放映開始から半世紀を迎えた、人気テレビシリーズ「スター・トレック」。今なお新たなファンを獲得し、現実世界の技術革新へ着想を与え続けている。12本の劇場版映画(10月に13本目の映画『スター・トレック BEYOND』が日本で公開)、6作のテレビシリーズ、そして次々と出版される関連本、ゲーム、漫画、雑誌、ドキュメンタリー。スター・トレックは、かつてどのSF作品も到達することのできなかった領域へ、大胆に足を踏み入れている。

「成功の秘訣は、科学的事実に忠実に従っていることです」と、ナショナル ジオグラフィックのライター、アンドリュー・ファゼーカス氏はいう。現実に基づいた天文学と未来を予見したかのようなテクノロジーについて語るのが、同氏の新刊著書「スター・トレック オフィシャル宇宙ガイド(原題『Star Trek: The Official Guide to our Universe』)」だ。そこには他のSF作品と違って、作り話であっても真実味のある科学を見たいという人間本来の思いが常に根底にあり、「おそらくそう遠くはない人類の未来への道筋」が示されている、とファゼーカス氏は説明する。

 テレビ放映開始から50周年という節目を迎える今年、スター・トレックに見られる本物の科学について、そしてこれほど長く続いているシリーズの魅力について、ファゼーカス氏に話を聞いた。

――科学ライター、アマチュア天文家、そして長年のスター・トレックファンとして、この本にそれらの情熱のすべてを詰め込んだと語っていますが、どのようにして本は誕生したのでしょうか。

 私は、自宅の裏庭で星を眺めるのが大好きな少年でした。また、小さい頃からスター・トレックのファンでもありました。この異なるふたつの世界をいつか融合させてみたいと思っていましたが、どのようにしたらいいかはわかりませんでした。

 けれども次第に、スター・トレックに登場する宇宙の物体や登場人物たちの目指す地が、実際の宇宙にも存在するものだと気づきました。テレビや映画には「アンドロメダ銀河」とか「アルファケンタウリ」といった名前が出てきます。実際に私が夜空を旅しながら学んだ名前と同じものばかりでした。

 そのうちに私は、番組に関連づけて宇宙の話ができるようになりました。例えば、望遠鏡で誰かに超新星を見せているとき、「ほら、あの『タイムマシンの危機』の回で、爆発寸前の恒星がエンタープライズ号を惑星もろとも破壊しそうになったので、急いで脱出しなければならない話があったでしょう」などと説明するのです。

 10年ほど前、スター・トレックに出てきた宇宙の物体をすべて書き出してみたことがあります。ひとつひとつの話を追いながらリストを作成していくと、脚本家たちが常に現実の宇宙を舞台に物語を作り上げていたのだと気づかされました。彼らはいつだって、本物の科学を真剣に受け止めていたのです。

――本を書くにあたってたくさんの取材や科学者との協力があったのではないかと想像します。そのなかで本の焦点をどこに当てようと決めたのでしょうか。

 スター・トレックには膨大な量の情報やトリビアが詰まっていて、圧倒されそうです。ですから、焦点を絞る必要があると感じました。天文学の教育を受けた者としては、読者にわかりやすく説明する必要があるとも思いました。一般の人が親しみやすいものは何だろうと考え、夜空のガイドブックを書こうと決めたのです。

 太陽系から出発して、太陽系外惑星に枠を広げていきました。次に、恒星がどこで生まれ、どのように成長し、どうやって死んでいくのかについて。最後に壮大な銀河の構造にも触れています。

 この本の土台は、スター・トレックの目指していた地と本物の科学を見ることです。現在活躍している科学者、エンジニア、物理学者、さらには数学者、化学者、宇宙飛行士に至るまで、多くの人々が子どもの頃にスター・トレックに憧れて、これらの分野を専門的に学ぼうと決めています。テレビ番組が、彼らの想像力を刺激したのです。

 これこそがスター・トレックのすばらしい点だと思います。私は「スターウォーズ」も好きですし、悪く言うつもりはありませんが、あれはどちらかというと「ロード・オブ・ザ・リング」のようにファンタジーが基本になっています。スター・トレックの構想は、もっと現実に近いです。

――本を書いていて最も驚いたことは何ですか?

 ひとつは、あらゆる場面で科学が大変正確に描かれていることです。しっかりとした現実の科学を踏まえています。脚本家やプロデューサーたちが、じっくり時間をかけて正確を期していたことがよくわかります。

 彼らは科学コンサルタントを雇い、専門的な意見を話の筋書きや場面の撮影に取り入れました。現実の世界では、過去数十年のあいだに技術が進歩し、探査の限界は押し広げられ、宇宙についてより多くのことがわかってきました。そうして得られた新たな知識も、話の筋に反映されています。

 ドラマのなかで冒険が繰り広げられる舞台は、今や“超現実”といってもよいでしょう。ハリウッドは私たちのもつ知識を基に、昨今のコンピューターシミュレーションの技術によって、宇宙にあるどんな物体でも画面上に再現することができるようになっています。そして、誰もが自宅に居ながらにしてそれを楽しむことができるのです。

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