●腎疾患が原因でむくみが出現する場合も
夕方になると足がパンパンになったり、お酒を飲んだ翌日に顔が2倍に膨れたりした経験はないだろうか。これはむくみに伴う症状に該当するが、このむくみはどのようにして起こるのか、きちんと説明できるだろうか。

本稿では、聖マリアンナ医科大学の井上肇特任教授にうかがったむくみの原因とその解消法を紹介する。

○むくみの仕組み

私たちの体の約60%は水分で構成されている。約60兆個といわれている細胞の中身(細胞質)と血液、リンパ液で体液が構成されているが、例外なくこういった水分も重力で下に引っ張られる。長時間の立ち仕事などをしていると、足がむくんで「靴下の跡がくっきりとついた」「ブーツが履けなくなった」などと訴える人が多くなるのは、要するに下肢や末梢(まっしょう)に水が落ちていっているのだ。

むくみの原因を知るにあたり、体の仕組みについて理解しておこう。血液は心臓のポンプ力で強制的に循環しているため、立っているときは重力の影響で足に血液がたまりやすい傾向にある。ポンプの力で血液がたまらないように汲み上げていると考えるとわかりやすい。

一方でリンパ液はリンパ管を流れているが、リンパ管には心臓のようなポンプ力が備わっていないため、強制的な循環を行えない。そこで、私たちは筋肉の運動でリンパ液を循環させている。

これらの事実から、長時間立ったままでの仕事で足の筋肉を動かさないと、どうしてもむくみが起こりうる。「組織内に水が漏れ出てきた状態」をむくみと考えて差し支えないだろう。

○むくみと浸透圧の関係

また、私たちの体は常に正常に維持され、必要な場所に必要な水分を配給している。この要になるのが「浸透圧」だ。血液中のたんぱく質「アルブミン」は、血管内に水を保持してむくみを予防する重要な働きをしている。同時にナトリウムやカリウムなどのミネラル(塩分)は、この濃度の微妙な差で絶妙に体液量を維持している。

私たちが塩分の濃い食事を摂取しても、尿を作るホルモンがバランスよく働いて、余分な塩分をできるだけ尿に排せつさせ、身体のナトリウムなどの濃度を一定に保とうと努力する。だが、排せつが追いつかないときには逆に水分を体に留めて、体の濃くなりすぎる塩分を薄めて一定に保とうとしている。この際に血管内に留めきれなくなった水分が細胞の間に漏れ出て、むくみを引き起こすのだ。

このように生活環境や食環境によって、体のむくみは左右される。普段健康な人がむくみを訴えるときは、まずその前日の食生活やその日の生活環境を思い出してみるといいだろう。

病的にむくむ人もいるが、これは一般的には腎疾患が理由に挙げられる。慢性・急性腎不全やネフローゼ症候群は、機序は違うが全身性にむくみの症状が現れるし、慢性心不全などでも循環障害による腎機能の低下でむくみを引き起こす。 肝機能不全や高度の飢餓状態などではアルブミンが低下してしまい、血管内に水を維持できずにむくみをきたす。

その他、甲状腺機能や副腎機能の疾患でむくみをきたす場合や、女性に多い下腿静脈瘤による足のむくみもある。いずれにせよ、むくみの症状がひどい場合は専門医の受診が必要となる。

●むくみを軽減する食事や運動などの対処法
よく「ダイエットをするとむくむ」という人がいるが、摂取カロリーや脂肪を極端に減らそうとすると、結果的にたんぱく質摂取が極端に制限されてしまい、肝臓のアルブミンが合成できなくなることがある。このようなケースは低たんぱく血症を招き、むくみが起きてしまう。

一方で、食事バランスに配慮しながらのダイエットならいいが、ビタミン(特にビタミンB1)不足によるむくみもある。ビタミンB1が欠乏すると神経伝達障害が起こり、足のむくみやしびれなどの俗にいう「脚気(かっけ)」になる。この状態でダイエットを続けると、心臓機能に影響して脚気心を引き起こし、心不全による全身性のむくみを引き起こすこともある。

ダイエットをしていなくても、つまみも食べずにお酒ばかり飲んでいるような人は、アルコールを代謝するために必須のビタミンB1を消費するので注意が必要だ。

以上のことを踏まえたうえで、むくみとその解消方法を紹介しよう。

バランスのよい食事を心掛ける

特に塩分を控えた素材の旨みを堪能する食事がお勧め。例えば、コンビニ食や冷凍食品、ファストフード、インスタント食品などには多くの塩分が含まれている。冷凍食品やインスタント食品などの裏面の食品成分表を注意してみると、「こんなに食塩を使っているのか」と驚くかもしれない。

できれば、塩分摂取量は一日10g以下に抑えられる努力をするように。酢やトウガラシなどの香辛料を適度に使えば、塩分摂取を抑えることは十分可能だ。

水は飲んだほうがよい?

過剰な水分摂取はナトリウムの排せつを促してしまい、低ナトリウム性のむくみを引き起こすため、注意が必要。生命維持に必要な水ではあるが、一日に摂取する量としては以下を目安にしたい。

■活動レベルの低い(汗をかかない)人 → 2.3リットル〜2.5リットル
■活動レベルが高い(汗をかく)人   → 3.3リットル〜3.5リットル

この水は食材に含まれる水分、栄養を代謝するときに発生する代謝水も含まれているため、実際の水をこれほど飲む必要はない。

しかし、日本人の水分摂取量は天候に極めて左右されるうえ、欧米人に比べて水分含有量の多い料理を摂取しているため、欧米の目安である「必要水分量の70〜80%の飲水」は当てはまらない。基本的な目安としての概算ではあるが、一日に必要な水分の60%程度を水分として摂取するようにしたい。

ただし、飲酒をしたら余分に水を飲むのがよい。夜間就寝時のアルコールの代謝に伴い脱水が起き、血液濃縮によって発症する脳血管疾患のリスクが有意に低下するという研究があるからだ。飲酒後は、コップ2杯くらいの水は飲んでから就寝するようにしてほしい。

適度なエクササイズも忘れずに

体を冷やさず血行を維持できるよう、保温・加温をすることも重要。立ち仕事が要求される仕事であれば、立ちながらでも足のストレッチや屈伸、ふくらはぎの筋肉を伸ばすのがよい。他にも「弾性ストッキングの使用」「下から上へのマッサージ」なども有効だ。

翌日にむくみを残したくなければ、入浴時に足を心臓より高い位置に持ち上げながら、ぬるめのお湯で少しほてるくらい長い時間入浴するのも効果がある。睡眠時は、足の下に枕を置いて心臓の位置より足を持ち上げて寝るとグッド。冷え性の人はとにかく冷やさないように注意したい。

女性は生理のときに、鎮痛剤を服用することも少なからずあるはずだ。最近の鎮痛薬は副作用も少なく安心して使えるが、残念ながら腎臓での尿の再吸収を促進してしまい、その結果、副作用としてむくみを訴える人もいる。原因がわかっているのであれば、上手に付き合い、効率的に薬を使用するのがよいだろう。

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