9月、米フロリダ州オーランドで国際昆虫学会議が行われた。これにちなんで、今回の記事では、見た目とは異なる意外な面をもつ生物を集めてみた。

凶暴そうながら、おとなしいサソリモドキ

 ホラー作品に出てきそうな禍々しい見た目のサソリモドキは、獲物を押さえるための大きな黒いハサミを持っている。しかし、書籍『The Sting of the Wild(野生の一刺し)』の著者で、人間にとって不快な生物に詳しいジャスティン・シュミット氏によると、サソリモドキは特に危険な生物ではないという。

 米南西部とフロリダ州で見られるサソリモドキはクモ綱に属する。おとなしい性質で、積極的に人を襲うことはないが、他者から攻撃を受けると、長い尾の付け根から酢のようなにおいの酸を噴射する。その濃さはサラダ用ビネガーの15倍ほど。この液体がかかると「皮膚が焼け、小さな穴が開く」ような感じがするとシュミット氏は述べている。

欲望むき出しのチョウ

 華麗にふわふわと舞うチョウ。その優美な姿とは裏腹に、彼らはセックス、欺き、諍いにあふれた日々を生きている。

「チョウは、交尾を楽しんでいます」と米アリゾナ大学の昆虫学者でチョウを専門とするケイティ・プルディック氏は言う。しかし、交尾に至るまでに「怒りをむき出しにし、攻撃的になり、必死でなわばりを守ろうとします」。メスに接近したいオスは、互いに羽がボロボロになるまでぶつかり合う。

 オスは「まだメスの体が温まっていない朝のうちに相手を捕まえて、交尾をします」。また、チョウのメスは、受精のためではなく、養分がたっぷり詰まった精包を得るためにオスを交尾に誘うことがある。ディナー目当てにデートをするようなものだ。

小さくても侮れないハチ

 別名「キラービー(殺人蜂)」とも呼ばれるアフリカナイズドミツバチは、セイヨウミツバチとアフリカミツバチの交雑種で、現在では米国にも広く分布している。セイヨウミツバチよりも体が小さく毒も弱いにもかかわらず、このハチが殺人蜂という恐ろしい名で呼ばれるようになったのは、群れを守ろうとする彼らが、大群で敵を襲うことに由来する。

 アフリカナイズドミツバチの襲撃を受ければ、命を落とすこともある。アリゾナ州では以前、男性が体を1000カ所以上刺されて亡くなっている。

 シュミット氏によると、アフリカナイズドミツバチの研究からは有益な情報が得られるという。米国のミツバチを苦しめている蜂群崩壊症候群のような病気への抵抗力を持っているからだ。

 たとえば2014年の研究では、アフリカ東部のミツバチは、米国やヨーロッパの群れを襲った寄生虫に対して強い耐性を有することがわかった。

意外と繊細なタランチュラ

 体毛に覆われたクモ、タランチュラは、人間を噛むこともあるが、さほど攻撃的なわけではない。

 彼らは毒液を「無駄遣いせず、餌を溶かすために使うことを優先」するのだと、米ジョージア大学院研究助手のシャカラ・マギット氏は言う。フロリダ大学のバイオセキュリティ・リサーチ・アンド・エクステンション・ラボに所属するセージ・トンプソン氏によると、万が一タランチュラに噛まれたとしても、その毒の量はミツバチと同程度だという。

 恐怖にかられた人間がタランチュラを払い落とすという場面をときおり目にするが、彼らの体は繊細で、60センチほどの高さから落ちれば、外骨格が割れて死ぬこともある。

実は凶暴なイモムシ

 イモムシのずんぐりとしたかわいらしい姿に騙されてはいけない。そう語るのはネブラスカ大学の昆虫学者、ジュリー・パターソン氏だ。イモムシの中には、冷血な殺し屋もいるのだと彼は言う。

 たとえばコーンイヤーワーム(アメリカタバコガの幼虫)は、仲間同士で殺し合い、その肉を食べる捕食者だ。パターソン氏によると、トウモロコシの穂の中にクネクネと身をよじるイモムシがいたなら、それは競争相手を食べてしまった「チャンピオン」なのだそうだ。

お役立ちのゲジとイクメンのゴキブリ

 動きのすばやいゲジは「確かに足が多くて不気味です」とプルディック氏。しかし、ヨーロッパ、アジア、北米全土で見られるこの生物は「ゴキブリを食べてくれるのです」と言う。

 そのゴキブリだが、親としては優秀だ。ゴキブリの父親は鳥のフンを食べ、それを赤ん坊のために持ち帰る。嫌われ者のゴキブリだが、彼らが無責任な父親でないことは確かだ。