予定」と回答した企業1,483社の具体的な対応策は、「従業員(主に短時間労働者)への周知」(56.0%)が最多で、次いで「管理者への周知」(49.5%)。「(労働時間短縮など)雇用契約の見直し」(21.5%)、「対象外の短時間労働者を増やす」(3.9%)はいずれも少数だった。10月以降の適用拡大後に予想される影響については、「法定福利費の増加」(47.7%)が最多。次いで「社会保険事務の負担増」(24.5%)、「短時間労働者の勤務調整や退職」(19.9%)、「人員確保難」(13.7%)と続いた。

適用拡大が企業に与える影響について、既に出ている影響は「無い」が73.1%で、実施前のため大きな動きはない。「短時間労働者の勤務時間・日数調整」(12.2%)、「新規採用難」(5.7%)と、実施前ではあるが「短時間労働者の退職増加」(1.9%)と回答した企業もあった。

予想される影響で「法定福利費の増加」を選択した企業に、コスト増への対策を聞くと、「人件費以外の経費節減」が44.5%でトップ。次いで、「人件費(残業削減など)の抑制」(36.7%)、「無い」(28.3%)の順。今後予定する人員施策では、「正社員の増員」(29.0%)、「短時間労働者の増員」(8.9%)が選ばれた。

社会保険のさらなる適用拡大について、「反対」は33.1%、「賛成」は18.8%。また、社会保険制度に関する要望として選ばれたのは、「保険料率の低減」が52.5%、「保険料徴収の強化」が19.2%だった。

調査では、「企業にとって最大の懸念は法定福利費の増加であり、業績に直接影響を及ぼすことが想定される。しかし、短時間労働者を含め従業員の削減は容易でなく、法定福利費の増加には経費節減や価格転嫁で臨む姿勢もうかがえる。ただ、こうした対策が功を奏しなかった場合、業績悪化を避けられない企業も現れることも予想され、動向の注視が必要だ」とコメントしている。