1977年以来続いてきたサイの角の国際取引禁止は、今後も継続されそうだ。

 南アフリカ共和国ヨハネスブルクで183の国と地域が参加して開かれている野生生物取引を取り締まるワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)締約国会議の委員会で、10月3日、サイの角の国際取引を解禁する提案が否決された。

 今回の国際取引解禁の提案は南アフリカに隣接する国、スワジランドが提出したもの。スワジランドの代表者は、シロサイの角の売上によってこの動物の保護に必要な費用を得ることができると主張、「取引禁止が機能していないことは誰の目にも明らかです」と話した。

 しかし委員会は、賛成26票、反対100票、棄権17票で、シロサイの角の取引を許可する措置を否決した。

 シロサイは、5種いるサイのうち一番大きく、最も数が多い。生息数は約2万400頭で、サイ全体の数の3分の2を占めている。アフリカ大陸の約12カ国に生息しているが、そのうち70%は南アフリカに住んでいる。狩猟によって19世紀末に絶滅しかけたが、保護活動が功を奏して生息数はいったん回復した。

 しかし、現在サイは再び深刻な絶滅の危機に瀕している。ベトナムや中国で新たに生まれた富裕層によってサイの角の需要が急増し、昨年だけで1000頭以上が密猟者の手にかかった。サイの角は人間の髪や爪と同じケラチンでできており、貴重な彫刻の材料になるほか、がんやリウマチなどに効く万能薬と誤認されているためだ。

売るべきか、売らざるべきか

 国際取引の解禁についてはこれまでも、サイが生息する国々や野生動物の保護管理者、サイ牧場の所有者、経済専門家、自然保護活動家などの間で激しい議論が行われてきた。

 スワジランドが許可を求めていたのは、すでに保有している約330キログラムのサイの角を「極東」の正規の販売業者に990万ドルで販売すること。提案には、生きているサイに鎮静剤を投与し、角を切り取って毎年約20キロ分を販売することも含まれていた。人間の爪と同じように、サイの角は切ってもまた生えてくる。

 サイが生息するほとんどの国は、スワジランドの提案を支持した。角取引で得た利益が、サイ保護に役立つというのがその理由だ。「正しい条件のもとであれば、持続可能な方法でサイの角の取引を行うことは可能」と南アフリカの代表者は主張する。

 一方、反対派は、取引の合法化によってサイ角の需要が増え、合法な角を隠れ蓑にした違法な角の取引も増えると主張する。ほとんどの主要な保護団体も同意見だ。

「即座に合法取引を解禁すれば、消費者は混乱し、保護団体や政府が行ってきた需要削減策も無駄になると懸念しています」とWWFの上級政策アドバイザーであるリー・ヘンリー氏は話す。

南アで国内取引が解禁か

 ワシントン条約の本会議では委員会の決議を承認するのが通例だ。もしも、スワジランドの提案が可決されることになれば、南アフリカや近隣諸国が所有するサイの角についても、売る道が開けることになる。

 その量は、スワジランドが所有する分よりもはるかに多い。南アフリカのサイ民間所有者協会がロイターの報告から推定した内容によれば、協会員が約6トン、政府が約25トンのサイの角を所有している。

 一方、現在、南アフリカは国内でのサイの角の販売を巡る法廷闘争の只中にある。数百万ドル相当の角をもつサイ所有者たちが原告となり、国内販売禁止の継続を訴える環境省と争っている。

 南アフリカには、実質的にサイの角を取引できる市場は存在しない。しかし、取引反対派は、国内取引が合法化されれば、サイの角が国際的なブラックマーケットに流れるのではないかと懸念している。現在は、解禁を支持した判決に対して政府が上訴しているため、かろうじて販売禁止が継続している状況だ。