カナダ東部にある世界的に有名なジョギンズ化石断崖で2015年、奇妙な化石がいくつか発見された。現在、米国とカナダの研究室で分析が進められているこの標本には、古代の大型ヤスデの新種が最大で3種含まれている可能性が明らかになった。

 ジョギンズ化石断崖は、ファンディ湾沿いに数kmにわたって続く断崖で、石炭紀(3億5400万〜2億9000万年前頃)の化石の宝庫としてユネスコの世界遺産に指定されている。ここでは19世紀以降、古代生物の発見が相次いでいて、体長2mを超える巨大ヤスデが這った跡や、その体節も見つかっている。

古代多足生物

 今回新たに発見されたヤスデはそこまで巨大ではなく、体長は30cm程度だろうと米クリーブランド自然史博物館の古生物学者ジョー・ハンニバル氏。同氏はカナダの古生物学者メリッサ・グレイ氏と共同で今回の化石を分析している。

 ほとんどのヤスデは草食性だが、このヤスデもおそらく草食性だった。彼らが這い回っていた古代の森に生えていた木の幹も、同じ化石床に部分的に保存されている。

 ジョギンズ化石断崖での調査を終えたハンニバル氏は、今回の化石は約3億年前の石炭紀後期のものだと考えている。ちなみに、「石炭紀」という名称は、地球上の石炭の多くが、この時代に堆積した有機物に由来していることによる。実際、ジョギンズはかつて豊かな炭鉱として知られ、ここの化石は、鉱夫が砂岩や頁岩の層を爆破していたときに発見されたのだ。これまでに発見された化石の中にはヤスデも含まれているが、今回のような化石は誰も見たことがなかった。

 これらの化石には「アーキポリポッド」というヤスデの仲間が1〜3種含まれていると、ハンニバル氏は考えている。「アーキポリポッド(archipolypod)」とは、文字通り「古代の足の多い動物」という意味で、このグループのメンバーは、米国や英国、チェコなどで見つかっている。

 化石のヤスデの足の多くは非常によく保存されているものの、頭部は保存状態が悪い。「だから、このヤスデたちの頭部がどのような形をしていたのかは分かりません」とハンニバル氏。「トゲがあってボトルブラシのような姿をしていたのかもしれませんし、トゲなどなかったかもしれません。現時点では、なんの証拠もないのです」

 もう1つ分からないのは、この新しい化石を他のヤスデとどのように関連づければよいかという点だと、ハンニバル氏は言う。

まだまだたくさんいる

 ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで、古代の生物を研究している米ウェスタン・サイエンス・センターの常任理事であるオールトン・C・ドゥーリー・ジュニア氏は、今回のヤスデの化石は、未発見の比較的大きな生物がまだまだたくさんいることを示すもので、非常に興味深いと言う。

「石炭紀までに、生命は陸上にしっかり根づき、あらゆる気候区分に対応した生物群集が栄えていました」とドゥーリー氏。「けれども、当時の動植物は今日とはあまりにも違っていたため、同じ場所でもほとんど異国のような風景が広がっていました。私たちが、当時のすべての動植物を把握して、それらがどのように相互作用していたかを理解できるようになるのは、まだまだ先のことでしょう」